ほぼ日手帳成功物語。
ある意味で世界一の手帳をつくるバカたち。

 

第三回
darling長い人生の知恵炸裂の巻〜その1


ほぼにちわ。あややです。

「ほぼ日手帳に載せる日常のマナーを教えてください!」
という緊急アンケートに
たくさんのメールをいただきまして
ほんとうにありがとうございました。
“タクシーの席順”や“名刺の受け渡し方”のほかにも
“あいさつをするときの目線の位置”とか、
“入る部屋ごとのノックの回数”とか、
もうわたくし(あやや)の知らないことだらけでした。
教えていただきましたマナーを
すべて載せることは難しいと思いますが、
みなさんの意見を参考にして
これから内容を考えていきます。
詳しい内容はほぼ日手帳ができてからの
お楽しみとさせて下さい。

さてさて、本日は「ほぼ日手帳成功物語」第三回目です。
手帳を作るために
ほぼ日ストア西田店長が調査を開始したのもつかの間、
早くも、コストの問題やら製作時間の問題やら
数々の問題が勃発して、
スタートしたばかりの「ほぼ日」手帳の雲行きが
にわかに怪しくなったそのとき、
何やら考えごとをしているように、
ずっと黙って西田店長の報告を聞いていたdarlingが
突然、大きな声で叫びました。
「そうだっ! これで問題解決できる!」
ええっ!?
いったい、どういうことですか!?!?
(・・・・っていうところからの「つづき」です。)


●カバーに袋をつける!

darlingの大胆宣言のあとも、
鼠穴3Fは相変わらず沈黙が流れ、
金魚の水槽のポコッポコッポコポコポコ・・・・・
という水音だけが部屋中に響いています。
そんな沈黙の中、darlingがまたもや大胆宣言です。

「袋はやめよう!」

ええ〜〜っ!?
ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、
“袋なし”になっちゃうんですか?

「ビニール袋はコストが高くて
 現実問題として手帳に入れるのは難しい。
 だったらさー、何も袋をつけなくったって
 いいんじゃない?」

で、でも・・・そもそも、
どんなものでもザブザブ入る“たるみ手帳”が欲しい!
というところから今回の手帳の話ははじまって
そこから“袋をつけよう”ということになったんですよ!

「だったらカバーが袋になったらいいんじゃない!
 そもそも何で袋をつけようと思ったのかを
 もう一度考えてみなよ」

ええっと、それはですねえ、
バンドエイド1枚とか、はんことか、切手とか、
困ったときの500円玉とか、常備薬とか
そういうものを入れる場所が
手帳にあったらいいなあって思ったからです。

「だったらそういうものが全部まとめて
 入るような1個の“ポケット”を
 手帳のカバーにつければいいじゃない。
 要は入れたい物が入ればいいんだからさ!」
 
そうか!
それまでは入れるものの大きさに合わせて
袋の大きさを変えるとか、
袋の形状や材質ばかりにとらわれていたけれど、
本来の用途に立ち戻ってみれば、
何もそのことにこだわる必要はないんです。
1個の大きなポケットをつければ
その中に好きなものが何でも入ります。

darlingの話はさらに続きます。
(その勢いはまるで企業のクライアントを相手にした
 “糸井重里”のようです。
 もうほぼ日スタッフはただ圧倒されて
 ついて行くのが精一杯でした)

「ほぼ日フレンチパーカーで
 後ろにポケットをつけたのはよかったよ。
 最初、「背中に大きいポケットをつけよう」
 って言ったら
 みんなは『ええー!?』って言ってたんだよ。
 でも、実際にポケットをつけてみて
 出来上がったものを着てみたら
 やっぱり(ポケットがあって)よかったじゃないか」

たしかに!
フレンチパーカーは
あの背中についているハガキサイズのポケットが
チャームポイントになって、
そこがまた「ほぼ日」っぽくてよかったんですよね。
さらにdarling、

「あっ、いま思いついたんだけど、
 今回の手帳のカバーにつけるポケットの形は、
 ジーパンの後ろのポケットにしたらどうだろう!」

この“何でも入るジーパンのポケット”
という響きを耳にして、
“ポケット好き”の私たちが乗らないわけがありません!!
この一言で、それまで嫌な沈黙が流れていた
鼠穴3Fの雰囲気が一変しました。
これで金魚の水槽の水音ももう耳に入りません。


●どんな素材でカバーは作る?

