第4回
B級な! B級なフェロモンが出てる!!


── 階段のおどり場からみあげると、
TAROの大きい写真があります。
みうら 岡本さんのこのポーズ、
新しかったよね。
俺は関西で育ったから、芸人さんの
肩をすくめて両手を広げるポーズしか
知らなかったんだよ。
だから、このポーズはびっくりしたねぇ。
やっぱりこれは、怪獣のポーズですよ!
── いまではおなじみの
「岡本太郎のポーズ」ですね。
みうら 岡本さんって、
たぶんCMのせいなんだろうけど、
「顔」の印象が強いよね。
── 作品ではなく、
TARO本人のイメージって、
どんなものでした?
みうら うーん、どうだったかな?
目は、むいてた。
── むいてた、と。
みうら うん、目、すごいむいてた。
すごーい、むいてたし、
あと、こわーいかんじがした。
こわかった。
こわい人だった。
── そうですか。
みうら うん。
ROCKの人とかもそうなんだけど、
はじめはこわーいイメージなんだよね。
ジミヘンだって、こわいイメージでしょ?
ボブ・ディランも、こわいんだ。
眉間にすげぇしわを寄せて、
サングラスとかかけてて。
岡本さんの顔は、
ROCKの人を見たときのこわさだった。
── 怒られそうなかんじですか?
みうら うん。そういえば、
横尾さんもこわいと思ったし、
糸井さんもこわかったよ。
── そ、そうですか!
みうら うん、こわかった。
やっぱ、こわいってのは
ポイントあるんだよ。
だって、こわい人でないと憧れないもん。
── やさしい人は? 憧れません?
みうら 「あーこのやさしさで女くどいてんだろうなぁ」
って思うような人って、あこがれないもん。
こわーい人ってさ、
こわいことによって、
「もうっ、ついてこなくていいっ!」って、
半数以上の人を拒絶してるんだろうし。
そこにまた、魅力があるよねぇ。
── チャールズ・ブロンソンも
こわかったです。
みうら あっ! こわいでしょ?
岩石だもん、だって、もう、顔が。
アラン・ドロンとかには、
ぜんぜん憧れなかったもん。
── なるほど、そうですね。
みうら やっぱり、怪獣みたいな人が
かっこいいんだよ。
── いま、若者のなかで
TAROファンが
増えてきているようなんです。
「ださい」を敬遠してきた世代から、
ぐるんと一周して、
また怪獣に憧れる時代が
やってきたのかもしれませんね。
みうら うん。でもね、
こういう、岡本さんのような世界を好きな人は、
怪獣映画も好きじゃないとダメだと思う。
── (笑)ダメなんですか。
みうら うん、怪獣映画だもん、岡本さんの絵は。
マカロニ・ウエスタンとか、怪獣映画とか、
そういうニオイがする。
たんにおしゃれで扱ってるかんじはないもん。
── たしかに、たんにおしゃれではない。
みうら なんかもっと、B級な!!
B級なフェロモンが出てる!!!
── B級なフェロモンって、
なんでしょう?
みうら あのね、B級映画撮ってる人もね、
B級だと思って撮ってないからね(笑)。
評価がB級になっているだけで、
魂はA級なんだ、あれ。
── つくってる側は、
おんなじなんですね。
みうら たぶん。
予算は少ないかもしんないけどね。
ロジャー・コーマンとか、
すごいんですよ、その本数が。
やーたら、撮ってんだ。乱作なんだよ。
そこがグッとくるけどね、
だって、撮りたくてしょうがないんだもん、
きっと。
── もったいぶったりしないんですね。
出したくてたまらない。
みうら 何年かに1回映画を撮る監督とか、
何年かに1回絵を描く芸術家とかのほうが
作品に価値が出そうだよね。
ロジャー・コーマンのように乱作しちゃうと、
世の中の評価はどうしても
B級になっちゃうんだよね。
── TAROも、もしかしたら、
亡くなるまでは
B級って言われていたかもしれません。
みうら 岡本さんの絵、すごいのにねぇ!
もう、世のなかの価値基準ってのは
どうかしてるよ。
こうやって、作品をみてまわるとね、
なんじゃ、こりゃ!っていうの
だらけだよね。
ほんでね、かわいいんだよね、
かわいいところがいいんだよね。

── 愛嬌があって、ユーモアがあって。
そんな人だったんでしょうね、きっと。
みうら そういえば昔、大映映画でね、
「宇宙人東京にあらわる」という映画があって、
パイラ星人ってやつが出てくるんだ。
それが、岡本さんのデザインなの。
からだのまんなかに目がついてるんだけど、
笑うよあれ、すごいよ。
── 川崎市岡本太郎美術館で、
その写真、みたことがあります。


これがTAROデザインの、パイラ星人です。
みうら そんで、そいつ、
パイラ語っていうのをしゃべるんだよ。
「ゴジャゴジャゴジャ〜〜」って言うと、下に
「もうそろそろ地球は○○だ」とか
字幕が出るの(笑)。
── パイラ星人は、
映画のなかではメインの敵キャラなんですか?
みうら あ、パイラ星人は、友好的なヤツなの。
悪いやつじゃないんですよ。
地球に、えーっと、隕石があたるのを、
止めに来てくれるんだよ、たしか。
── あ、じゃ、いい人なんですね。
みうら そう、いいパイラ星人なんです。
ほんとにねぇ、「太陽の塔」みたいなのが
動いてるような映画でしたよ。
でも、何をやっても岡本さんは、
基本は「上品」だよね。
パイラ星人も下品なかんじ、しないもの。
そこがいいんだよね。

(来週の水曜に、つづきます!)

2003-11-19-WED

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