あみぐるみ その2
高森先生に会ったぞ!
とある夕方、シェフ武井はみねひろこさんの紹介で
はじめて高森共子先生にお会いしました。
恵比寿のちょっと騒がしいカフェレストランに
筒のようなものを持って現れた先生。うわさどおり、
キュートな女性です。どきどき……。
は、はじめまして。
「これ、プレゼントです」
えっ? いきなり、そんな。いいのかな。
開けてもいいですか?
「ちょっと時期が遅くなっちゃったけど、
写真がすごくきれいに撮れてるので」
わっ! それは、あみぐるみのカレンダー。
というときっとみなさん「ただカワイイ」ファンシーな
ものを想像するでしょ。違うんです。みねさんによれば
「こんなに色気のあるあみぐるみの写真ははじめて見た」
というくらい、オトナっぽいものなんです。
写真の中ではあみぐるみたちが、暗がりでねそべったり、
こっち見たり、あっち見たりしています。
ひとりひとりの子(あみぐるみのことね)に
ちゃんとキャラクターがある。ちょっと生意気。
ただのぬいぐるみじゃないぜおれたち、って感じ。
おいしいスパゲッティを食べながら、ワインも飲みながら、
高森先生のお話をうかがいました。
高森先生は、絵の学校を卒業して、イラストレーターを経て
あみぐるみ作家になったんだそうです。
もともと編み物が好きで、小学生の時、友達に
ボーダー柄のリコーダーケースを編んであげてたんだって。
それが、あみぐるみの原形になっているらしい。
「好きな男の子には、ちょっと色違いのをあげたりね」
そういう『作りたい気持ち』が、編み物には大切らしいよ。
「神戸で展覧会をやったとき、編み物のことを何にも
知らない女の子が、自分で編み方を研究して、
パンダを作ってきてくれたんです。
もう、編み方はぜんぜんめちゃくちゃなんだけど、
その子にしかつくれない可愛さをもってて、
どうしても欲しくなって、私の作品と交換して
もらってきちゃったんです」
じゃあ、編み物のことを知らなくても、出来るんですか?
「あみぐるみって、きれいに編む必要は、ないんです。
そこがセーターとかの実用的な編み物と違うところかな。
もちろん編み物の基礎はできたほうが作りやすいですよ。
でも、目を作る、ふやす、へらす、平らに編む、丸く編む、
この5つができれば、つくれます。
それは編み物をやったことがなくても、
すぐに覚えられますよ。
失敗したら、ほどけばいいんだし」
それは安心。
「毛糸だって、着なくなったセーターをほどいて
洗って、お日さまに干した糸を使ってもいいし、
別に毛糸でなくてもいいし。麻ひもだってなんだって、
編めるものならなんだっていいんです」
手芸って、お手本どおりにつくらないといけないんじゃ
ないかって思っちゃいます。
「そこがね、わたしももどかしいんです。
ほんとに、好きに作ってくれていいのに、
編み図の通りにしなくちゃいけないって思っている人が
いっぱいいて……」
じゃあ、自分でオリジナルのものをつくるときは、
設計図とかはいらないんですか?
「具体的にイメージするものを、イラストに描いておいた
ほうがつくりやすいとは思いますよ」
そっか。じゃあ、こんど鼠穴に来ていただくとき、
何をつくろうかってことなんですが……
「イトイさんにデザインしてもらって、それを
樋口さんと私で編む、っていうのはどうでしょう?
男の人って、きっと、ぜんぜん違う発想で
つくってくれそうな気がするんです。
簡単な線でいいですから描いてくださったら、
私が毛糸を選びますよ」
わ。それ面白そう! でもイトイさん描いてくれるかなあ?
(つづく)
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