三谷龍二さんのあたらしい場所。[10cm日記]
 


12月16日 
外灯
当初から既存のまま使いたい、とお願いしておいたのに、
工事が終わり引き渡しが済んでも、
未だに残ってしまったのがこの外灯でした。
器具の一部に少しひびが入っている、
というのが完了しなかった理由だったみたいですが、
そのヒビは僕がエポキシ接着剤できれいに塞ぎ、
その上から白いオイルペイントを塗る程度で
直るようなものでしたから、
専門職の電気屋さんだったら
もちろんできたはずですから、
結局、どうもやりたくなかったようなのです。
 
昔から電気屋さんといえば、
ラジオやテレビ、トースターなど、
とにかく持ち込めばいろいろ工夫をして使えるように
直してもらえるところだという印象を持っています。
それで子供心に電気屋さんというのはすごいな、
と思っていました。
電気のお医者さんのような存在でしたから。
それが今は「電灯のコードを短くすることさえ
躊躇する」、と言うのです。どうしてと聞くと、
「もし何かあったら、応えきれないから」、
だというのです。
 
立場を変えれば、今の時代、
クレームに対応するのは大変だと思います。
大きな会社がそれで倒れたりするくらいですから、
神経を使うことはよくわかります。
そういう点ではいやな時代なんですね。
 
だからすごくねじれてしまっているのです。
修理ができる専門の技術や経験を持っているはずなのに、
「もしも何かあれば」という
見えない影におびえるように、
目の前で困っている消費者を無視してまで、
手伝おうとしない。
元々消費者のために、と考えられた法律や約束事が、
実際には責任を取りたくないから
たらい回しを助長してしまった。
そして消費者のための法律なのに、
結果的には消費者が一番困ることになっている。
なんだか変な風になってしまいました。
 
電灯を灯し続ける、というのは
10センチのひとつのテーマでした。
一度消えた灯を、受け継いで、また灯すという。
その象徴がこの外灯のランプだったのです。
この電灯は確かに古いけれど、
でもこういうものは昔からあって、
構造としては単純なものだと思いますから、
知識のある人が少し手を加えれば、
まだまだ使えるはずなのです。
 
この明かりが灯るのはいつでしょうか。

2011-01-25-TUE
つぎへ
このコンテンツのトップへ
つぎへ