経済はミステリー。 末永徹が経済記事の謎を解く。 |
第7回 信用創造について(金融緩和政策の補足) はしょり気味だった 前回の「金融緩和政策の説明」を補足します。 用語の解説に行き届かないところがあったのは、 あまりに沢山の政策変更を一遍に決めた 速水さんのせい、ということにしておいて下さい。 利子のつかない「日銀当座預金」に、 なぜ、4兆円も5兆円も預けられているのか? 「支払い準備」といって、銀行が預金残高の一部を 日銀に預ける「義務」があるからです。 銀行は、普通預金、定期預金などで集めた資金を、 企業に貸し出して利息を取る。 その銀行の貸し出しは、 私たちが困っている友達にお金を貸してげるのとは、 原理がまったく違う。 私たちは、その友達にどんなに同情しても、 原理的に、自分が現に持っているお金より 多くは貸せない(自分が借金すれば別だけど)。 ところが、銀行の貸し出しは、 「企業の預金口座の残高を増やす」 という形で行なわれるから、銀行は、 集めた普通預金、定期預金の総額よりも多く貸せる。 百万円の預金を集めていた銀行が、 新たに百万円の貸し出しをしたら、 その銀行の預金残高は二百万円に増えるのである。 私たちの場合は、 友達に貸した分だけ、私たちのお金が減る。 一方、銀行がお金を貸すと 「世の中全体のお金」が増えるのだ。 これを「信用創造」という。 企業は、その百万円を引き出して、 商品を仕入れたり、給料を払ったりする。 もし、その時、集めていた預金の百万円が 一斉に引き出されたら? これは、それほど、心配しなくていい。 なぜかというと、 普通は、皆さんが預金を引き出す時は、 誰かに支払いをする時でしょう。 つまり、引き出された預金の分だけ、 (同じ銀行とは限らないが)誰か別の人の 預金が増える可能性が高い。 企業が借り入れたお金を給料として振り込み、 その給料が引き出されて買い物に使われ、 代金は回り回って企業に戻っていく・・・というように。 「日銀当座預金」は、 そういうお金の出入りの帳尻合わせをする場所である。 すべての銀行が、預金残高の何パーセントかを 「支払い準備」として「日銀当座預金」に置いて、 銀行間のお金の出入りを調整する資金にしているのだ。 日本銀行の出発点は、 お金の出入りが極端に片寄って 一時的に資金不足に陥る銀行が現れた時に、 「最後の貸し手」となって お金を貸してあげる役割にある。 さて、ここまでのところ、 何となくでも、わかってもらえたでしょうか? で、元に戻って「量的緩和」の話。 本来の順番としては、企業への貸し出しが増えて、 銀行がそれに応じて義務として「支払い準備」を積んで、 「日銀当座預金残高」が増える。 その逆の流れを作ろうとするのが「量的緩和」で、 有効かどうかは、実は、やってみなければわからない。 ただ、銀行にとっても、 「目の前の現金」の威力というものは、 たしかにあると思う。 喩えは悪いが、マージャンをやるとき、 「その時、財布の中にある現金の量」は、 レートや沈んだ人がどこまで勝負を続けるか、 つまり、4人の間の「信用創造」に 微妙に影響するでしょう。 「家に帰れば」、「銀行に行けば」、「給料日には」 あるお金と目の前の現金は、やっぱり、違う。 日本経済は瀕死の状態で、 効くかもしれない薬は何でも試してみたほうがいい。 |
2001-03-26-MON
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