「ひと目みて心を奪われる」といわれる、
色彩あふれる絵を描くジミー大西さんは、
数年前までは「お笑い」のタレントさんでした。
2002年12月より日本全国を巡回している展覧会に
足を運んだ人の数は
いまや、ゆうに30万人を超えるといいます。
ジミー大西さんが
タレントから画家に転向したきっかけには、
晩年のTAROがかかわっていたとか。
darlingがお話をうかがいましたよ。


第7回
デッサン。そして、空気をつくること。


糸井 岡本太郎記念館に行くと、
絵がいっぱいありますよね。
大西 はい。
糸井 その絵をみて、みんな
いっろんなことを感じるわけです。
でも、岡本太郎に向かって、もう、
「上手」とか「下手」とかは、
言えないですよね(笑)。
大西 そうですよねぇ。
糸井 ただ、
なんでこんな自信持ってんだろうな、
っていうことは、思う(笑)。
大西 そこがわかんないですよね。
僕があんまり偉そうに言うのは、
恐れ多いんですけども、
先生ってやっぱり、自由に描いてるなあ、
と、よーく感じます。
糸井 あなたから見てもそうですか(笑)。
大西 はい(笑)。
先生、自由気ままに描いてはるな、と。
逆に、いま、自分はデッサンで
すごく悩んでるんですよ。
糸井 うん、うん。
欲しくなってるんだ。
技術の力が。
大西 デッサン力があったら、
自分の描きたいものが、もっと十分描けるのに。
糸井 うん、いい道具を使うのと同じことだもんね。
大西 そうなんですよね。はぁぁ(ため息)。
糸井 だって、あの横尾忠則さんでも
デッサン力が欲しいっていうもん。
大西 あ、そうなんですか。
糸井 あの人、ものすごい
達者に描けてるでしょう。
だけど、技術が欲しいって、いまでも言う。
大西 横尾先生、なにを、もう、
‥‥すごい技術ですけどね。
糸井 すごい技術ですよね。
だけど、もっとないと、できないんだって。
大西 やっぱりそうなんですか。はぁぁ。
糸井 僕もそれを
横尾さんの口から聞いたときには、
「ハッ、やっぱりそうですか」って思いと、
意外な気持ちと、両方あったね。
大西 はぁ‥‥。
糸井 そんなのどうだっていいじゃないか、
って言いそうなところも、横尾さんにはあるし。
だけどね、それを聞いたとき、
「あ、技術というものは
 いっくらでも欲しいんだ」
って思った。
大西 はぁ〜‥‥。
欲張りですね。
糸井 欲張りですねぇ!
いや、ほんとそうだね。

大西 だから僕も、あるところ
欲張りたいなと思ったりします。
でも、いっつも太郎先生の作品を
みさせていただいているときに、
うまく言えないんですけども、
「太陽の塔」や、
先生の、ある意味確立された絵が
世に出てきたのをずーっとみていると、なんだか
「先生、デッサンしてないなぁ」
って思うんです。
糸井 うん、僕もそう思う。
太郎が生きてたら、
「なにをデッサンなんて言ってるんだ!」
って、言うんじゃないか?
大西 たぶん‥‥。
糸井 でも、技術は欲しいよね。
大西 欲しいんですけど、いっつも
太郎先生の絵を、パッて見るなり
勇気づけられる‥‥。
糸井 岡本太郎って、悪い言い方すれば、
図々しいんですよね。
大西 はい。
糸井 「こんなに自信を持てるようなものを
 つくってるって、
 自分でどうして思えるんですか?」
という図々しさがあるんですよね。
同じことがきっと
「お笑い」でも言えると思うんだけど、
さんまさんは、
おもしろくないときでも
おもしろいじゃないですか。
大西 ハハハハ。
糸井 なんにも言ってないときでも、
笑いの中にみんなを
一気に突っ込んじゃう。
あの世界に、みんなは感じるんだよ、やっぱり。
大西 空気づくりから
やってるからですね。
その場を自分の空気にしてるから。
糸井 そう。さんまさんの言った言葉を
あとでギャグとして文字にしてみて
おもしろいかというと、
そんなことはないですね。
でも、みんなで大笑いしてる。
大西 だから太郎先生も、
空気づくりは、絶対にあるんでしょうね。
その空気はオーラやったりする。
糸井 ああ、
それは、欲しいでしょうね。
大西 ものすごい、欲しいですね。
いつも太郎先生の絵をみると、
もう自由でいいんや、
それよりも、「人間」の部分を、もっともっと、
出していけるようにがんばらないと、
と思います。
糸井 そうだよね。
太郎さんを撮った写真も、
あの人の描く絵みたいに、
不思議なものがあるよね。
こうやって、ポーズ取ってるけど、
あれは作品だよね(笑)。

(つづきます!)

2004-02-24-TUE

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