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ほぼ日刊イトイ新聞

2024-06-30

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・人間の脳って、けっこう生意気です。
 人間のってことはないな、ぼくの脳ということです。
 宇宙の起源が137億年前とか知ると、
 すっと「なるほど137億年か」とか思います。
 地球の歴史が46億年と言われても、
 「そうか、46億年しか経ってないのか」とか言います。
 三葉虫の化石なんか見て「これが2億年前か」とか、
 わかったような顔で言ったりもします。
 1000円とか2000円程度の金額で、
 2億年前の化石を手に入れて、そのへんに置いています。
 「おまえに2億年のなにがわかるんじゃ!」と、
 時間の女神に怒られればいいのにとも思うんです。

 石器だとか土器だとか古墳だとかに触れて、
 「この時代は」とか空想したりもするけれど、
 そこで想像する昔は、何億年とかとはまったく別物です。
 つい最近みたいに近い昔とさえ言えますし、
 それにしたって1000年単位の時間が過ぎています。
 江戸時代の新選組とかだと、100年単位の昔のことです。
 時間の目盛りがぐしゃぐしゃです。
 なんで平気な顔して、オレごときが「137億年」とか言う! 
 ほんとに、なんにも実感できてないことを言ってるのです。

 たぶん、その理由は‥‥なのですが、
 数字というものを知ってしまったからです。
 137億のことも、紙に鉛筆で書けちゃうのです。
 そして、円というお金の単位でなら知っているのです。
 持っているかどうかじゃなくて、
 じぶんの近くにある一万円札がいっぱい山積みされてる、
 くらいの感覚でイメージできちゃうんですよね。
 国家予算とかの百兆円なんて話だって平気でしてる。
 お金の数字のほうでなんとなく認識できているから、
 時間の137億年をわかったつもりになっちゃうんだな。
 「そんなんじゃねーんです、お客さん!」と言いたい。
 オレたちは137億年とか46億年のことなんか、
 全然✕137億くらいわかっちゃいねーんですよね。
 ついでだから大きい数字の例にあげられる星の数について。
 「銀河系には太陽のような恒星が2000億個あって、
 銀河系のような星の集まりは宇宙に数千億個ある」って。
 ああ、気が遠くなってきた‥‥でしょう?

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ちっぽけと言えるほどの小ささにさえなってないわたしたち。


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