経済はミステリー。 末永徹が経済記事の謎を解く。 |
第19回 あなたは小泉支持? 小泉人気が凄い。 僕の取っている日経新聞の世論調査によると、 小泉政権の支持率は歴代最高の80パーセント。 一方、66パーセントの人が 政権が優先すべき課題として「景気対策」を挙げている。 あれ、小泉さんは、 「景気対策はやらずに、 マイナス成長に耐えて、構造改革をやる」 と言っていたはずなのに、矛盾していないか? 細かく読むと、この世論調査の結果は 「当面は財政再建をやって、しかるのち、景気対策を」 ということのようだ。それなら、一応、理屈は通る。 しかし、苦しい理屈である。 「構造改革」は、英語のリストラクチャリングを 訳した言葉だろう。リストラ。 普通、クビ切りのことですね。構造改革=クビ切り? リストラの本当の意味は、 「仕事をやる上でのムダをなくす」ことである。 今まで10人でやっていた仕事が、リストラの後、 8人で滞りなくやれたら、 2人分のムダがあったことになる。 決して、その2人が人間としてムダ、なのではない。 ただ、8人でもやれる仕事を10人でやっていただけ。 「仕事をやる上でのムダ」は、何も、労働力に限らない。 しかし、現実には、コピー用紙を両面使ったり 照明を落としたりして、他のムダを削っている間は、 「リストラ」ではなくて「経費削減」と言っている。 だから、「リストラ=クビ切り」になる。 小泉さんの言う「日本のリストラ」のエッセンスは、 「郵政民営化」と「公共事業の削減」である。 「郵便局が集めて、建設会社に流れる」 お金の循環を止めること。 もし、それが実現したら、 「それまで、郵便貯金に預けられていたお金」と 「それまで、郵便局や建設会社に雇われていた人たち」が 宙に浮く。そのお金と人材が結合して、 新しい会社が生まれる、それが、日本のリストラである。 僕は、小泉さんの主張は理論的に正しいと思う。 しかし、小泉さんを支持した80パーセントの人が その内容を理解しているか、非常に疑問である。 少なくとも、「景気対策」を望むという 66パーセントの人は、あやしい。 日本の財政は、 破局するか、しないか、という窮状にある。 「当面は財政再建、そのあとは景気対策」なんて、甘い。 本当に構造改革に耐える覚悟なら、 「景気対策」なんて口にできないはず。 そもそも、「景気対策」とは何か? 「景気がよくなる」とは、 みんなが使う金の合計が増えることである。 日本は、国民が金を使わないで貯金ばかりしているから、 代わりに政府がムダな公共事業をやって金を使ってきた。 「景気対策」は、要するに、 政府が国民の代わりに金を使うことである。 「財政再建と構造改革」は、政府はもう金を使わない、 国民が貯金を引き出してムダ使いをやれ、ということ。 80パーセントの人たち、お分かりですか? |
2001-05-01-TUE
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