諏訪 |
オーガニックブームといわれて
有機野菜がからだに良くて
ありがたくて、かつ、旨いんだ。
という流れがありますが
永田農法では
有機肥料を使っているわけじゃない。
自分でもそれまで有機肥料で
育てていましたから
永田農法に切り替えることで
「有機農法って何なのか?」ということを
考えるきっかけになりました。
有機農法を「あれは国策だ」
という農学者もいますし、
有機野菜の何かうまいのかも立証されてませんし。 |
糸井 |
これまでにうまく行ったケースは
有機農法でも成分が薄いんでしょうね。
だからといって多くあげすぎちゃうと
腐っちゃうから難しいのはそこなんでしょう。 |
諏訪 |
農業の始まりの時点では
有機農法しかないわけですよね。
科学技術が無いから家畜の糞を肥料にするしかない。
そのころは量も少ないから有機肥料で
良かったんですが。
有機肥料にしても化学肥料にしても
問題は科学か自然かという質ではなくて
量の問題ですね。
永田農法は量が少ないですし、
有機肥料にしても量を
少なめにやってればいいんですが
どうもオーガニックブームの中では
「有機肥料は大量にあげた方がいい」
というムードがあります。 |
糸井 |
それで食いすぎにしちゃってるんだ。 |
諏訪 |
ええ。
でもぼくらが薬を飲むときに
西洋医学から生まれた抗生物質は
あまり大量に飲むと身体に悪いけど
漢方薬だったら多少、多く飲んでもいいんだ。
みたいなイメージがあるじゃないですか。 |
糸井 |
それは確かにある。 |
諏訪 |
農業や家庭菜園なんかをやる人には、
間違いなく、あって。
僕自身もそう思っていましたから。 |
糸井 |
それこそウンコまみれで。 |
諏訪 |
牧場で「牛糞堆肥100円」と出ていると、
昨日やったばかりなのに、
また買ってきて。(笑)
「土よりも牛糞を多くしたほうがいいかも」
から
「牛糞の中で野菜を育てたら、
さぞかし、うまい野菜が
できるんだろう」
と思うんですよ。(笑)
今では笑い話だけど当時、
「有機農法で育てよう」とか
「家庭菜園オーガニックで楽しむ」
みたいな本には
肥料のやりすぎについては書いてないし。
じつは、それが最大の間違いだったというのは、
この仕事をして科学的にもよくわかった。 |
糸井 |
一度は間違ったんだ(笑)。 |
諏訪 |
そうなんです。
有機肥料が多すぎると窒素分が
多くなってシュウ酸が生まれます。
それは「えぐ味」になる。
それは毒味でもあるわけです。
「ほうれんそうのアクを抜く」とか
「切ったナスが褐色になる」のも
肥料が多すぎることが原因です。
ピーマンの「えぐ味」もそうだなあ。 |
糸井 |
有機肥料は、
体にいい何かのアナロジーなんですよ。
まさに「漢方薬」ですよね。
漢方薬もじつは毒なんですよね。 |
諏訪 |
摂り過ぎたら毒なんです。
動物と植物の最大の違いは
有機肥料であっても化学肥料であっても
野菜が吸うものが同じ栄養素であるので
そこは全く意味がないんです。 |
糸井 |
しかも量が多いと
摂ろうとしなくても摂れちゃうから、
根が発達しないしね。
「発達させない」ということ自体が、
何か欠陥があるということですよね。 |
諏訪 |
本来は栄養を求めて発達していくわけですから
いつも周りに肥料がいっぱいある中で育って
根が発達していかないということは
彼らは生きようという力を
無くしてきてしまっている現れですから。 |
糸井 |
そこは知性がいりますよね。
肥料をセーブする力が知性です。
それが物知りと知恵者の違いですよ。
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