経済はミステリー。
末永徹が経済記事の謎を解く。

第47回 インフレ・ターゲットと調整インフレ

多分、インフレ・ターゲットは
「物価上昇率の目標を定める」ことで、
調整インフレは「物価の上昇を目標にする」ことです。

つまり、場合によっては、「物価上昇率ゼロ」や
「年1パーセントの物価下落」を目標とする
インフレ・ターゲットもあり得る。
実際、インフレ・ターゲットは、
もともと、インフレに苦しむ国が
「物価上昇を押さえる」ために取り入れた。

インフレ・ターゲットの本当の狙いは、
中央銀行(日本では、日本銀行)に
責任を取らせることである。
日本銀行は、日本の通貨の円を発行する業務を
独占していて、競争がない。
競争がないと、人は、一生懸命働かない。

八十年代後半、日本銀行は、
円を発行し過ぎてバブルを発生させた。
九十年代は、バブルに懲りて、
円を発行しなさ過ぎてデフレを発生させた。
日本銀行の職員は、ロクな仕事をしていないのに、
一番業績のいい民間銀行を
基準にした高い給料をもらっている。

それは、おかしいのではないか?
日本銀行にインフレ・ターゲットという課題を与えて、
その達成状況に応じて、
総裁以下職員の給料を決めるべきではないか? 
特に、年に何千万円も給料をもらう総裁は、
目標を達成できなかったら、
クビを切られるべきではないか?

それがインフレ・ターゲットの考え方で、
まったく、その通りだと思う。

現実にどれくらいの
インフレ・ターゲットが望ましいかは、
国民が決めることである。
外国の例にならって
「年に2、3パーセントくらいの物価上昇」
とすれば、デフレ気味の今の日本では
「物価上昇を目標にする」ことになる。
それで、「インフレ・ターゲット」と
「調整インフレ」が混同されやすい。

インフレ・ターゲットは一般的な制度の問題で、
「調整インフレ」は
「今の日本にとっては、物価の上昇が望ましい」
という具体的な政策判断の問題である。
ただ、今の日本で
「インフレ・ターゲットに賛成」と言ったら、
世間は「調整インフレに賛成」と受け取る。

経済通でインテリの加藤さんは、
その辺の区別がよくわかっているから、
「調整インフレには反対」と言ったんだろう。
あとで、必要となれば、
「調整インフレには反対だが、
 インフレ・ターゲットには賛成」と言い直せる。

小泉さんは、
そういう細かい言葉の使い方にこだわらない。
そのおおらかな感じが
小泉さんの魅力なんでしょうけどね。

2001-08-27-MON

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