千体のお気楽な骸骨たち。 田中靖夫さんの手が産み出した天然。 |
第12回 留学のための語学の壁について ここ数回は、アート志望の高校生みたいなひとを 仮想の読者にしながらつづけている骸骨コーナーです。 日本での編集者生活を終えたあと、 ニューヨークの美術大学に移って 教師生活をはじめたときのことについて、 田中靖夫さんの奥さまの弘子さんに話をきいてます。 「大学のアドミニストレーターでもあったので、 そこで講義だけをやっている先生とは違って、 すごく拘束されたんです。 週2回学校行かなければいけなくて。 1年半くらい前にその学校をやめましたから、 とりあえずニューヨークとここを 自由に行き来できるようになりましたけど。 それまで、セメスター(学期)のあいだには もちろん日本には戻れなかったし、 帰っても、夏休みがせいぜい2週間でした。 教えるのも週1回3時間やってたから」 英語で教えてたんですか? 「いえ。 他の先生はすべてアメリカ人ですが、 私のクラスだけは日本語でした。 ジャパニーズアートスチューデンツプログラム、 ということで、要するに、アート系の学生は、 トフルの点を取るのが苦手なんですよ。 (トフルとは、母国語が英語以外のひと向けの試験。 通常、大学入学に550点または600点以上が望まれる) このプログラムは、絵や作品がおもしろければ、 トフルの点がなくても入れるというものでした。 これを1年やって、そのあとに 普通の2学年に進むプログラムなんですけど、 私は生徒や先生を選ぶのから広告づくり、教えるのまで、 これに関わるぜんぶをやっていたんですね」 日本人にとって留学上大きな問題は トフルをはじめとする語学試験ですよねー。 でも、語学がすごく苦手なひとにとって、 語学試験で要求される点数は、高い壁に見えると思う。 いま実際それで苦労しているひとも多いだろうし、 「だからあきらめてしまった」例もあるのでしょう。 それでももし外国大学への留学をしたいなら どうすればいいのか、と言うと、たぶんやはり、 留学を思いたったらもうなるべく早めから しかも本当に本気で語学の勉強をするのが、 わたし木村本人の留学経験から鑑みて 一番よい方法なんじゃないかなあ、とは思います。 自分に必要な事務手続きを、後回しにしないで、 すぐに調べたりするのも、かなり重要だと思う。 やるはずのことが見えて、火がつきはじめるから。 ぼくもそうですけど、火がついていないときは、 やったふりして実はだらだらとしていまして、 ほとんど勉強をやっていなかったようなものでした。 もし当時の「だらだら勉強」のぼくが目の前にいたら 「毎日自動的にできる勉強ばかりつづけていても、 たぶん意味ないんじゃないかな」 と、言ってあげたいくらいなのです。 直前になって執念みたいなのが出ると、 ずいぶん変わったし、意味を考えて語学をできはじめた。 スポーツ選手にとっての練習がそうであるように、 トレーニングとして意味ある語学の勉強でなければ、 きっとそこに費やす時間はむだになるのでしょう。 当時、本気でやりはじめてから、何度も何度も、 「あー! これ、もうちょっと前からやってれば」 とすごく痛く思っていました。 ぼく自身もやっぱり語学試験で苦しんで、 期間ぎりぎりで通ったというタイプでしたし・・・。 「留学しよっかなー、やめよかな」 そう思っていた時期にやってたことは、 当時のぼくにはかわいそうだけど、無意味だった。 ただ、例えば点数が足らなくても、 大学付属の語学学校に入って そのあとに正規なコースに編入する方法もあります。 これはすぐに現地に行けるといういい点もあれば、 結局何もしないで退廃的なムードなまま終わるかも、 という危険もはらんでいるのです。 田中弘子さんのかかわったのは、 こちらの、アメリカのなかでの、 トフルなしのほうのプログラムになります。 日本人のための留学プログラムの話に移るために、 今回は語学にまつわる初歩について、経験的に述べました。 (明日につづく) |
2000-03-20-MON
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