智成さんがつくる
「メープルと塩のフィナンシェ」と
「白あんのフィナンシェ」は、
生地に使っている粉がことなります。
メープルと塩は薄力粉(小麦粉)、
白あんは米粉なんです。

「メープルと塩は、
プレーンなフィナンシェのつくり方です。
薄力粉(小麦粉)を使い、卵白と、
しっかり焦がしたバター、
アーモンドパウダーを入れました。
甘みとしてメープルシュガーをメインに、
グラニュー糖とはちみつ、
ポイントとしてアクセントになるように
福井の越前海岸の塩を使っています」

このフィナンシェの製法には、
ながくフランス菓子を手がけてきた智成さんの
いろいろな技術と経験が生きていますが、
地元の塩を使ったのは、昆布屋孫兵衛ならでは。
「この塩は、全体に生地の中に混ぜ込んでいません。
焼く直前、型の中に生地を流して、
塩を振ってからオーブンに入れています。
お肉を焼くとき、下味じゃなくて、
最後に仕上げでちょっと塩を振るみたいな感じの
感じさせ方をしています」

使っているのは「百笑の塩」という塩です。
志野佑介さんというかたが、
日本海のいろんな場所で海水の味見をし、
いちばんおいしいと思ったところの海水で
塩づくりをしているんですって。

白あんのフィナンシェの生地で
メインに使っているのは米粉。
卵白とアーモンドパウダーを混ぜ、
その生地の中に白あんが練り込まれています。
「白あんが入ることによって
どうしても生地が少し重くなるんです。
だからなるべく生地の骨格として
ちょっと口当たりをさっくりさせるというか、
あまり重たさを感じさせないように、
小麦粉ではなく、米粉を使いました」
もちろん、白あんは、
父・孫兵衛さんの手によるもの。

「普通の白あんでつくろうと思ったんですけど、
父が梅あんのほうがいいんじゃないかと。
けれどもハッキリと梅を感じさせるものではなく、
少しだけフルーティな印象が出るていどです。
具体的にいうと、
父が梅の甘露煮をつくるときに出たシロップを、
白あんの中にほんの少し、混ぜ込んでいるんですよ」
甘みは、白あん由来のもの以外に、
すこしだけ砂糖とはちみつも使っています。
ごまは、いり白ごま。
智成さんがフィナンシェに
「和」を感じさせるのに、
ぜひ使いたかった素材です。
「少なすぎたら本当の飾りだけになっちゃうし、
多すぎると、ごまの風味に全体の印象が
持っていかれるので、量には気を遣いました」

2025-10-17 THU