大西 |
こないだメキシコに行ったんですけど、
メキシコのおっきな美術館に、
「うわぁーっ!!」って心にせまる絵が
1つだけあったんです。
ルフィーノ・タマヨという人の
絵だったんですけれども。
もう「太陽の塔」と出会ったときぐらいの
感動をしたんですよ。
これはすばらしい!すごい!と思って、
遠くでみたり近くでみたり
いろんな角度で、
とにかくみとれてしまったんです。
「ほかにどんな絵を描いてんねやろ」と思って、
どうしてもその人の画集が
欲しくなったんですよ。
ほんで、美術館の下の階で画集が売っていて、
僕はお金の計算できないけども、
「とりあえず持ってるお金のなかで、
買えるもんやったら買いたい」
と言って、手に入れたんです。
ほんで、その画集をパーッてみると、
もんのすごい気持ち悪いんですよ。
美術館に展示してあったその絵だけは
気に入ったんですけど。
顔に釘を打ってる絵とかが、
出てくるんですよ。
「うわ‥‥展示してある絵をみるだけで
終わっといたらよかった」
って、思いました。 |
糸井 |
そうなんだ。
ルフィーノ・タマヨ‥‥。 |
大西 |
画集みて「やっぱりきてるわ」って言ったら、
周りの人が
「ジミーちゃん、心配せんでも、
ジミーちゃんもかなりきてるよ」
って(笑)。逆に、
ちょっとひと安心したりして。
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糸井 |
でも、その画集が
「気持ち悪い」っていうのと、
「いい」っていうのの境目って、
よくわかんないですよね。
ほんっとにいいな、と思うものって、
ちょっと気持ち悪くなったりしない?
たとえば、女の子もそうでしょう。
ちょっと「かなわんもの」を感じるから、
魅力があるんだと思います。 |
大西 |
ああ、なるほど。 |
糸井 |
岡本太郎も、
青山の記念館に行くと、
ときどき気持ち悪くなるんだよね(笑)。
「あたった」みたいになるんですよ。 |
大西 |
ハハハハ。 |
糸井 |
僕はね、ジミー大西の絵にも、
それは感じる。
ただの「さわやか」ではない。
なんか不気味なものが、あるよね。
やっぱりすごいものを
持っているんだと思うよ。 |
大西 |
そうなんすかねぇ‥‥。 |
糸井 |
吐き気を催させるような、さ。
横尾さんも、そうだよ。
僕は横尾さんの絵をはじめてみたときに、
あんまり気持ち悪くて、
夜中に何度もみに行っちゃった。
なんというか‥‥
あんまりにも気持ち悪いものって、
つまり「自分と呼び合ってる」んだと思うよ。 |
大西 |
ふーむ。 |
糸井 |
さっきの画集って、
あとで「いい」って思うかもしれない。
大事にしてたほうがいいよ。 |
大西 |
そうですかね。 |
糸井 |
たとえばさ、鳥が飛んでるときって
きれいでしょう。
だけど、近くで見ると、
鳥って、蛇の顔してるんですよ。 |
大西 |
はい、眼が獰猛でね。 |
糸井 |
うん。
で、その両方が、鳥なんです。
えげつないものと、
うわぁ、すばらしい、ってものが、
重なるんだよ、たぶん。
もしかしたら、それが太郎の言う
「はみ出す」なのかもしれない。 |
大西 |
ああ! そうですかね。
そういうことが爆発になったり。 |
糸井 |
爆発って、迷惑じゃん。
きっと、もっと「迷惑」をしなきゃ
いけないんじゃないかな。 |
大西 |
アハハ。 |
糸井 |
「絵を1個見ただけで、
もう人生、嫌になっちゃいました」
って人がいてもいいし。 |
大西 |
はい。 |
糸井 |
「もうすっかりやる気になっちゃって、
会社辞めました」
でもいいし。
そのくらい与えられるものだと思いますよ、
やっぱり、絵って。 |
大西 |
その「はみ出すかんじ」
ルフィーノ・タマヨの絵の
「よさ」にたどり着くときが
‥‥ちょっと怖いです。
(いよいよ来週はジミー大西さんの
最終回ですよー!)
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