経済はミステリー。 末永徹が経済記事の謎を解く。 |
第14回 あなたは「消費者」か? セーフガードは、「保護貿易」政策の一種である。 外国の生産者の製品の輸入を制限して、 自国の生産者 (今回の場合は、ネギ、シイタケ、畳表の生産者)を 保護する政策だから、「保護貿易」という。 「保護貿易」の反対は「自由貿易」 保護貿易を批判する際、 「消費者の利益を損なう」という人が多い。 今回のセーフガードに関しても、 そういうコメントが多かった気がする。 この表現は、間違いではないが、誤解を招きやすい。 「消費者の利益を損なう」という言い方は、 「生産者」と「消費者」がいて、 どちらの利益を優先すべきかが問題になっている、 という図式を連想させる。 本当は、すべての人が生産者であり、 同時に、消費者なのに。 経済は、生産したモノやサービスを、 お互いに、消費し合って成り立っている。 生産とは「お金を受け取ること」、 消費とは「お金を支払うこと」 と言ったほうが、わかりやすいだろうか。 受け取るだけ、支払うだけ、という人は、 あまりいないはずである。 たしかに、大きい企業に勤めていると、 給料は受け取っていても、 自分が生産に携わっていることを実感できない。 まして、そういうサラリーマンの生産活動を 「無償で」支える専業主婦が、 自分を「消費者=消費だけする者」と 思ってしまうことは無理もない。 無理はないけど、それは、間違いです。 間違いだけど、そう思っている人が多いから、 「消費者の利益」は「お茶の間のウケ」がいい。 「消費者の利益」を 錦の御旗のように振りかざしていると、 ものごとをきちんと分析的に考えないで、 数の力に媚びることになる。 「消費者の利益を損なう」は、結局、 「生産者より消費者のほうが数が多いから、 消費者の利益を優先すべきだ」というロジックですね。 これに対しては、ただちに、 「多数の利益のために、 少数の弱者を犠牲にしてもいいのか」 という反論が成立してしまう。 それが「誤解」であると僕は言いたい。 そうではなく、保護貿易は 「全体の利益を損なう」から、よくないのである。 保護貿易は、 貿易をやりにくくして、経済活動の範囲を狭める。 「埼玉県の工場で作られた製品を 千葉県で売る場合、特別に高い消費税を取る」 なんてことになったら、不便でしょう? 今回のセーフガードは、 まさに、それをやろうとしている。 その時、損をするのは「千葉県の消費者」ではない。 「日本国民全体」なのだ。 |
2001-04-15-SUN
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