黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第27回 好きかもしれない。
糸井 しかし、こういうふうに名所を旅して、
由緒ある古いホテルなんかに泊まって、
そんで、相変わらず、
くだらない話を延々としている
っていうのはどうなんだろうね。
南 ははははは。
ぜいたくっていうか、
もったいないっていうか。
糸井 もったいない気はするね。
ま、たのしいからいいんだけど。
なんていうか、高級料亭で、
卵かけご飯食べて帰ってくるみたいな。
そりゃそれで、うまいんだ。
南 そうそう、うまいんだ(笑)。
糸井 規模もレベルも違うけどさ、
そういうことをやってたのが
魯山人なんだよ。
南 ああ、魯山人。
糸井 要するに、
「うまいだろ、こういうのが?」っていう、
本音みたいなところを
打ち出していく人なんだよ。
南 うーん、そうか。
糸井 ん? 魯山人は、あんまり?
南 魯山人はね、ちょっと複雑なんだけどね、
オレは誰かから悪口を先に聞いちゃってさ、
しかも、ふつうだとオレは、
そういう悪口を聞くと逆にいいところを
見つけようとしたりするんだけど、
なんか、それを聞いて、わりと素直に
「へぇ、そうなんだ」って思っちゃったんだよ。
糸井 ああ、なるほど。
南 それで、しばらくのあいだは、
魯山人はオレには関係ねぇや
って思ってたんだけど。
なんか、京都かなんかで
ひょいと時間が空いちゃったときにね、
デパートで魯山人の焼物の展覧会があって
それを見たんですよ。
糸井 うん。
南 するとね、たまに、いいのがあるんだよ。
糸井 たまに、っていうか、けっこうありますよね。
南 まぁ、でも、関係ねぇやと思ってるからね、
「これは、まぁ、いいんじゃないの?」
というくらいのことを、
ちょっとしか言わないわけよ、オレも。
糸井 ちょっとしかね。
南 うん。ぜんぶいいとは言わない。
「これはいいんじゃないか」とか
「ここはいいなぁ」という感じでね。
糸井 うん、うん。
南 まぁ、そんな感じで
ほかにも見る機会があって、そのたびに
「ここはいいんじゃない?」
って言ってるうちに、なんだか、
けっこういいじゃないかと(笑)。
糸井 どんどん好きになって(笑)。
南 そう。なんかね。
まだ、ぜんぶを好きなわけじゃないんだけど。
糸井 それって、女性を好きになるのと
おんなじパターンですよね。
南 はははは。あー、そうなのかな。
糸井 「あんまりオレは‥‥」とか言ってるんだけど、
「ここは、ちょっと」とか、言ってるうちに
なんだか好きになっちゃってるんだ。
というより、最初から、
ほんとは好きだったのかもしれない。
これはオレの持論なんだけどね、
嫌いの中には好きが混ざってるもんなんだよ。
南 ああ(笑)。
糸井 だから、「イヤなんだよなぁ」とか、
「嫌いなんだよね」とか言いつつ、
どうも、それから目を離せないような場合は、
もともとのところを疑ったほうがいい。
南 「好きかもしれない」。
糸井 「好きかもしれない」。
十代のころの、男子と女子の関係なんて、
つねにそれの連続だからさ。
南 そうだね。とくに男はね。
糸井 うん。男は大人になってもそれがある。
だから、奥さんとかには、そういう
「好きかもしれない」みたいなことは、
だいたいバレてると思ったほうがいいね。
南 いえてるねー(笑)。
(‥‥‥‥つづきます)

2009-10-30-FRI

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