話はカバーの素材に移りました。
すっかりいつもの元気を取り戻した鼠穴は
また例のように、
みんな好き放題に発言しはじめました。
「やっぱり、ありがちなのはつまらないじゃん。
 もうここは思い切って光る素材くらいなつもりで・・・」
「私が好きな素材はコーデュロイかなあ」
そんなやりとりにわたくし(あやや)まで
ついつい乗ってしまいます。
「読者のみなさんに編んでもらうっていうのは
 どうでしょう。
 そしてそれをコンテストにしちゃうとか!」
またまたいつものように、
この脱線しまくりの列車にブレーキをかけたのは
darlingでした。

「いや、よくある素材でも、いいものは、いいよ」

と言って、ふだんから愛用している
ナイロン素材のバッグを取り出してきました。

「このバッグ、軽いし、じょうぶだし、
 何より乱暴に扱っても全然平気なんだよー。
 洗濯機で洗えるんだもん。
 俺なんかこれ何回も洗ってるのにほとんど変わらないよ。
 これとおんなじ素材で
 手帳のカバーを作るのはどうかなあ」

darlingがこのバッグを
持ち歩いているのをよく目にしていますが、
放り投げたり、けっこう無茶な扱いをしているのに、
全然ヨレヨレしてないし、
何よりも素材そのものがかっこいいんですよね。
触った感触はなめらかで、にぶい光沢があって
シワにならないんです。

手帳というと、革製が定番です。
でも一般的に売っている革製の手帳って
やたらと重厚すぎてどこか貫録負けしちゃう、
というイメージがあるんだけど、
ナイロン素材だったら、
色が渋くてもカジュアルに見えるし、
ちょっと持ち歩きたいときに
ポケットに入れたり乱暴に扱っても
全然平気というのはたしかにすごく魅力的です。
それにdarling曰く、

「この素材の手帳だったら、
 洋服屋さんやインテリアの雑貨屋さんに置いてあっても
 違和感がないよね」

そう考えてみると、ここであがった

「ナイロン素材で、
 大きなポケットがついている手帳カバー」

というのは、
いわば“見た目”と“機能性”の両方を兼ね備えていて、
私たちが追求したいものを満たしてくれます。

これで完全ではないけれど、
手帳の外側の8割方完成です。
鼠穴全体もすっかりその気になって
「できたっ、できたっ」
とみんな喜びムード一色でした。
西田店長もいつものように、突然立ち上がり、
「よしっ、じゃあ見本作るよ!
 いまから見積もり出してもらうからっ」
ちょ、ちょ、ちょっとお待ちください。
見本を作るって言っても
大きさを決めないと見本も作れないじゃないですか!!


●文庫本のサイズにしよう

うーん、この会議はどうやら長丁場になりそうです。
ちょうど夕食時だったので、
出前のサンドイッチでもつまみながら、
もうちょっとみんなで、手帳のサイズについて
じっくり話し合おうということになりました。
でも、手帳のサイズと言っても、
ほんとにそれぞれ全く違います。
シェフ武井の手帳は大きめのA5版だったり、
通天閣あかりの手帳は正方形だったり、
それで、それぞれがその形が一番使いやすいと
信じているようなのです。
手帳のサイズと一言で言っても、
そう簡単に決まりそうにないな、
逆にこれがいいという決め手がないのかな・・・
そういう空気が流れ始めたそのとき、
またもやdarlingの発言です。
んもう、ほんとに、たのもしい!!

「あのさ、俺はこういう物を使っているんだけど・・・」

と1冊の手帳らしきものを取り出してきました。

「これ、昔から使っているメモ帳なんだけど、
 ちょっとそば食いに行ったり、
 そこらへん散歩に行ったりするとき、
 急に何か思いついたことを
 ただメモしておきたいときに使ってるの。
 サイズ的にジーパンの後ろのポケットに入るし、
 どこへでも持って行けてすっごく便利なんだよ」
サイズをよく見ると、文庫本くらいの大きさです。

文庫本!!!

文庫本のサイズってよくよく考えてみると、
ちょうど手頃な大きさになっているのかもしれません。
だって、手で持ってもかさばらないし、
ポケットにも入るんだもん。
「ほぼ日手帳」も、
素材は丈夫なものを選んでいるし、
どこへでも持ち歩けるようなカジュアルなものを、
と考えているから、文庫本のサイズだったら
大きさ的にも手軽でちょうどいい。
だったら、文庫本のサイズにしよう!

これで、素材も大きさも決まりましたっ。
今度こそ、「できたっ、できたっ」
という空気が鼠穴を覆います。
と、そのときシェフ武井の一言が響きます。

「ところで、外側はそれでいいんだと思うんだけど、
 中身の印刷の問題とかもあったよね?
 それはだいじょうぶなの?」

あわあわあわあわわっ
そうでした〜〜っ!!
そうだ、手帳の中身を印刷するということにも
問題があったんだ!!
わーん、喜びもつかの間、
またまた鼠穴の3Fは、
金魚の水音だけが響くのでありました・・・

(つづく)

2001-08-09-THU
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