こんにちは、ほぼ日刊イトイ新聞の奥野です。
このコンテンツはもう、タイトルのまんまなのですが、
何のことやらわからないと思いますので、
背景説明として
まず、東日本大震災が起きて間もないころのことから
お話ししたいと思います。
地震から一週間しか経っていない3月18日、
おとなり台湾の人々が
テレビ局合同のチャリティー番組をつうじて
20億円以上の義援金を集めてくれたという
ニュースが報じられました。
(その後、台湾からの義援金の額は増え続け、
2011年7月末現在、
総額で200億円を超えているそうです)
当時は、地震と津波による被害が
どんな規模になるのか、
まだまだわかっていませんでしたし、
原発のこともあって、
心配な情報ばかりが飛び交っている状況でした。
そんなとき、そのニュースを見たのです。
うれしいというよりもまず、驚きました。
そんなにも、台湾の人々が
日本のことを思ってくれているということに。
そんなにも、台湾の人々が
日本のことを思ってくれているということに
気づいていなかったということに。
義援金としてみた場合の「20億円」というお金が
どういう意味や効果を持つのか、
判じる材料も能力も持ち合わせていませんが、
端的に言って、ものすごい金額です。
何万人? 何十万人? ‥‥わかりませんが、
大勢の人がさし出してくれなければ
たどりつかない金額です。
台湾の人々が、
こんなにも、日本のことを思ってくれている。
そのことに驚き、同時に、
本当にありがたいと思って涙が出てきました。
時は流れて、5月。
話がガラっと変わりすぎてすみませんが、
ロケット発射のインターネット生中継をするために
南米の「仏領ギアナ」へ行きました。
打ち上げ前日、前夜祭の会場に入ってみると、
ロケットをつくった会社の人、
ロケットに積む人工衛星をつくった会社の人、
その人工衛星を買って
宇宙へ打ち上げる通信会社の人‥‥などが
楽しそうに談笑しています‥‥もちろん、英語で。
英語があまり喋れないわれら「ほぼ日」取材班は
当然の流れで、
会場の隅っこのほうで静かにしていました。
こういうとき英会話やっておけばよかったって
思うんだよなぁとか、
今さら遅すぎる日本語会話をしていると
痩せた、上品な感じの
白髪の男性が、話しかけてきました。
「あなたたちは、日本人ですか」
さすがに、そのくらいの英語は理解できるので
「そうです」と答えました。
でも、その次の言葉が、出てきません。
僕たちも、まわりの人と知り合いになって
仲良くなりたいと思うのに、
どういう単語をどんな順に組み合わせていいか、
自信が持てなくて、話せない。
でも、その痩せた、上品な白髪の紳士は、
「なにか飲みませんか」
とか
「野菜スティックがありますよ」
とか
「この赤ワインは、上等です」
とか、しきりに僕らのことを気にかけてくれます。
僕らが、あまり英語が得意でないことがわかると、
今度は、そんなに話しかけることはせず、
それでも同じテーブルでビールを飲んでいました。
なんだか、不思議な時間が過ぎていきました。
ふと、いただいた名刺を見てみると、
その男性は
台湾の通信会社のかただとわかりました。
そこで、3月の地震のときの義援金のお礼を
たどたどしい英語で、伝えたのです。
そうしたら、その紳士は、こう言いました。
「台湾には、歴史的な経緯で、
日本語を喋れたり
日本の歌を歌える人たちがたくさんいます。
わたしの両親の世代が、そうです。
だから、
困っていたら助けるのが、当然ですよ」
そんな趣旨のことを、おっしゃいました。
またしても台湾の人々が、
こんなにも、日本のことを思ってくれている。
前置きばかりが長くなりましたが、
そんな国の
人気ロックバンド「トーテム」のヴォーカリスト、
スミンくんもまた、
日本のために「何かしたい」と思ってくれました。
そして、気仙沼にあるお茶屋さんで、
ちいさな
弾き語りライブをしてくれることになったのです。
東京と大阪をめぐるツアーを終えたあと、
台湾に戻る日の前日に。
ライブを終えたら、東京へトンボ帰りで。
そのライブのようすを、Ustreamで中継します。
もともとは、ほぼ日の乗組員・コイケが
トーテムを追いかけたドキュメンタリー映画
『トーテム』に感激したことが、
今回の気仙沼ライブを実現させるきっかけ、
そして原動力になりました。
そして、コイケに誘われた僕たちも、
その熱意に大いに巻き込まれ、
そして、
スミンの歌声に、こころを揺さぶられました。
みなさんもぜひ、いっしょに聴いてください。
きっと、いいライブになると思います。
‥‥そうそう、さっきの前夜祭の翌日、
ロケット打ち上げの、直前。
関係会社の重役たちが
次々と
招待客や報道陣の前で挨拶をしていったんですが‥‥
人工衛星を打ち上げる
台湾の通信会社の「CEO」として登壇したのは
誰あろう、
あの痩せた、上品で白髪の紳士だったのです。
いやぁ、ビックリしました。ほんとに。 |