第29回 《 生成り週間 》 |
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“ブルーウィーク”
そうこたえる同級生がいて
ブルーが憂鬱を意味することを初めて知った。
〈ゴールデンウィークは 何色だったか〉
中学時代 連休明けの作文のお題。
どこにいくわけでもなく
いつもと同じ週末の
延長のような日々を過ごしていた。
特別なことなどなにも起こらない。
あたしのゴールデンウィークはまるで
母が染める前に湯通しをする
生成り色の生地のようだった。
ひさえさんに手渡された
小さな穴のあいたカーディガン。
はっとするほどきれいなブルー。
“ ひさえさんはイラストレーターだし
クリップでも入れてくれるだろう ”
と 小指も入らないような細長いポッケと
小さな花を いくつかの穴にとめつけた。
その時は最良のお直しに思えていたのだが
いまになって よくよく考えてみると
イラストレーターという職業が
クリップをそこまで必要とするかというと
そうでもないような気がしている。
ただブルーの世界をこわしたくなくて
ポッケはブルーの段染め糸で編み
花は邪魔にならないよう
白く小さなものを編んだ。
最高気温が20度を超えるこの季節
セクシーさのかけらもない
ブルーのラインが入った水着を干しながら
いつかCMで聞いたことのあるフレーズを
ついつい くりかえし口ずさむ。
『 ブルーでハッピーがいい 』と。