ほぼ日 |
この「インストバンド」という曲で
プロモーションビデオをつくることは
最初から決まっていたんですか? |
星野 |
いえ、タムくんにお願いした時点では、
まだはっきりとは、決まってなかったんです。
どの曲でつくってもらうか迷っている状態で。
で、まあ、とりあえず、
タムくんにビデオのことをお願いしたときに
それまでにできていた曲を
現場で聴いてもらったんですけど、
最初に「インストバンド」を聴いてもらったら、
その時点で「なんとなくできた」って
タムくんが言ったんですよ。 |
ほぼ日 |
え? いきなり? |
星野 |
そうなんです(笑)。
ほかにも何曲か聴いてもらったんですが、
「これは難しい」とか、
「この曲はよくわからない」とかいう反応で(笑)。
けっきょく「やっぱりさっきの曲がいいな」
とタムくんが言ってくれて、
「インストバンド」で
お願いすることに決めちゃったんです。
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ほぼ日 |
じゃあ、もう、頼んだその場で。 |
星野 |
はい。その場で独断で決めちゃいました。
とにかくそれを自分で
「見たい!」と思ったので。 |
ほぼ日 |
ということは、
「曲の宣伝のためにプロモーションビデオを」
ということではなくて、
本当にコラボレーションとしての
お仕事だったわけですね。 |
星野 |
そうですね。
でもそれはバンドの為の決断というよりは、
単に自分が作曲した曲に
アニメーションを付けて欲しかったんです(笑)。
ただ、実質的には、ものすごく
プロモーションになっているんですよね。
おかげさまで評判もよくて、
こうしていろんなところで
紹介していただいているので。
だから、いいものができると、
それ自体がプロモーションになるというか、
当然のことかもしれませんけど、
いいものができると、あれこれ悩まなくても
人がすごく自然に動くんだなぁ、と思いましたね。 |
ほぼ日 |
理想的な広がりかたですよね。
ビデオの内容についてうかがいますが、
制作はどういう感じで進められたのですか。 |
星野 |
まず最初に、タムくんが
全体のプロットを書いてくれたんです。
その時、いただいたプロットでは、
男の子がかわいい女の子に恋をして、
そこにかっこいい男の子が現れて‥‥
という今と同じストーリだったんですが、
結末がいまとは少し違っていて、
主人公の男の子が女の子の
靴ひもを結ぼうとして転んじゃって
男の子の身体が汚れて、彼女が笑う。
それで男の子がすごく喜ぶという、
幸せな雰囲気で終わるという感じだったんです。
それで、もう少し「毒」のある感じで、
というふうにぼくからお願いしました。 |
ほぼ日 |
「毒」のある感じ。 |
星野 |
プロットを読むだけでは
「いい話」で終わってしまう感じだったんですね。
絵柄もまだない、文字だけの状態では。
完成したいまのプロモーションビデオも、
内容を言葉だけで伝えると
すごくつまらないものになるじゃないですか。 |
ほぼ日 |
そうですね。
言葉だけで伝えるのは確かに難しいかも。 |
星野 |
そうなんですよ。
だから、プロットを文字だけで読むと、
なんだかちょっと物足らない気がして、
「もうちょっと毒をお願いします」
っていうメールを出して。
でも、その直後に発売された
『タムくんとイープン』を読んだら
もう、タムくんの描く世界がすばらしくて、
余計なリクエストはしないほうがいいと思って
「すみません、取り消してください!」
ってお願いしたんですけれど(笑)。
けっきょく、タムくんからは、
そういうぼくの意見も含めて、
「わかっているから大丈夫」
というお返事をもらって‥‥。
『タムくんとイープン』 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
星野 |
それで、あがってきたものを見たら
もう、そういう次元のものではなかった。 |