「ほぼ日」で木工デザイナーの三谷龍二さんの
コンテンツがはじまったのは、
2010年9月のことでした。
最初にインタビューを、
その後、三谷さん自らが綴る
「10センチ日記」へと内容をかえ、
同年12月20日に工事が終わるまでを、
日記形式で追いました。
冒頭の引用にあるように、「10センチ」は、
最初からお店にしようとして
三谷さんが探した物件ではありません。
この古い建物をなんとかしてのこしたい、
活用したい、と思った三谷さんが
「まずは、借りる」ことからスタート、
ショップとして使うことを考えつき、
みずから改築を指揮して完成させたものです。
冬のうちに終わった工事ですが、
「10センチ」がある松本は、
この季節、人出がすっかり減ってしまうということで、
翌春、あらためてオープンの日をむかえます。
2011年3月11日、
偶然にもあの震災の日のことでした。
本書は、「ほぼ日」に連載された
その日記の部分を収載しつつ、
全体の3分の2は、
書き下ろし、撮り下ろしの写真で構成されています。
(つまり、かなりの部分が、新作となっています。)
第1章では、
「僕が『10センチ』をつくろうと思ったわけ」として、
三谷さんがこの場所をもちたいと考えた
20代の後半で移り住んだ松本という町のこと、
「10センチ」という店名の由来、
古い建物を直すという、リノベーションの愉しみなどが
くわしく語られます。
第2章は、「『10センチ』でできること」。
ここでは、オープニングの企画のこと、
オープン前夜から、オープン当日のこと、
それ以後に開催されてきた
いろいろな企画やイベントのことが綴られています。
そして第3章が、「ほぼ日」に連載の日記、
「『10センチ』ができるまで」です。
本書からは、木工デザイナーとして
ゆるがない人気をもつ三谷龍二さんが、
「道具のつくり手」としてだけでなく、
「みんなが集まる場所」をつくろうと、
ほこりまみれ、土まみれになって
奮闘している姿がうかびあがってきます。
もしかしたらご本人は、
1本のスプーンを彫るのも、
建物まるごと1棟のリノベーションを手がけるのも、
イベントや、企画を手がけるのも、
根本は同じだとおっしゃるのかもしれませんし、
「もともとそういう仕事なんだよ」
とにっこりと笑われるような気がしますけれど。
「ほぼ日」の連載の日記を読んで、
「10センチ」に、また、松本にじっさいに
足を運ばれたかたも多いと思いますが、
この本を読むと、そんなひとが
もっと出てくるような気がします。
あるいは別の目的で松本を訪れるかたがいたら、
その前にこの本を読んで、
ぜひ「10センチ」にも足を運んでいただきたいと思います。
最後に、「10センチ」の看板にもなっている
古い子ども用の自転車。
看板用だし、きっと動かないのだろうと思ったら、
「これ、ちゃんと乗れるんだよ」と、
三谷さんがじっさいに運転してくださった
そのときの動画を、おまけにどうぞ。
撮影は、(今回紹介した画像もふくめて)
写真家の有賀傑さんです。 |