2012年の2月末、 笑顔で出迎えてくださった
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ほぼ日 | 扇子はいつごろ誕生した道具なんでしょう。 |
山中 | 平安の初期ごろと言われています。 日本でうまれました。 |
ほぼ日 | 不勉強で恥ずかしいですが、 それさえ知りませんでした。 日本で発明されたんですね。 |
山中 | ええ。 最初の扇子は木簡(もっかん)でできていました。 木簡というのは木の札です。 そのころの日本は紙が貴重品だったので、 短冊状の木の板に墨で文字を書いていたんです。 |
ほぼ日 | いろいろな文書を、木の札に。 |
山中 | ところが、細長い木の札に いくつも書いていると散らばってしょうがない。 そこで、板に穴を開けて数枚の木簡をとじた。 それが扇子の、そもそもの発祥だと言われてます。 |
ほぼ日 | へええーーーー。 |
山中 | あおぐ道具としては、うちわというものが 紀元前の中国や古代エジプトで用いられましたが 日本の扇は「折りたためる」ことが特徴です。 これがまず中国に渡り、 インドやヨーロッパにも広がっていきました。 |
ほぼ日 | 世界に。 |
山中 | ルイ王朝時代の 貴婦人たちの持ち物として、扇が定着します。 扇と帽子とパラソル。 |
ほぼ日 | ああー、はい、イメージがつかめました。 西洋の扇子、 絵画や映画などで見覚えがあります。 |
山中 | というのが、まあ、非常に簡単ではありますが、 扇子発祥のお話になります。 |
ほぼ日 | ありがとうございます、勉強になりました。 |
山中 | それで‥‥きょうわざわざお越しいただいたのは、 扇子ができあがる工程を ご覧になりたいということでしたよね。 |
ほぼ日 | はい。 どうやってつくられているのか、 その現場を拝見したくてやってきました。 |
山中 | ありがとうございます。 なのですが残念ながら、 きょうすべての工程をお見せすることは できないのです。 と申しますのも、 扇子づくりは細かい分業体制なんですね。 |
ほぼ日 | 分業体制。 |
山中 | ええ。 たとえばこの、扇骨(せんこつ)。 扇の骨と書いて扇骨というのですが、 この竹の骨組みの部分は 滋賀県の琵琶湖の西岸、 安曇川(あどがわ)のほうでつくっています。 |
ほぼ日 | 琵琶湖で。 |
山中 | 扇子づくりには、いくつもの工程があります。 これは組合のパンフレットなんですが、 こんな具合で‥‥。 |
ほぼ日 | ああ‥‥こんなに。 |
山中 | すべてをご覧いただくのは無理ですので、 きょうは「中附け(なかつけ)」 という作業を見ていただこうと。 |
ほぼ日 | なかつけ。 |
山中 | 紙扇子の、仕上げに近い工程です。 「折り加工」された 紙のじゃばらに扇骨を差しこみます。 紙扇子の紙は、 最低3枚の紙を合わせてつくられています。 真ん中の紙が、芯紙(しんがみ)といいまして、 これがふたつに裂けるようになっているんです。 ふたつに裂けて、その間に骨が入る。 骨と紙をドッキングさせて扇に仕上げる。 これが「中附け」という作業。 きょうは、ここをご覧いただきます。 |
そしてわれわれ「ほぼ日のいい扇子」チームは、
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金谷 | ようこそいらっしゃいました。 きょうは中付けの作業を ご覧になりたいそうで。 |
ほぼ日 | はい、よろしくお願いいたします。 ここにある道具を使いながらの 作業になるのですね。 |
金谷 | そうです。 扇子の加工は、職人だけのものではなく、 アイデアと工夫次第で 私たちにもできることを 立証していきたいと思いまして、 自分で設備を開発してきました。 |
ほぼ日 | それがここにある数々の機械なんですね。 |
金谷 | 職人さんが経験でやる作業の多くを、 うちでは機械でもできるようにしています。 それによって、 国内生産の伝統工芸品を ひとりでも多くの人に渡したいと考えています。 当然ですが、 職人の仕事と変わらない優れた品質のままで。 |
ほぼ日 | なるほど。 これらの機械は、金谷さんが? |
金谷 | マシンは自作です。 以前、メーカーのエンジニアだったんですが、 それを辞めて、この仕事をはじめてから ぜんぶ手づくりでつくりました。 |
金谷さんはさっそく、 まずこちら、
じゃばらにはなっていますが、 これを機械にセットして‥‥。
コンプレッサーで、シューっと空気を送り込みながら‥‥
横にスライドしていくことで、 この作業、職人さんはひとつずつ口で吹くのだとか。 機械ならば酸欠になることもありません。
差し込み口が開きました。
「扇骨」に糊を塗ります。 油のある竹は、
口の開いた紙を台にセットして、
かなりの、手作業。
しかも、糊がかわかないよう、 真ん中の「芯紙」を裂き、「扇骨」をぐっと押し込みます。
糊がかわく前に、手早くやるべき工程がもうひとつ。
押し込んだ「扇骨」は、紙の折り目ごとに、
つまり、紙の中の「扇骨」を整列させる作業です。
セットして、機械が押さえ込めば、
軽くたたいて、糊を密着させます。
糊を縫ってからここまでの作業が、
つづいて、「つぶす作業」になります。 竹が差しこまれた紙は、
このままだと、 つまんでみると、たしかにごろごろしています。
この竹の厚みを、たたいてつぶします。
つまんでみたら、ごろごろがなくなっていました。
いよいよ仕上げ。 「扇骨」の外側の2本を「親骨」といいます。
あたためた「親骨」を、プレスにのせてぐいっと曲げます。
「親骨」を適度に曲げることで、 どのくらい「親骨」を曲げるのかは、 こうしてようやく、
いかがでしたでしょうか。 アイデアと工夫を駆使しながら、
こういう場所で、 長いレポートになりました。 (扇子チーム一同) |
*「ほぼ日のいい扇子」の紙扇子はすべて国内で製作されています。 布扇子は中国にある(株)山二の提携工場で製作しています。 |