10センチの建物には元々、
隣に二階建ての建物が繋がって建っていました。
こちらはタイルや衛生陶器を販売するお店が有り、
そのショールームだったのです。
僕が最初にこちらを見せていただいた時には
まだ店の奥の方に便器が丸見えで据え付けられていて、
まるでデュシャンの「泉」みたいでした。
でもそんなはずはないし、
それにしても変なところに便器があるなと思ったら、
販売用の展示品だったのです。
通りに面した壁には「YAMAYA SHOW ROOM」と
赤いモザイク文字が書かれていました。
山屋さんはタイル屋さんでしたから、
モザイクはお手の物だったのでしょう。
赤いアルファベット文字はなかなかいい感じで、
出来上がった時はちょっと自慢だったのではないか、
と想像しています。
実は、当初はこちらの「YAMAYA SHOW ROOM」も含めて
全部借りませんか、という話しをいただきました。
でもそうすると建物が大きすぎて、
僕の手に負えない気がして、
残念でしたがその時はお断りしてしまったのです。
その後半年ほどしてからでしょうか、
今度は全部を取り壊して駐車場にする、
という話を伺って、それで僕はすっかり驚いて、
「タバコ屋さんだけを残していただけたら
お借りしたい」、ということをお話ししたのです。
すると大家さんも
「そうだね、あっちの方は私も残せたら、
と思っていたのですよ」いうご返事をいただき、
この愛らしい建物だけは無事残すことができたのでした。
そのまた向かいには、同じ「やまや」さんという
古くからの飴屋さんがあります。
こちらは今も営業されている老舗の飴屋さんで、
ここの板飴というのはなかなかおいしいんです。
かなり時代を経た建物で、
高いところに陶器でできたカエルが
空を眺めていたりするのです。
何でも戦時中に作ったそうで、
「兵隊さんが無事カエル」ことを
祈願してのことだったといいます。
その脇にある古い木の看板を見ると、
コンクリートとも書いてありました。
山屋さんの手がけられていた職種は、
飴、タバコ、タイル、便器、コンクリート。
何とも楽しく、巾の広い品揃えです。 |