第十五回 「けっこう手作り」の恍惚と不安!?
ほぼにちわ。あややです。
「ほぼ日手帳」第一次予約注文期間が、
いよいよ今週末、26日までとなりました。
この時期にご注文してくださった方には、
11月10日前後にお届けできますので、
悩んでいるみなさま、なるべくそれまでに
ご注文してくださいね。
「ほぼ日手帳」と「ほぼ日メモ帳」の製本も
着々と進んでいます。
印刷・製本を一手に引き受けてくださっている
印刷屋さんの「阿部シャチョー」(独身)さんは、
とっても仕事熱心な下町の兄貴肌なお人。
そんな阿部さんが、明るいビルに突然やってきました。
何やら緊急のご相談とのことです。
「あのう・・実は、折り入ってご相談が・・・」
うっ・・・
やめて、阿部さん、何も言わないで!!
ようやく入稿まできて予約注文も順調だというのに
ここまできてこれ以上何があるというの!?
いやんいやん、暗い話は聞きとうないっ!
でも聞きます、大事なことなんだろうから。
●手でなきゃできないことばっかり。
阿部さんの“ご相談”とは、2つありました。
まず1つめの“ご相談”とは、
「手帳の開きをよくするために
手間もお金もかかる“糸かがり”製本したけれど、
背の部分に糸かがりの糸の跡が見えてしまう」
ということでした。
実際に、阿部さんが持ってきてくれた
「ほぼ日手帳」のサンプルを見てみると、
たしかに、背の部分にタテに筋が入ってるように見えます。
これまでの機能的な手帳も、“糸かがり製本”が多い。
でも、跡が見えない理由は、
ビニールや皮革などのカバーがかかっているからです。
もちろん、「ほぼ日手帳」も、カバーをかけて使うのですが
裸でもカッコイイっていうか、
カバーかけない状態でもデザインのいいものを、
という気持ちでつくっています。
だけど・・・・。
“糸かがりの跡”と、阿部さんに言われなかったら、
気がつかなかったんです。
そういえば、見方によっては、見える。
しかーし、阿部さんは、「プライドの人」でした。
↑ちょっとわかりにくいけど、
ヨコにちょっぴり筋が入ってるんです
(光をあてて、それを強調するように写真を
とってみました)
冷静に、しかも汗をかきながら説明を開始しました。
「これが気になる、という場合はですね、
背の部分に薄い紙を1枚噛ませればいいわけです。
そうすると、タテ筋はなくなります。
でも・・・・・」
出た、「でも・・・」だ!
つまり、「そうしないほうがいいですよ」ってことを、
きっとこれから言い始めるんだ!
「でも・・・
紙を噛むと、180度ペロンと開く、
その開きが鈍くなりますよ」
やっぱり〜〜!?
それは困ります!!
だって、手帳だからこそ、
電話を片手にスケジュールを書き込んだりするときにも
書き込みやすいようにと、
敢えてコストも時間もかかる“糸かがり”製本を
選らんだんですもの〜〜。
でも、とりあえず、まずは、
その「背に1枚紙をはさむ」パターンのサンプルを
作ってきてもらって、
それを見てから決めることにしました。
それから数日後。
阿部さんが、背に薄い紙を噛ませた手帳のサンプルを
持ってきてくれました。
↑通常の糸かがり製本
↓背に薄い紙を噛ませた場合
どうですか?
微妙に違うのわかってくれますか?
写真からは伝わりにくいかもしれませんが、
この“微妙な違い”が実は大きいんです。
この2冊を一緒に見比べていた
「ほぼ日スタッフ」も全員一致で
「背のところに多少筋が見えても、
180度ペロンと開く方がいい!!」
という意見でした。
そして、もちろんdarlingも同意見のようです。
「“筋”って言ったって、実際見たら、
そんなに気にならないじゃん。
カバーなしの裸のデザインのほうを、
ちゃんとやったからこそ、気になるんだな。
それに、手帳は何てったって開きがいいのが
いいにきまってるよ。
この筋ってヤツは、言ってみれば
“うぶ毛”とか“おくれ毛”のようなものだろ!?
