長坂 |
TARO MONEYがプロジェクトとして
実現するためには、さまざまな費用が
糸井重里事務所にかかっています。
愛媛にも出張しましたし、
制作したチラシ類、実地販売もそうです。
それから、現在売れ残っているTARO MONEYの
原価を寄付額から引くのか引かないのかも
問題です。 |
菅野 |
私は、コイン、パッケージ、封筒など
買ってくださった方の手もとに渡ったもの以外の
お金をすべて寄付にしたいです。
売れ残っている分に関しては、
まだお客さまに届いていないのですから、
その原価を寄付から引くというのは
おかしいんじゃないかな、と思います。 |
山田 |
まず、TARO MONEYをつくるのに
全部でいくらかかりましたか? |
菅野 |
えええっと。
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長坂 |
くわしい内訳にある、TARO MONEY硬貨制作費、
パッケージ制作費、封筒代、
これを全部足せばいいんですよ。 |
山田 |
カチャカチャ(電卓を打つ)
1072万9150円かかってますね。
純粋に、制作だけで、この額です。
で、TARO MONEYはいくら売れました? |
長坂 |
4204万5715円ですね。 |
山田 |
そこから1072万9150円をマイナスして
さらに税金を引くと
1814万7949円。 |
菅野 |
これは何をやってるんですか? |
長坂 |
売れた額から
制作にかかった額と税金を引いたわけです。 |
山田 |
1814万7949円、
寄付はこれでいいんじゃないでしょうか。 |
菅野 |
売れた金額から
制作費と税金を引いたお金‥‥むむ、
なんだか納得するかんじがする!
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長坂 |
でも、売れていない分の原価は、ふつう
在庫にのっけますよ。
TARO MONEYは、これからも
売りつづける予定ですから、
それは在庫として、原価からはずさなきゃいけない。 |
山田 |
プロジェクトがつづくとしても、
ここは会計上完結させて、
将来売れそうな分を除外して
それ以外の売れ残りそうな分の原価は寄付から引く、
という計算を
少なくともしておいたほうがいいんじゃないかな。 |
菅野 |
うーん。TARO MONEYの2000円は
「手にしたTARO MONEYの原価」「寄付」「税金」
に分かれるのであって、
「ほぼ日」の動きを軸にするのは、
寄付してくださった方からすると
ちょっとわかりにくいです。
それに「最後に売れ残りそうな分」をいま
寄付の額から引くというのは考えられないですよ。 |
山田 |
ううーん、そうですか。 |
菅野 |
『明日の神話』は行き先が決まっていませんし、
TARO MONEY販売もつづけます。
ですから、TARO MONEYの在庫分を
いまはいったん「ほぼ日」が持つ、という形に‥‥
「持つ」という言い方はちがいますね? |
長坂 |
そうですね、実際にはすぐには費用にならないので、
在庫として残る、ということになります。 |
菅野 |
そうそう、在庫として残る、ということにして、
一旦置いておきたいと思うのですがいかがですか。
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山田 |
全部、ですか。
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菅野 |
そうです。
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一同 |
‥‥‥‥。
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山田 |
在庫を負うということは、
最終的には糸井事務所が損失を負う形になります。
ページ制作、コインのデザイン制作、
TARO MONEYチームの主要メンバー4人の
数か月の人件費を考えれば、すごい負担です。
さらに在庫を負担するというのは、
会社としてどうなんでしょう。
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長坂 |
‥‥でも、このプロジェクトは
性質がちがうような気もしますね。 |
菅野 |
まず、ひとつのたのしさとして、
岡本太郎という土俵で
糸井重里がいったいどういうことをするのか、
ということがあったと思うんです。
そこで、TARO MONEYという
アイデアの結集のようなものが生まれて
青山ブックセンターや
TSUTAYA TOKYO ROPPONGIをはじめとする
店舗のみなさんにご協力いただいたり
いろんな広がりを生みました。
在庫はこれからの動きにも必要なもので、
その原価が、すでに寄付したみなさんのところに
かかってしまうのは、どうでしょうか。 |
長坂 |
一般的な募金で、原材料費以外にも
