── |
よく言われていることなんですけれども、
TAROは亡くなるまで、画壇から
正当な評価をされていなかったようなんです。
いまの若い世代は、芸術家としてではなく
「タレント」のように認知している人も
大勢います。 |
田島 |
うん、うん。
あのね、これは好みの問題ですけれども、
僕は、世間から「一流」と呼ばれて
価値があるかのように言われている
クールな人よりも、
岡本太郎さんみたいな人が好きなんですよ。
その人の作品に触れると、
自分のなりふりかまわず愛せるんですよね。
矢沢さんもそうだし、あとは、
マーヴィン・ゲイなんかも、そうかな?
いわゆる
「あの人、すばらしいバカをやってるな」
って思える人たち。
頭のいい音楽って、
かっこいいなと思うんですけど
そこどまりだったりして、
愛すところまで
行かなかったりする。
「マイナスに賭けろ」って
勇気を持つことの大切さをあらわしている
フレーズだと思うんです。
いわゆる「すばらしいバカ」の共通点は
やっぱり愛と勇気だと思うんですよ。
すごく陳腐な言い方ですけど、
ここで恥ずかしがってちゃいけないんだな!
思いっきり叫ぶように言わなければ! |
── |
ハハハハ。 |
田島 |
からだでモノを考えるほうが、
僕は好きなんですよ。
アーティストって
そういうものなんじゃないかなって思う。
冷静になってクールにものをつくるのは
評論などの客観的な作業であって、
歌手や絵を描く人なんかは、
客観性はもちろんあるんでしょうけど、
主観の盛り上がりがガーッとあって(笑)、
そこでどれだけ自分のテンションが上がるかが、
まずは出発点になると思う。 |
── |
社会での価値、評価などを
すぐに考えてしまうんですけれども。
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田島 |
「社会の価値とか評価とか、
そんなもの、ないんだ!」
と、そういうことをとことんまで言っているのが
岡本太郎さんであり、ニーチェであるんですよね。 |
── |
でも、そう言ってはいるものの、
ニーチェもTAROも
エンタテイナーですね。 |
田島 |
むちゃむちゃ、エンタテイナーですよ。
ポップです。 |
── |
そう、ポップです。 |
田島 |
僕ね、自分の曲をつくるうえで
なにをいちばん最初に考えるかというと、
「これ、ポップかな? ポップじゃないかな?」
ってことなんです。
ほんっっと、そんなことばっかり考えながら
曲つくってます。
それは、オリジナル・ラヴをはじめたときから
ずーっと自分のなかで引っ掛かっていました。
「ぼくだけじゃなくて
みんなに聴いてもらうべきメロディーか」
「伝わるべきだと自分が思っているか」
だから、オリジナル・ラヴは、
「ポップスやってます」って
ずっと言っているんです。 |
── |
なるほど。 |
田島 |
あっ! もしかして、
僕の言う「ポップ」っていうのと
矢沢さんの言う「ビッグ」っていうのは
おんなじなんじゃないか? |
── |
はい(笑)。 |
田島 |
ハハハハハハ!
とかな、ってね。
そんな気がして(笑)。
「坐ることを拒否する椅子」に、座っちゃえ!
太郎さんの作品を前にすると
なんだか挑みたくなるんですよ。 |
── |
自分を貫き、かつ、
エンターティメントをしていると、
「すばらしいバカ」に
なれるのかもしれませんね。
TAROは、「誤解される人は、美しい」と
言っていますが。 |
田島 |
それどころか、
どんどん誤解されなさい、
誤解で自分を飾りなさい、とまで
言っちゃうんだもの。
これまで自分が見聞きしてきたことと
正反対のようなことを
言われたような気がしましたよ。
僕も雑誌などに出だしたりしたときに
「あれ?違うのにな。
こんなこと言ってないのにな」
って思うことがあったんですけれども、
そうだったんだよ、
いままでなにを誤解なんて
ちまちま考えて
いたんだよ、俺!って。
誤解で飾らないと、俺まずいっ! |
── |
たぶん、TARO自身が幼いころから
「違うのにな」ってことがたくさんあって、
それでやっと「飾る」まで
行き着いたんだろうな、
というかんじがします。 |
田島 |
そうだよね。見つけたんですよね。
やっぱり若いときって、
迷いたくないし傷つきたくないから
守りに入る。
よく「こわいものしらずの時期」って
言われますけど、そうじゃないのかもしれない。
年取ったほうが勇敢になれるし、
若いときのほうが臆病ですよね。 |
── |
おそろしいですよね、いろんなことが。 |
田島 |
まあ、僕はいまでも
ぜんぜんものすごい臆病なんだけど、
臆病でも、
「こわいと思うもののなかに
入ってしまうことが
すばらしいことなんだ」
ってことを、
いまでは知ってる。
その違いは大きいです。
岡本太郎さんは、
「どんどんバカなんじゃないかって言われろ」
と言う。
そういうふうに言ってくれる人って
いなかったんですよ。
「冷静になれよ」「クールになれよ」って
意見ばかりでね。
そんなふうに背中を押してくれる人って、
いないですよ。 |
── |
子どものころには、けっこうアホに、
思いっきりやっちゃった経験がありますが。 |
田島 |
なにも考えていなかったからね。
でも、子どもの絵と画家になったときの絵は
違うって太郎さんはおっしゃってますね。
子どもというのは天然の自由だけれども、
大人になった、画家になったときの絵は
勝ち取った自由だと。
まったく別の絵なんだってことを言ってて、
僕はそこにすごく共感します。
(金曜日に、つづきます!)
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