屋根まで葺き替える予定はなかったのですが、
随分長い間放って置かれたので錆が出ていて、
このままだと雨漏りが心配だから、
葺き直した方がいいと言われました。
予算の関係もあって、直したいところだけ直す、
という気持ちで工事に向かったのですが、
古い家の改装はなかなか予定通りにはいかないものです。
それはちょうど痛いところがあって
歯医者に行ったようなもの。
痛い歯だけ治すつもりだったのに、
隣の歯にも虫歯が、それに歯石も取りましょう。
「この際ですから、悪いところはすべて
治しておきましょう」と先生に言われ、
「はい、そうして下さい」と答えている自分と、
何処か重なります。そんなわけで、
「全て直しておきましょう」と言われる通りに、
土台から屋根の葺き替えまで直すことになりました。
でも後々困るることは目に見えているのだから、
仕方ないですね。
10センチの屋根に登ってみたのは初めてでした。
屋根は不思議なかたちをしていて、
V字型になっていました。
後から店先の部分を付け足したので、
このようになったのだと思います。
屋根に落ちる雨水はすべて一番低いV字の谷に集まり、
その水が集まって四角い穴をくぐり、
雨樋(さすが陶器屋さん。樋も陶器製です)を伝って
地面に落ちる仕掛けになっているのです。
屋根の勾配もちょっと不思議で、
母屋と繋がるところは屋根が水平ではなく、
遠くに行く程少し持ち上がっているのです。
水勾配というのでしょうか、
雨がうまく集まるように持ち上がっているのでしょう。
だから逆に水平に設置するものにとっては、
具合が悪くなってくる。
例えば煙突と屋根との収まりなども、
うまくいくのか心配になってきます。
家はいろんなものが繋がってます。
一所を直すと、またその影響が他にででてくる。
だからひとつの場所を直したいと思った時、
それと繋がるところのことも
すべて考えの中に入れて置かなくてはなりません。
そうしたところが家づくりの難しさであり、
その分全てをクリアする回答を生み出した時、
謎解きができた探偵のように、
喜びにも変わるのでしょう。
屋根の葺き替えをした板金屋さんは、
それまでしてあった仕事を見て感心していました。
天窓のカバーや、竈後を始末した蓋周りに
小さな樋が付けられていて、
少しの雨水もうまく逃がす工夫がしてあるというのです。
天窓の処理も的確で、
そうした腕とセンスのある人だったろう、
と想像できます。 |