今回は、TARO MONEYの寄付について
8月31日までの中間報告をいたします。

販売開始から8月いっぱいまで、
およそ4か月間の総売り上げは4204万5715円でした。
ここから原価769万1479円、
税金1444万5956円
(平成18年3月度法定実効税率 42.05%)
を引いた額、
1990万8280円
を、『明日の神話』に寄付することができます。


こちらをクリックすると拡大されます
(さらにくわしい内訳は、こちらでごらんください。)

TARO MONEYを手にしてくださった
(8月31日までの期間で
 2万2034セット8万8136枚でした)
みなさまのおかげで
たくさんのお金が『明日の神話』のために役立ちます。
ありがとうございます。

実は、この中間報告ができるまで、
「ほぼ日」スタッフのあいだでは
何度か話し合いが行なわれてきました。
それは、糸井重里事務所という企業が、
TARO MONEYの活動をどう位置づけるのかを決める
重要な話し合いでした。
「『明日の神話』の応援」という目的で動くスタッフと
ひとつの企業がTARO MONEYをどう扱うかを
コントロールしなくてはならない役割のスタッフの
ぶつかりでもありました。

糸井重里は、この話し合いの内容も
すべて明らかにすべきだと提案しました。

かっこいい話し合いではないのですが、
結論を出すに至ったミーティングの内容を
お伝えしたいと思います。


長坂 TARO MONEYがプロジェクトとして
実現するためには、さまざまな費用が
糸井重里事務所にかかっています。
愛媛にも出張しましたし、
制作したチラシ類、実地販売もそうです。
それから、現在売れ残っているTARO MONEYの
原価を寄付額から引くのか引かないのかも
問題です。
菅野 私は、コイン、パッケージ、封筒など
買ってくださった方の手もとに渡ったもの以外の
お金をすべて寄付にしたいです。
売れ残っている分に関しては、
まだお客さまに届いていないのですから、
その原価を寄付から引くというのは
おかしいんじゃないかな、と思います。
山田 まず、TARO MONEYをつくるのに
全部でいくらかかりましたか?
菅野 えええっと。

長坂 くわしい内訳にある、TARO MONEY硬貨制作費、
パッケージ制作費、封筒代、
これを全部足せばいいんですよ。
山田 カチャカチャ(電卓を打つ)
1072万9150円かかってますね。
純粋に、制作だけで、この額です。
で、TARO MONEYはいくら売れました?
長坂 4204万5715円ですね。
山田 そこから1072万9150円をマイナスして
さらに税金を引くと
1814万7949円。
菅野 これは何をやってるんですか?
長坂 売れた額から
制作にかかった額と税金を引いたわけです。
山田 1814万7949円、
寄付はこれでいいんじゃないでしょうか。
菅野 売れた金額から
制作費と税金を引いたお金‥‥むむ、
なんだか納得するかんじがする!

長坂 でも、売れていない分の原価は、ふつう
在庫にのっけますよ。
TARO MONEYは、これからも
売りつづける予定ですから、
それは在庫として、原価からはずさなきゃいけない。
山田 プロジェクトがつづくとしても、
ここは会計上完結させて、
将来売れそうな分を除外して
それ以外の売れ残りそうな分の原価は寄付から引く、
という計算を
少なくともしておいたほうがいいんじゃないかな。
菅野 うーん。TARO MONEYの2000円は
「手にしたTARO MONEYの原価」「寄付」「税金」
に分かれるのであって、
「ほぼ日」の動きを軸にするのは、
寄付してくださった方からすると
ちょっとわかりにくいです。
それに「最後に売れ残りそうな分」をいま
寄付の額から引くというのは考えられないですよ。
山田 ううーん、そうですか。
菅野 『明日の神話』は行き先が決まっていませんし、
TARO MONEY販売もつづけます。
ですから、TARO MONEYの在庫分を
いまはいったん「ほぼ日」が持つ、という形に‥‥
「持つ」という言い方はちがいますね?
長坂 そうですね、実際にはすぐには費用にならないので、
在庫として残る、ということになります。
菅野 そうそう、在庫として残る、ということにして、
一旦置いておきたいと思うのですがいかがですか。
山田 全部、ですか。

菅野 そうです。

一同 ‥‥‥‥。

山田 在庫を負うということは、
最終的には糸井事務所が損失を負う形になります。
ページ制作、コインのデザイン制作、
TARO MONEYチームの主要メンバー4人の
数か月の人件費を考えれば、すごい負担です。
さらに在庫を負担するというのは、
会社としてどうなんでしょう。