組織を運営するための人件費などを
引くところはあります。
募金活動のみを行なう団体の場合、
継続的に活動していくために必要なことなんです。 |
菅野 |
しかし、今回はとにかく
「実(じつ)」が欲しかったんです。 |
山田 |
‥‥なるほど。
ほんとうに『明日の神話』を修復保存する
「金」が欲しかったんですね。 |
長坂 |
そのためにできることをやる、という
会社をあげてのプランだったわけです。 |
山田 |
たしかに売れ残りがあるのは、ぼくらの責任なので、
それを買ってくださった人の気持ちに
乗っけるというのは
フェアじゃないですよね。
フェアにやるとすれば
売れ残ったものは、ぼくらが責任をもって売るように
努力すべきなんでしょう。 |
長坂 |
売れ残り、いや、在庫があるということは、
まだ数千人の寄付をお待ちしている、
と言えるんですから
判断を間違えたということではないですよ。 |
山田 |
わかりました。
「お客さまの手もとに届いたものの原価」
「税金」
このふたつを引く、という方針でいきましょう。 |
長坂 |
でも‥‥このやり方をすべての団体が真似すると
たいへんなことになっちゃいますね。
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菅野 |
こんなふうに寄付をするというのは
無茶な話なんでしょうか? |
長坂 |
広告を出したりして、スポンサーから寄付を集める、
というやり方もありますが。 |
山田 |
企業の文化事業など、メセナ系のものは、
「出資だけをして財団をつくり、そこでまわす」
というやり方をします。
そこに近いと言えば近いですよ。
うちは分離させていないから
「在庫どうする」「人件費どうする」
という話になっちゃうんだと思うんです。
会社の事業として寄付活動を行なうのは
ちょっと限界があります。 |
菅野 |
寄付、むずかしい。勉強になりました。 |
長坂 |
もともと「会社がやる」ということとの相性が
とても悪いんです。
会社はどうしても
利益を出すことを前提に置いているので、
税金のかかり方も
利益が出たんだったら
その利益の何割かを税金として納めましょう、
という手順になります。
寄付したいところに直接お金を入れるのが
いいんでしょうけど、
それじゃ個対個になっちゃうから。 |
山田 |
そこが今回の肝ですね。
寄付したい団体に直接お金を入れれば
そのまま渡るんです。
けれども、1990万円という金額は
普通の募金活動では到底集まらなかった。
TARO MONEYだと、それが集まった。 |
長坂 |
コインになることで
目に見える喜びがありましたし、
壁画の思い出にも、
また観にいこうという気持ちにも
つながりましたよ。 |
山田 |
「寄付をするために何をするか」については、
胸に羽をつけるとか、100km走るとか、
これまでいろんなことが考えられてきたんです。
「お金を集めるためにお金をつくる」というのは
ある意味いちばん寄付を楽しむ行為じゃないかな。
お金とお金の交換なんですから。
まあ、つくるのにお金がかかるから無意味じゃないか、
と言われるかもしれませんけど。 |
長坂 |
何百万単位で原価がかかっていますものね。 |
山田 |
そういう発想でいくと、
「糸井さんの持ち物をチャリティーで
売ればいいじゃん」とか、
そういう意見も出てくるんです。
でも、今回はそうしなかった。
税金のことも原価がかかることもわかったうえで、
また、2000円と高額なのに、
2万セット以上が売れました。
これだけの人が賛同してくれるお祭りにするのは、
ほんとうはむずかしいことだったでしょう。
TARO MONEYはお金の姿をしていることによって
「募金ってなんぞや」という問いを
投げつけましたね。 |
長坂 |
コインが4つくっついてるのも、人に配るのも、
名前を登録できるのも、みんな新しくて
意味があったと思います。 |
菅野 |
TARO MONEYを寄付の媒体にしたおかげで
広がりも意味もどんどん勝手について
転がっていくのがわかります。
このコンテンツは、不思議な感覚が
ずっとあるんですよ。
‥‥ところで、山田さん。
結局チラシ類やらPOP類やらも
費用にのっけてないけど、いいですか? |
山田 |
はー、いいと思います。
売れた分のTARO MONEYにかかった
原価を純粋に引く、という考え方にもとづくと、
チラシやらポスターなどのお金も
除外すべきでしょうね。 |
菅野 |
まるまる持ち出しになりますが‥‥。 |
山田 |
もう決めましたから!
今回はこういう考えでいきたいと思います。
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菅野 |
これからも絵は動くので、
もっともっとTARO MONEY、
みなさんにお買上げいただきたいと思ってます。 |
山田 |
がんばりましょう。
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