あることが気になる人には気になるかもしれないけど、
こういうの否定しちゃイケナイよ。
なんでもつるつるにならないのが手づくりだもん。
だから、これはそのままでいいっ!」
たしかに。
腕や背中の細かい毛って、
人間にはあるけれど、ロボットにはなさそう。
「おくれ毛なんて、色っぽいものの代表だぜー」
うれしそうにdarlingは、しゃべり続けています。
「だいたいさ、このごろは、あちこちの毛を、
とーにかく剃るじゃない。あれってさー・・・」
止まりません。
なんか、毛のことをミーティングしてるみたいになって。
説得力があるのかないのかよくわからないけど、
わたくし(あやや)は、妙に納得したぞ!
だって、背に紙を入れてない方のサンプルを
実際に開いてみると、その開きのいいこと!
その開き方といったら、快感よ。
そうだ、もうこの際、わたくし(あやや)、
みなさんにはっきり宣言しちゃいます。
“うぶ毛”は許してください!
●空気も許してください!!
さらに阿部さんの“ご相談”はつづきます。
2つめの“ご相談”は・・・
「ほぼ日手帳の表紙に貼るシールは
1冊1冊全部“手”で貼っていくので
シールの幅が広いと空気の泡が入ってしまう」
ということでした。
これちょっとわかりにくいと思うんですが、
「ほぼ日手帳」は、片手で電話を持ちながらでも
スケジュールを書き込めたりするように、
180度ペロンと開くように、
“糸かがり”製本を取り入れていますが、
その“糸かがり”にするためには、
しかし、通常だと、クロスというものを貼るのです。
今回は、デザイン的に、
光沢のある“ペット加工”を施しているのです。
ペット加工にする場合、
クロスではなく、シールでないと、
どうしても光沢の“おしゃれな感じ”が出ないんです。
この“ペット加工”は、
「ほぼ日手帳」のデザイン上、とても重要な要素。
デザイナーのアッキイさんの
たってのご希望でもあったのです。
そんなわけで、今回の「ほぼ日手帳」は
クロスではなく、シールを使用しています。
クロスならば、自動でドンドン勝手に貼ってくれる
専用の“クロス貼り機”があるのですが、
“シール”を貼るための自動の機械というものは
残念ながら、ないんだそうです。
というわけで、これまた手作りになるんです。
職人さんが
「曲がらないように、よれないように」
と細心の注意を配りながら
1冊ずつ丁寧に“手で”貼っていくんです。
これ、想像するだけでも、
気が遠くなるような作業ですよね〜。
だって、何千冊もの「ほぼ日手帳」に
1冊ずつシールを曲がらないように、
手で貼っていくんですよ!?
手で貼っていく分、シールの幅が広ければ広いほど
空気が入りやすくなってしまうんです。
そういう理由から、阿部さんは
「表面はデザインがされているので無理だと思いますが、
せめて裏側の折り返し分だけ
シールの幅を狭くしてもらうことって
できないですかね?」
という提案をしてきました。
でも、このシールの幅も、アッキイさんが
表面と同じ長さになるのが
かっこいいということでデザインされているんです。
実際に短くしたものを見せてもらいましたが、
やっぱりデザイン的なバランスがあまりよくないんです。
この問題、正直悩みました。
バランスを悪くしてでも空気の泡が入らない方がいいのか、
やはり、デザイン上のバランスを優先させるべきか。
ここで、わたしたちは、もう一度
阿部さんが持ってきてくれた手帳のサンプルを
見てみることにしました。
すると、今回持ってきてくださったサンプルを見るかぎり、
“空気”が入っているものは、
1つも見当たらなかったのです。
これを見て、私たちは、シールの幅をそのままで
デザインのバランスを優先することに決めました。
もちろん、阿部さんには
「1つ1つ手作業で、大変だと思いますが、
空気が入らないように気をつけてください!!」
と大・大・大お願いしています。
阿部さんも、
「サンプル以上に、本物の商品は、
細心の注意を払って丁寧に作ります!」
と頼もしく宣言してくださいました。
それでも、人の“手”で行う作業です。
中にはちょこっとだけシールの部分に
空気の泡が入ってしまうものも
あるかもしれません。
そんな場合も、みなさまにおねがいです。
空気のことは
大目にみてやってください!
