田島 |
いくら才能があっても
歌ってると、ばれるんですよ。
例えば、自分の気持ちが高まっている歌は、
みんなに伝わるし、一歩置いてる歌というのは、
一歩置いてる歌どまり。 |
── |
それは、お客さんの反応で
わかるものなんですか? |
田島 |
ライブでは、ほんとによくわかる。
いいとき悪いとき、ありますよ。
そういう面ではね、
矢沢さんはすごいな、歌手だなあ、って思います。
武道館で、「時間よ止まれ」とか
「チャイナタウン」を聴くと
毎回グッと来るんですよ。
同業者として、ほんとにびっくりしますよ。 |
── |
ライブというのは、毎回満点というわけには、
なかなかいかないもので、
0点のときもあれば、500点のときもある。
そこで、録音してCDというひとつのパックで
100点を極めようとする音楽づくりもある。 |
田島 |
あ、でもぼくは、じつを言うと、得意なのは
ライブなんですよ。
できればCDつくりたくないっていうくらい(笑)。
ライブで新しい曲をやんなきゃいけないから
アルバムつくるっていうかんじです。 |
── |
わー、それは、みんなぜひ
オリジナル・ラヴのライブに
行くべきですね。 |
田島 |
そうですよ!
みんな、
なんでライブに来てくんないかなあ!! |
── |
ハハハハ! |
田島 |
ライブはおもしろいですよ、やっていて。
だめだったときも、もちろんあるんですけど、
それも一個一個よくわかるし。
歌って、かなりメンタルなものなんですよ。
「アッ! 客がうけてない。
うける歌を歌わなきゃ、っていう歌」を
歌ってたりとかね! |
── |
(笑)歌いながらわかるんですか? |
田島 |
最近は、そうですね。
いつもみてくれるかたは、
わかっていただけていると思いますけど、
ぜひライブに来てくださいよ。
歌、ぜんぜん違いますから。
CDは、あんまり得意じゃないんです。
ッハハハハ! |
── |
もしかしてそれは、
CDをつくるのが好きだからじゃないでしょうか? |
田島 |
うーん、好きですけどね。
というか、嫌いなくらい、大っ嫌いなくらい好き、
というか(笑)。そんなかんじです。
また曲つくんのかよ、俺!
ざけんなよ、
でも、つ〜くってやるぜ!
最高の曲を!って。 |
── |
いいですねぇ。 |
田島 |
アルバム6枚目くらいから、そんな感じですよ、
ずーっと(笑)。 |
── |
いやあ、ほんとに意外です。 |
田島 |
そんなことないですかね、みんな。
岡本太郎さんだって、そうでしょう。
岡本太郎さんも矢沢さんも
がんばってるイメージが、ちゃんとある。
そこに共感するのかなぁ。 |
── |
がんばってるんだ、っていうことが
見えない構造になっているんですかね、いまは。 |
田島 |
がんばってるのってかっこわるいし、
みっともないからね。
がんばってるってことを
「売り」にしちゃだめだけど、
「そんなにがんばらなくっていいよ」
なんてことは、ぜったい言っちゃいけない。
ほんとに。
もちろん、ときと場合によると思うんだけど、
「あきらめが肝心」とか
「がんばりすぎない」とか、
そういう言葉を得るには
そこまでに自分が
どれだけがんばったかが大事です。
ふつうにしているテンションで
「がんばんなくてもいいよ」と
最初から言われるとしたらね、
闘いを最初から
よけるだけって気がするな。
そこでがんばって、たいへんな思いをしちゃって、
ずーっとやっていくと、
いつのまにか実力と言われる力が
ついてくるんじゃないかなあ、という気がする。
そうやって、やっと僕みたいな者も、
世の中に出てミュージシャンと
呼ばれるようになるのかな。
20代の自分って、はたして
ミュージシャンとかアーティストって
呼べたのかなって思います。 |
── |
田島さんはいま、37歳ですよね。
そのあたりのことが開けてきたのは、
30歳越えてからですか? |
田島 |
自分がライブをやっていて
やっと「ほんといいライブだったな」と
