大西 |
テレビで絵を描いたときに手紙をもらったあと、
インドに行く機会があって、
そこではじめての油絵を描いたんですよ。
僕のマンダラを描こう思て‥‥。
それで、もう一回、岡本太郎先生に
僕の絵をみてもらおうと、描いてたら、
インド行ってるときに
岡本太郎先生が亡くなってしまったんです。 |
糸井 |
そっかそっか‥‥。 |
大西 |
ほんで、ついぞ、
もう先生に会えずやなぁ、と思て。 |
糸井 |
でも‥‥もし会っていたら、
逆にまとまりがついちゃってたかもね。
「会ってない」ってのも、またすごい運命だね。 |
大西 |
そうですね。運命なんですかねぇ。 |
糸井 |
一生、ほんとの答えを見つけられない、
みたいなさ。 |
大西 |
そうなんですよ。
ほんっと、もう‥‥。 |
糸井 |
「ああいう手紙は書いたけど
ほんとは、あんまりよくないよ」
なんて言われたらおしまいだし(笑)。 |
大西 |
ああ、もう、太郎先生に
「よくない」なんて言われたら、
またそこで絵をやめてたかもわかんないです。 |
糸井 |
ね? |
大西 |
「えらいまとまってきたなぁ、
もう、ええことないわ」
なんて言われたら、
やっぱりやめようかな?とか
思いますよ。 |
糸井 |
前のほうがよかった、とかね(笑)。 |
大西 |
はい。
「前の感覚はどうしたんや!」
とか。 |
糸井 |
めげるよね。 |
大西 |
そうなったら
たぶん途中で挫折してるかもわかんないです。 |
糸井 |
それから、
実際に会ってあんまり絶賛されてもさ、
舞い上がっちゃうし。 |
大西 |
わ、そうですね。 |
糸井 |
会えないっていうの、
すごいなぁ! |
大西 |
会えてないから、
かえって
よかったかもしれない‥‥。
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糸井 |
大西さんの絵を
岡本太郎以外の人も
褒めてくれるようになったのは、
描きはじめて
しばらく経ってからなんですか? |
大西 |
何枚も絵を描いて、
個展とかをするようになって、
みんなに「いいね」って言っていただける機会が
多くなったというかんじですけどもね。
でもだんだんこのごろは、
「前のほうがよかったよ」っていう、
お客さんも、いらっしゃるし。 |
糸井 |
まあ、それは誰もが必ず言われることですよ。
でも、いっぱい描いてくことによって、
「これはよくてこれは悪い」
っていう判断が自分で
どんどんつくようになってくるでしょう? |
大西 |
あーー、それが、逆なんですよ。
麻痺してしまうんです。
なにがいいか、悪いか、
わかんなくなってしまうんですよ。 |
糸井 |
「できて気持ちいい」
とかいうのはないの? |
大西 |
絵ができあがって、
僕は「あ、いいな」と思うんですよ。
それをみんなにみせたら
「なんでこんなん描くの?」
といわれることが、けっこうあるんです。 |
糸井 |
へぇえ。 |
大西 |
「わ、暗(くら)〜」いう意見とか。 |
糸井 |
そうか。
じゃ、自分としては
いまはもう「出す」だけですね。 |
大西 |
もう出して出して。
ひたすらに。 |
糸井 |
そうなると岡本太郎に、
また褒められたくなるね、確かに。 |
大西 |
はい。 |
糸井 |
でも、いないから、もっと出すしかないんだ。 |
大西 |
そうです。もう、
「キャンバスからはみ出せ」ということを、
「爆発だ」ということを追及していく。 |
糸井 |
うん。
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