── |
みうらさんは、文庫『芸術と青春』の
あとがきを書いていらっしゃいますよね。 |
みうら |
あの本ね、あとがきを書くときに、
ちゃんと読ませてもらったんだけど、
すごいよね。
「恋愛は、芸術だ!」とか
一瞬、言いわけかな?と思うぐらいなことを
平気で書いてる。
堂々と書くことがすごいよなあ。 |
── |
TAROのフランス時代の恋愛が
赤裸々に書かれてありますよね。 |
みうら |
岡本さんは、なんにも隠してないね!
人間だから、そういうところはふつう
隠したいとも思うんだけど、
「かぁーくしちゃいけないっ!」
というポリシーが
なにか、あったんでしょうかねえ。 |
── |
自分への挑戦を
いつも心がけていたそうですよ。 |
みうら |
うーん、これはやっぱり
自分を完ぺきに
洗脳させてから普及する
活動だと思うんだ。 |
── |
でも、何かがないと、
あそこまで自分を洗脳できる力は
つかないような気がするんです。
どうしてTAROはTAROになれたのか、
みうらさんは、どう考えますか? |
みうら |
‥‥岡本さんって、
周りからはあんまりツッコまれないけど
自分で自分にツッコミ入れてるタイプの人
のような気がするなあ。
「それ、言いわけじゃん!」とか言う人が
うまい具合に周りに「いなく」て。 |
── |
うまい具合に。 |
みうら |
うん、い〜い具合に
いなかったと思うんだ。
まともな人とつきあってるとね、
必ず言われるんだ、やっぱ。
「そうじゃないだろう」とか
「それは言いわけだよ」とか。
たぶん周りが、ほら、パリだから、
芸術家の人ばっかりだったわけ。
だからツッコむ人が
ひとりもいなかったんだよ。
自分ツッコミはあっても、
人ツッコミはなかったかんじがするわ。
あんまりね、人にツッコまれないほうが、
いいんですよ。 |
── |
ツッコまれないほうがいい。
どうしてでしょう? |
みうら |
反省するから。 |
── |
おお! |
みうら |
大多数にツッコまれると
「悪いかな?」って思うでしょ、やっぱ。
ツッコむ人がいなかったら
「それでいいんだ!」って思えるよね。
『芸術と青春』で、「パリは自由な町だった」
と岡本さんは書いていたけど、
ツッコむ人がいないってことが、
ほら、自由の証だからさ。 |
── |
自由の国=ツッコミのない国! |
みうら |
なにしても「いいかげんにしろよ」って
言わないんだもん、誰も(笑)。
それが自由ってことだからさ。
「すばらしい!」と、「それでいい!」と、
そういうことで育った人って、
やっぱ違うと思うんだよね。 |
── |
みうらさんは、どうでした? |
みうら |
俺もね、俺のおかんが、
わりとそういうヤツでね。
俺は、小学校のとき
「マンガ家になる!」とか
中学に上がって
「フォークシンガーになる!」とか
いろいろ言ったんですけど、おかんは
「なれる!」って言うんですよ。
「なれる、なれる!」って言うのよ。 |
── |
自由の国ですね。 |
みうら |
俺、よくわかんなくて(笑)。
そのうち「自分ツッコミ」するようになって、
「世のなかはそんな甘いもんじゃない」
と、おかんに言うようになって。 |
── |
世のなかは甘くないよ、って
ふつうは、親から言われるものなのに。 |
みうら |
うちでは、息子の俺が親に対して
言うことだったの。
そのおかんの教育は、俺にとって
すごくよかったと思うんです。
「そんなもん、できないわよ」とか
小さいころから言い続けられている人って、
やっぱりね、卑屈になっちゃうんだよ。
|
── |
たぶん、みんな、そうですね。
親は自分が痛い目にあってきたぶん、
しっかりしろよ、と、伝えたくなりますから。 |
みうら |
そこに、ちょっといかれた人が周りにでもいて、
「すばらしい!」とか
「それでいい!」とか「できる!」とか
言われると、できちゃうんだよね、
やっぱね! |
── |
はー!!! |
みうら |
岡本さんは、そんな人だらけの
自由の町に行ったんだな。
でも、俺はパリには行かなかったから、
ちょっと悩んだわけですよ。
恋愛とかすると、
そうじゃいかないことも出てくるんだ。
岡本さんはいけてたけど(笑)、
俺はだめだったんだ。
13年前くらいに、
いちど「自分、困ったらどうかな?」と、
自分困らせブームがあったの。
「俺、困ったら、おもしろいこと
すっかもしんないかなー」
とか思って。
ひとりぼけ、ひとりツッコミの時代があった。 |
── |
なるほど。自分でツッコんで乗り越えると、
枠を広げられますね。 |
みうら |
やっぱり、周りの環境って大切だよね。 |
── |
TAROの育った家庭も、
そういうことを言われなさそうな環境です。
「自分を貫くことを母から学んだ」と、
言っているくらいですから。 |
みうら |
いやぁ〜、ツッコまれてないでしょうねぇ!
お父さんはマンガ家で、
お母さんは、かの子さんでしょ。
すばらしいことだよね。
やっぱり、ツッコミが
芸術家をつぶすんだよね。 |
── |
反省しちゃうから。 |
みうら |
反省するってことは、
まともになるってことなんだ。
だから、もしツッコまれても
聞かないふりしとけばいいんだよ。 |
── |
そうですね! |
みうら |
「○×%$なんだっ!」とか
強く言っとけば、押し切れるもん。
ツッコミを聞かない、っていうのが
芸術家の第一条件だね。
(来週の水曜に、つづきます!)
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