思えるようになったのは、
33‥‥とか4とか5とか。 |
── |
つい最近ですね。 |
田島 |
そう。20代のころはね、
まったく
わかりませんでした。 |
── |
最近は、他の方のプロデュースをなさったり。 |
田島 |
はい、すこしだけね。 |
── |
しつこいようですが、田島さんは、
プロデューサーとして活躍なさって、
音楽業界に君臨して、
そういうかんじの大御所に
なられていくのかと思ってました(笑)。 |
田島 |
なーんでですか(笑)。
音楽業界に君臨したかないですよ。
それはね、音楽をリタイヤするということです。
僕は、お客さんの前で、
最高の出し物をやれてる状況にあるのが理想です。
矢沢さんとか、ほんとにうらやましいですよ。
50歳すぎて、あーんなこと、やってんだから。
ほんっっとに、奇跡的だし、あれが
ミュージシャンの夢なんじゃないでしょうか。
武道館いっぱいにして、
肉体的にも精神的にも
あんなコンサートやってるなんて。
やっぱり、半端じゃないんですね。
おかしな人だと思うんですけどね。 |
── |
はい。 |
田島 |
矢沢さんはライブを、
おそらく30代のころと、
おんなじテンションのものを
やっていると思うんですよ。
同じように歌ってる。
ポール・マッカートニーも
60歳越えてるだろうに、
東京ドームで3日間つづけて、
2時間ちょっとのステージをやる。
ほとんど立ちっぱなしだよね。
いや、もう、すごいよ!
そこに泣きましたね、僕は。
すごい人の特徴って、
みんなそんなかんじするんですよ。
喜納昌吉(きな・しょうきち)さんもそうだ。
3年くらい前にライブをみにいったんですけど、
枯れてるってかんじはぜんっぜん、ない。
もう、
獣みたいな歌なんですよ。
ハハハハ!
なんだ、この人は!
ヘヴィメタルみたいなサンシンでね。
岡本太郎さんだって、そうだったでしょ。
あの人たちがやったくらいの、
「夢」をつくりだす力を、
どんだけ俺らが
持てんのか、って気がします。 |
── |
敏子さんも小説を書いてますし。 |
田島 |
かぁーっこいいと思いますよ。
エッチなやつでしょ?
そこはすごいよ。 |
── |
一瞬一瞬で燃え尽きて。 |
田島 |
うん。アルバム1枚つくると、
頭まっしろになりますからね。
次に曲書くときは、
完全に書き方を忘れてます。
ほーんと、ゼロになる。
「作曲って、なんだっけ?」と。 |
── |
ほんとですか? |
田島 |
CDをつくる最初の1ヶ月2ヶ月というのは、
作曲のしかたを思い出す作業です(笑)。
ひどいときには、
音楽の聴き方もわかんなくなっちゃう。 |
── |
「音楽って、なにがいいんだっけ?」 |
田島 |
「ま、とりあえず、
ビートルズとかを聴いてみるか。
あ、そうだったね、そうだったね」(笑) |
── |
そこまで1回1回に
つぎ込むってことですね。 |
田島 |
ええ。1回1回、
忘れるくらいにまで、虚脱する。 |
── |
毎回毎回、たいへんだってことですね。 |
田島 |
それをね、
50歳までやるんだ、
ってことです。 |
── |
それが一流ですね‥‥。
権威をもたない、一流。 |
田島 |
そうだね。つまり、
ばかにされないことや、
権威に固執した仕事
をしているのか、それとも
そうじゃないところで
表現しているのか。
そこに自分を賭けてやってるか。
そういうことで違ってくるんだと思います。
だから、岡本太郎さんはバカにされるんですよ。
でも僕らは、そこに打たれるわけです。
だって、「えらいです」みたいな人の歌なんて、
聴きたくないですよね?
「権威」とか「よく知ってる」とかをなしにした
歌のすばらしさをやりきれたらいいなと
ずっと思ってる。
岡本太郎さんは、そんなふうなことをすべて
おおっぴらに言ってる人なんですね。
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