経済はミステリー。
末永徹が経済記事の謎を解く。

第18回 いつまでも期待の新人ではいられない


みなさま御存知のように、
「ほぼ日」は、インターネット界の常で、購読無料です。
 
しかし、僕は、「ほぼ日」を
「ダイアル・アップ接続」で見ている。
ADSLにしたら? と言われたらそれまでですが、
僕にとって「ほぼ日」は無料ではない。
「10円払って」見るものである。
そういう人、まだ、多いですよね?
 
ところが、その十円は、
昼夜の別なくネズ穴で働いている皆さま、
忙しい時間をやりくりして
原稿を書いている私ども(執筆者)を素通りして、
まるまる、電話会社のものになってしまう。
これ、おかしいと思いませんか? 
 
腹が減ったけど、外に出かけるのが面倒臭いから、
ウナ重の出前を頼もう。
その時、電話会社に十円払うのは、いいんです。
「出かけないで済む」ことの価値のほうが大きいから。
ウナギ屋さんも、ちょっぴりだけど売上が伸びて喜ぶ。
でも、「ほぼ日」と電話会社の関係の場合は、
本でいったら、印税を取次ぎ業者に
横取りされてしまったような気分で、
僕は、不愉快なんですが・・・
 
インターネットは、もともと、
学者同士が情報交換に使う通信技術として発達した。
「ネット上の情報は無料」は、
すべての参加者が創造と編集の高い能力を持つ
閉ざされたメディアの精神なのだ。
砕いて言えば、仲間内で
どんなに面白い話を聞かせてやっても、
それで金を取る奴はいない、ということ。
 
何十億人もの人が参加するようになった
インターネットは、少し、
事情が違うんじゃないかと僕は思う。
 
今のインターネットは、関係する人たちの
「出世払いで、いいよ」
という気持ちに支えられたメディアである。
「一番成功したホームページ」の「ほぼ日」といえども。
「関係する人たち」の最たるお方が、
殺人的なスケジュールをこなすイトイさんでしょう。
 
でも、「期待の新人だから、一杯、オゴっておこう」
という下心と親切心が半分半分の先輩方に
暖かく見守ってもらえる期間は、いつかは終わる。
 
「ほぼ日」は、
「個人のホームページが情報を発信する力を持つ」
ことを示した最初の例である、と言っていいのかな? 
言い出した首相がクビになってしまったが、
「IT革命」に意味があるとすれば、
「ほぼ日」ほど大きくはなれなくても、
そういうホームページがそこら中にあったら
楽しいじゃないか、ということだろう。
 
でも、「ほぼ日」は、
こういう言い方をすると嫌われそうでイヤなんですが、
「インターネット以外のメディアで
 華々しい成功を収めた、糸井重里氏」
のホームページである。  

そんな人がいるかどうかわからないが、
「イトイさんのような才能と情熱はあるけれど、
 イトイさんのような実績はない人」
のホームページが成功する可能性がなければ、
IT革命はダメなんだと思う。 
 
インターネットが、「企業や政府機関の掲示板」や
「マス・メディアのサブ・チャンネル」ではない、
自立したメディアになるために、
「ネットは無料」は見直されるべきではなかろうか? 

2001-04-27-FRI

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