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階段のおどり場からみあげると、
TAROの大きい写真があります。 |
みうら |
岡本さんのこのポーズ、
新しかったよね。
俺は関西で育ったから、芸人さんの
肩をすくめて両手を広げるポーズしか
知らなかったんだよ。
だから、このポーズはびっくりしたねぇ。
やっぱりこれは、怪獣のポーズですよ! |
── |
いまではおなじみの
「岡本太郎のポーズ」ですね。 |
みうら |
岡本さんって、
たぶんCMのせいなんだろうけど、
「顔」の印象が強いよね。 |
── |
作品ではなく、
TARO本人のイメージって、
どんなものでした? |
みうら |
うーん、どうだったかな?
目は、むいてた。 |
── |
むいてた、と。 |
みうら |
うん、目、すごいむいてた。
すごーい、むいてたし、
あと、こわーいかんじがした。
こわかった。
こわい人だった。 |
── |
そうですか。 |
みうら |
うん。
ROCKの人とかもそうなんだけど、
はじめはこわーいイメージなんだよね。
ジミヘンだって、こわいイメージでしょ?
ボブ・ディランも、こわいんだ。
眉間にすげぇしわを寄せて、
サングラスとかかけてて。
岡本さんの顔は、
ROCKの人を見たときのこわさだった。 |
── |
怒られそうなかんじですか? |
みうら |
うん。そういえば、
横尾さんもこわいと思ったし、
糸井さんもこわかったよ。 |
── |
そ、そうですか!
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みうら |
うん、こわかった。
やっぱ、こわいってのは
ポイントあるんだよ。
だって、こわい人でないと憧れないもん。 |
── |
やさしい人は? 憧れません? |
みうら |
「あーこのやさしさで女くどいてんだろうなぁ」
って思うような人って、あこがれないもん。
こわーい人ってさ、
こわいことによって、
「もうっ、ついてこなくていいっ!」って、
半数以上の人を拒絶してるんだろうし。
そこにまた、魅力があるよねぇ。 |
── |
チャールズ・ブロンソンも
こわかったです。 |
みうら |
あっ! こわいでしょ?
岩石だもん、だって、もう、顔が。
アラン・ドロンとかには、
ぜんぜん憧れなかったもん。 |
── |
なるほど、そうですね。
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みうら |
やっぱり、怪獣みたいな人が
かっこいいんだよ。 |
── |
いま、若者のなかで
TAROファンが
増えてきているようなんです。
「ださい」を敬遠してきた世代から、
ぐるんと一周して、
また怪獣に憧れる時代が
やってきたのかもしれませんね。 |
みうら |
うん。でもね、
こういう、岡本さんのような世界を好きな人は、
怪獣映画も好きじゃないとダメだと思う。 |
── |
(笑)ダメなんですか。 |
みうら |
うん、怪獣映画だもん、岡本さんの絵は。
マカロニ・ウエスタンとか、怪獣映画とか、
そういうニオイがする。
たんにおしゃれで扱ってるかんじはないもん。 |
── |
たしかに、たんにおしゃれではない。 |
みうら |
なんかもっと、B級な!!
B級なフェロモンが出てる!!! |
── |
B級なフェロモンって、
なんでしょう? |
みうら |
あのね、B級映画撮ってる人もね、
B級だと思って撮ってないからね(笑)。
評価がB級になっているだけで、
魂はA級なんだ、あれ。 |
── |
つくってる側は、
おんなじなんですね。 |
みうら |
たぶん。
予算は少ないかもしんないけどね。
ロジャー・コーマンとか、
すごいんですよ、その本数が。
やーたら、撮ってんだ。乱作なんだよ。
そこがグッとくるけどね、
だって、撮りたくてしょうがないんだもん、
きっと。 |
── |
もったいぶったりしないんですね。
出したくてたまらない。 |
みうら |
何年かに1回映画を撮る監督とか、
何年かに1回絵を描く芸術家とかのほうが
作品に価値が出そうだよね。
ロジャー・コーマンのように乱作しちゃうと、
世の中の評価はどうしても
B級になっちゃうんだよね。 |
── |
TAROも、もしかしたら、
亡くなるまでは
B級って言われていたかもしれません。 |
みうら |
岡本さんの絵、すごいのにねぇ!
もう、世のなかの価値基準ってのは
どうかしてるよ。
こうやって、作品をみてまわるとね、
なんじゃ、こりゃ!っていうの
だらけだよね。
ほんでね、かわいいんだよね、
かわいいところがいいんだよね。
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── |
愛嬌があって、ユーモアがあって。
そんな人だったんでしょうね、きっと。 |
みうら |
そういえば昔、大映映画でね、
「宇宙人東京にあらわる」という映画があって、
パイラ星人ってやつが出てくるんだ。
それが、岡本さんのデザインなの。
からだのまんなかに目がついてるんだけど、
笑うよあれ、すごいよ。 |
── |
川崎市岡本太郎美術館で、
その写真、みたことがあります。
これがTAROデザインの、パイラ星人です。 |
みうら |
そんで、そいつ、
パイラ語っていうのをしゃべるんだよ。
「ゴジャゴジャゴジャ〜〜」って言うと、下に
「もうそろそろ地球は○○だ」とか
字幕が出るの(笑)。 |
── |
パイラ星人は、
映画のなかではメインの敵キャラなんですか? |
みうら |
あ、パイラ星人は、友好的なヤツなの。
悪いやつじゃないんですよ。
地球に、えーっと、隕石があたるのを、
止めに来てくれるんだよ、たしか。 |
── |
あ、じゃ、いい人なんですね。 |
みうら |
そう、いいパイラ星人なんです。
ほんとにねぇ、「太陽の塔」みたいなのが
動いてるような映画でしたよ。
でも、何をやっても岡本さんは、
基本は「上品」だよね。
パイラ星人も下品なかんじ、しないもの。
そこがいいんだよね。
(来週の水曜に、つづきます!)
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