(ホトンドない、とは思うのですが、
真剣にそれを探すのを目的にしたら、
あることもある可能性があるんです。
よね?阿部さん)
「これはこれで、不良品だ、と言われたら、
考えなきゃならない問題なんでね」
阿部さんは、カバーの部分でなく、
手帳本体のほうの印刷や製本が仕事なので、
「これだけで完全だ」と言いきりたいみたいです。
「阿部ちゃん、カバーをかけるのが前提なんだよ。
セットで手帳っていう商品だから、
気にしすぎるとつくれなくなるよ。
だって、オレ、気がつかなかったくらいだもん」
とdarlingは言うのですが、
阿部さんは、
「わかってるんですけどね、手でやることって、
手じゃなきゃできないだろう、っていう自慢なところと、
手だからこいうことはカンベンしてくださいっていう、
お客さんによっては気にするだろうって心配と、
両方あるんですよ。
だから、いちおう、きちんと言っておこうと思いまして」
「手作りであることの恍惚と不安、だね。
わはははは」
darlingは、妙にゴキゲンでした。
カッコイイです、阿部さん。汗かいてるけど。
そういえば、あややは、
「ほぼ日手帳」が、こんなに手作りだなんてこと、
いままで忘れていました。
●「ほぼ日手帳」の“手作り”なところ
そもそも今回の「ほぼ日手帳」は、
“手作り”って言ってもいいくらいの手帳だったんです。
ここまでお話ししてきた手帳のシールの手貼りだけでなく、
このほかにも、「ほぼ“手作り”じゃん!」
って言えるようなところが、節々にあるんです。
たとえば、
・“糸かがり”の糸を縫うときは、
手縫いではないけれど、
ミシンでお裁縫するように
1冊ずつ縫っていく。 |
・刷り色になる、インクは、職人さんが
いろんな色を混ぜ合わせて、
指定の色を1色ずつ調合して作っていく。
:今回の「ほぼ日手帳」は
月ごとに色が変わって、
それにプラスして、
おまけページもあるので
全部で13色の色を
職人さんが作ってくれたんです。
とくに、
今回「ほぼ日手帳」で使用されたインクは
どれも3色、4色以上を混ぜ合わせないと
出来あがらない色ばかりだったとか・・・。
わたくしたち、そんなご苦労はつゆ知らず、
色校正の度に、
「もうちょっと明るく!」とか、
言いたい放題だったわ。ごめんなさい!!
いやいや、でも言うのが仕事ですもん。 |
・表紙や、シールを貼り終わって、
最後に規定の大きさに裁断するときも
通常だと、まとめて裁断するところを
シールであるため、まとめて裁断すると
背の部分が圧縮されて
しわができてしまうので、
1冊ずつ裁断していく。 |
もちろん、外側だけでなく、
中身はご存知のようにぜーんぶ“手作り”なんです!
その“手作り”なところをいいなあと思ってくれたり、
楽しんでくれたりするとうれしいです!!
まだお悩み中というみなさま、
また、「ほぼ日手帳」に興味を持ってくださった方、
まだ間に合います!
ぜひとも、こちらのページを
じーっくり読んでみてください。
「ほぼ日手帳」をもっと欲しくなっちゃいますよ!!
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