長坂 ‥‥でも、このプロジェクトは
性質がちがうような気もしますね。
菅野 まず、ひとつのたのしさとして、
岡本太郎という土俵で
糸井重里がいったいどういうことをするのか、
ということがあったと思うんです。
そこで、TARO MONEYという
アイデアの結集のようなものが生まれて
青山ブックセンターや
TSUTAYA TOKYO ROPPONGIをはじめとする
店舗のみなさんにご協力いただいたり
いろんな広がりを生みました。
在庫はこれからの動きにも必要なもので、
その原価が、すでに寄付したみなさんのところに
かかってしまうのは、どうでしょうか。
長坂 一般的な募金で、原材料費以外にも
組織を運営するための人件費などを
引くところはあります。
募金活動のみを行なう団体の場合、
継続的に活動していくために必要なことなんです。
菅野 しかし、今回はとにかく
「実(じつ)」が欲しかったんです。
山田 ‥‥なるほど。
ほんとうに『明日の神話』を修復保存する
「金」が欲しかったんですね。
長坂 そのためにできることをやる、という
会社をあげてのプランだったわけです。
山田 たしかに売れ残りがあるのは、ぼくらの責任なので、
それを買ってくださった人の気持ちに
乗っけるというのは
フェアじゃないですよね。
フェアにやるとすれば
売れ残ったものは、ぼくらが責任をもって売るように
努力すべきなんでしょう。
長坂 売れ残り、いや、在庫があるということは、
まだ数千人の寄付をお待ちしている、
と言えるんですから
判断を間違えたということではないですよ。
山田 わかりました。
「お客さまの手もとに届いたものの原価」
「税金」
このふたつを引く、という方針でいきましょう。
長坂 でも‥‥このやり方をすべての団体が真似すると
たいへんなことになっちゃいますね。

菅野 こんなふうに寄付をするというのは
無茶な話なんでしょうか?
長坂 広告を出したりして、スポンサーから寄付を集める、
というやり方もありますが。
山田 企業の文化事業など、メセナ系のものは、
「出資だけをして財団をつくり、そこでまわす」
というやり方をします。
そこに近いと言えば近いですよ。
うちは分離させていないから
「在庫どうする」「人件費どうする」
という話になっちゃうんだと思うんです。
会社の事業として寄付活動を行なうのは
ちょっと限界があります。
菅野 寄付、むずかしい。勉強になりました。
長坂 もともと「会社がやる」ということとの相性が
とても悪いんです。
会社はどうしても
利益を出すことを前提に置いているので、
税金のかかり方も
利益が出たんだったら
その利益の何割かを税金として納めましょう、
という手順になります。
寄付したいところに直接お金を入れるのが
いいんでしょうけど、
それじゃ個対個になっちゃうから。
山田 そこが今回の肝ですね。
寄付したい団体に直接お金を入れれば
そのまま渡るんです。
けれども、1990万円という金額は
普通の募金活動では到底集まらなかった。
TARO MONEYだと、それが集まった。
長坂 コインになることで
目に見える喜びがありましたし、
壁画の思い出にも、
また観にいこうという気持ちにも
つながりましたよ。
山田 「寄付をするために何をするか」については、
胸に羽をつけるとか、100km走るとか、
これまでいろんなことが考えられてきたんです。
「お金を集めるためにお金をつくる」というのは
ある意味いちばん寄付を楽しむ行為じゃないかな。
お金とお金の交換なんですから。
まあ、つくるのにお金がかかるから無意味じゃないか、
と言われるかもしれませんけど。
長坂 何百万単位で原価がかかっていますものね。
山田 そういう発想でいくと、
「糸井さんの持ち物をチャリティーで
 売ればいいじゃん」とか、
そういう意見も出てくるんです。
でも、今回はそうしなかった。
税金のことも原価がかかることもわかったうえで、
また、2000円と高額なのに、
2万セット以上が売れました。
これだけの人が賛同してくれるお祭りにするのは、
ほんとうはむずかしいことだったでしょう。
TARO MONEYはお金の姿をしていることによって
「募金ってなんぞや」という問いを
投げつけましたね。
長坂 コインが4つくっついてるのも、人に配るのも、
名前を登録できるのも、みんな新しくて
意味があったと思います。
菅野 TARO MONEYを寄付の媒体にしたおかげで
広がりも意味もどんどん勝手について
転がっていくのがわかります。
このコンテンツは、不思議な感覚が
ずっとあるんですよ。
‥‥ところで、山田さん。
結局チラシ類やらPOP類やらも
費用にのっけてないけど、いいですか?
山田 はー、いいと思います。
売れた分のTARO MONEYにかかった
原価を純粋に引く、という考え方にもとづくと、
チラシやらポスターなどのお金も
除外すべきでしょうね。
菅野 まるまる持ち出しになりますが‥‥。
山田 もう決めましたから!
今回はこういう考えでいきたいと思います。

菅野 これからも絵は動くので、
もっともっとTARO MONEY、
みなさんにお買上げいただきたいと思ってます。
山田 がんばりましょう。



『明日の神話』再生プロジェクトの平野さんも、
岡本敏子さんも、
みんな岡本太郎できちんと儲けることになればいい、と
おっしゃっていましたし、
企業として健全な活動をつづけることや
ガイドラインになるような規範を示すなら
とるべき道は別にあるかもしれません。
しかし、TARO MONEYは
この話し合いを経て出た方針で結論を出そうと思います。
8月31日までの寄付は1990万8280円。
みなさまご存知のとおり、これまで
450万円を『明日の神話』を運ぶ木箱と絵筆の一部
400万円を照明器具と顕微鏡
に寄付していますので、
あと1140万8280円を寄付できることになります。
さっそく再生プロジェクトに
お渡ししに行きますね。
『明日の神話』まだまだ動きます。
TARO MONEYも販売中です。
では、また次回に。

2006-09-25-MON

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