オリジナル・ラヴの田島貴男といえば、
泣く子も黙る、サウンドのクオリティと歌唱力。
そんな「こわいものなし」にみえる田島さんが、
TAROの文庫本をボロボロになるまで
読み込んでいるという噂を聞きました。
以前ケーキづくりが趣味だったという田島さんに、
岡本太郎記念館の庭にあるカフェ
a Piece of Cake
お話をうかがうことにしましたよ。


第2回
ノーガードに、なれるかい?


田島 僕は、もう、岡本太郎さんが好きで好きで
しょうがないんです。
やばいぐらい、はまってる。
会う人会う人、インタビューぜんぶで
必ず岡本太郎のことを言っていて(笑)、
自分で太郎さんのTシャツ着て歩いてますよ。
そんくらい、ほとんど、
恋に落ちた状態です。
岡本太郎さんの、
どんな人に対してもズケズケと、
思ったことを、
何の逃げ道もなく
言っている、あの姿!

ねえ?!
── どの著書をみても
この人は正直だな、というかんじがしますね。
田島 ふつうは、どこかしらあいまいにしたり
語尾を濁したりするでしょう?
あそこまではっきりと
逃げのないフレーズを
文章にしてしまえる人っていないと思う。
そんな言葉をみたのは、はじめてでした。
── それに、「芸術は爆発だ!」に
代表されるように、
どの言葉もわかりやすいです。
田島 かえって「岡本太郎を評論する本」のほうが
わかりにくかったりしますね。
本人の著書を読むのが
いちばん手っ取り早いし、わかりやすい。
とても不思議なことだけど、
評論をしている本は、おそらく
テンションで
岡本太郎さんに負けてるんだろうと思います。
やっぱり、岡本太郎さんと接するときは、
なーんにも考えちゃいけないですよ。
── そうですね。
TARO自身があれだけストレートなんですから。
田島 とにかくね、僕は今日、
ノーガードでのぞもう!
と思って来たんです。
── ‥‥それはすごい。ありがとうございます!
田島 なんのガードもない状態でないと
岡本太郎さんのことを話したことに
なんないような気がして。
── 考えてみれば、いまの、
田島さんたちの世代あたりからは、
小さいときからきちんと
社会性と相対的な価値観を身に付けていて、
なかなかノーガードになりにくいと思うんです。
なんかこう、1周まわらないと。
田島 うん、そうかもしれませんよね。
僕だって、パンク、ニューウェーブを
やっていたころには
斜に構えることがかっこいいと
思ってましたからね。
髪をウゥワーっと、立ててみたり。
── ハハハハ。はい。
田島 ノーガードみたいなことを
ほんとにわかりはじめたのは、
ボクシングに通いはじめたのと、
岡本太郎さんの本を読んだのと、
永ちゃんの本を読んだのと、
いろんなことが、い〜いかんじに
からみあっているからだと思うんです。
── ボクシングには、どういうきっかけで
通いはじめたんですか?
田島 「ボクシングジムに通ったら
 自分がどうなっちゃうんだろう」
っていう興味から、だったんですけれども、
入ってみたらものすごく気持ちのいい世界だった。
トレーニングはほんっとに
生きた心地がしないくらい
きついんですけれども、
そこにいるトレーナーや研修生をみていたら、
「あ、信用できる人って、まだまだいるのかもな」
って、なんとなくだけど、
そう思っちゃうんです。
こんなに一生懸命生きている人がいるんだ、って。
── なるほど。
田島 例えば、ボクシングで
日本のランキング10位以内に
入っている人たちも、ふだんは
お弁当屋さんで働いていたりなんかするわけです。
風呂敷包みのなかに
ボクシンググローブを入れて
ボクシングジムに通ってる人もいる。
音楽の世界とはぜんっぜん違う、
見栄や虚栄がない、
勝ち負けの世界。
── 「個」の強さでやっていける人たち。
すごいですね。
田島 なんだかボクシングは
自分に合ってるって思っちゃって(笑)。
昨日も行ってきましたよ。
── トレーニングって
どんなことをするんですか?
田島 ふつうに、縄跳びやって、
シャドウボクシングをやって‥‥
1時間半くらいです。
なんたって、僕は最初、
縄跳びすらろくにできなかったんですから、
ワハハハハハハ!
── 縄跳びが!
田島 3分2ラウンド、やらなきゃいけないんですけど、
20秒も、もちませんでしたね。
いまはふつうにできますけど、
「なんで、こんなきついんだ!」って
1ヶ月くらい吐きそうになりながらやって(笑)。


最初は縄跳びすらできなくて、ショック!
── そういうところで肉体と精神を鍛えていると、
いざというときに、力がつきますね。
田島 うーん。でも僕はまだまだ
ノーガードに「なろうと思っている」だけで、
どうしてもガードしちゃうときが
正直言ってあるんですよ。
── なかなかはずせない。
田島 僕、ニーチェを読んだときにね、
ニーチェもノーガード
だったんだってこと、わかりましたよ。
ニーチェもYAZAWAだったんだ、
と思って(笑)、感動しました。
とにかく、泣けるフレーズばーっかり!
── ニーチェを最初に読まれたのは、
いつごろだったんですか。
田島 高校のときですね。
そのときはただ、「ああ、そうなんですね」って
かんじで、読みました。
やっぱり、同じテンションで読まないと
わかんないんですよ。
去年から今年にかけて
『ツァラトストラかく語りき』を
2回くらい読んでますけれども、
もうガーガー涙が出てくるんですよ。
── 内容が、むずかしそうなイメージがありますが。
田島 僕は急にわかっちゃったんですよ。
永ちゃんの歌詞みたいに、
すらーっと入ってダーンと響いてくるの!
「なーんだ、こんなこと言ってたのか」
って、わかった。
ニーチェはピュアな人で、
文章を読んでいると
「この人は生きてたんだな」ということが
伝わってくる。
岡本太郎さんについても、
あの人は生きてたんだって、
バッシバシにわかるんですよ。
「生きてた、
 生きてたよ!」
って(笑)。
── TAROの言葉には、
魔力があるように思います。
田島 言葉、すごいよ!
生きるうえであれだけ参考になる言葉を
みつけられる本っていうのは
なかなかない、と思います。
じつは、格闘技の人も
岡本太郎さんのこと好きだったりするんですよ。
ぼくの知りあいで、
空手の道場をやっている人がいて、
その人、絵のことは
ぜんぜんわかんないんですけれども、
岡本太郎さんの本は好きで、読んでるんです。
僕ね、岡本太郎さんは
スポーツみたいにして
絵を描いてたと思うんですよ。
汗をびっしょりかいて。
すずしーく、かるーく描いてたんじゃなくて、
もうヘットヘトになっていたんじゃないかな。
── ビデオでTAROが彫刻を制作しているシーンを
みたことがあるんですけど、
バーンバーン、と、
顔にたくさん破片を飛ばして、
必死なかんじでした。
田島 すごいわかる、それ。
だから、岡本太郎さんの本は、
ジムに行ったあとも
同じテンションで読めますもんね。

(つづきます!)

田島さんの選んだのみもの
チャイ 600円

a Piece of Cake

岡本太郎記念館の庭に面したカフェです。
庭にあるTARO作品を眺めながら
おいしいお茶やケーキをたのしめます。
※記念館に入館しなくても、カフェに入れますよ。
 お散歩がてら、気軽に入ってくださいね。

2003-12-12-FRI

このページに関するメッセージをpostman@1101.comまでお寄せ下さい。
このページの全部または一部の無断複製・転載を禁じます。