洗面所の窓は、元々あったものをそのまま使いました。
だから枠も、柱も古びた木の黒い色をしていて、
そこだけが和の感じを色濃く残していました。
その部分が、工事を進めるなかで
どんな風に見えてくるのか、
それがはっきりするまでは
どう処理するか判断しにくいな、と思っていました。
この連載でも、
「新しいところと古い部分が響き合ってくれれば」、
と書きましたが、
できれば残したいという気持ちもあって、
その響き合いが起きるかどうか、
を確かめたかったわけです。
しかし、和の古いものはそれ自体
強い印象を持っています。
白い大壁の空間を通って奥へ入っていくと、
そこだけ和の強い感じが、
容易には溶け合わないまま残っていました。
響き合う、というには、
ちょっと重い感じがあって
うまくいってないように思いました。
それで、洗面所の柱も窓枠も、
全て白く塗ることに決めました。
ちょっと時間が取れたので、ここは自分でやりました。
塗る、というのは、僕は大好きなので、
やりたくて仕方がなかったのです。
窓枠は、白く塗ったとたん、
それまでとはガラッと違う表情を見せてくれました。
どこか古い病院の窓のようにも見えます。
それまで重く感じていたそこの空気が、
これでずいぶん明るくなりました。
ペンキで白く塗る、ということは
思った以上に場の雰囲気を変える、と再確認しました。 |