永田 |
はい、第7話を見終わりました! |
糸井 |
お疲れさまでしたー。 |
永田 |
今日は、西本さんが、大阪出張のため、
この場にいません。そのうちメールが入るはずです。
と、状況説明をすませておいて‥‥。 |
糸井 |
今日の話は‥‥。 |
永田 |
ひっじょうに‥‥。 |
ふたり |
よかったですね! |
糸井 |
泣きましたね? |
永田 |
泣きました。 |
糸井 |
来ましたよね? |
永田 |
来ました。
今日はほんっとによかったです。
ぐいぐい持ってかれました。 |
糸井 |
うん。今回はね、ぼくは、
はじめて登場人物が日本人になったと思う。
アメリカ人じゃない人たちだった。 |
永田 |
あ、糸井さんが以前から言ってる、
「アメリカのドラマの吹き替えみたい」
っていう感じがなかったと。
とてもよくわかります。 |
糸井 |
間宮貴子が日本人に戻ってましたよね。 |
永田 |
はいはいはいはい。 |
糸井 |
今回の間宮はよくやってた。
わかりやすい表とかつくったりしてさー。
弁護士らしかったよね。 |
永田 |
そうですね。いつもの、
「おまえが話をややこしくしてる!」
みたいな部分もなく。 |
糸井 |
細かいところが効いてるんですよ。
吉田日出子が最初に
「私、財産いらない」って言ったときに、
ちょっと彼女を疑ったでしょう?
あのへんも含めてよかった。
いつもの間宮よりもオトナになってたよね。 |
永田 |
そうですねー。
で、吉田日出子さんをはじめとする
ゲストのみなさんもよくって。 |
糸井 |
今回は、ゲストを中心にした構成の勝利ですね。
なんていうか、「ゲストを立てる」ことを
スタッフと共演者がきちんと考えてる。
ドラマ全体が、ゲスト用にきっちり建てた
「城」みたいな感じがした。 |
永田 |
わかりますわかります。
お話の流れにも、芯があって。 |
糸井 |
うん。説得力があったのはね、
やっぱり「籍」なんですよ。 |
永田 |
「籍」、テーマでしたね。 |
糸井 |
うん。あの、入籍しないって言う人、
いまはけっこう多いでしょ?
「籍」なんてどうでもいいって。 |
永田 |
「紙切れ1枚の契約に過ぎないじゃないか」と。 |
糸井 |
そうそう。それはそれでもちろん、
かまわないんだけどね。
でもね、「籍」がないとね、
他人が認めないわけですよ。
他人というのは、つまり社会じゃないですか。
それはね、どういったらいいでしょう、
家族単位で社会があるんです。
いまの社会だと、独身なら独身で、
「未来に結婚する人」っていう
立場をとらされているんです。
だから、今日の吉田日出子さん
みたいな状態っていうのは、
「未来がない」ように感じられてしまうんです。
人が夫婦だと認めてくれないっていうのは
ツラいものがあるんですよ。
つまり、自己認識と他者の認識が
違うままで生きていかなきゃなんないですから。
それはね、覚悟がいるし、
いちいち宣言しなきゃなんないでしょ。
「うちは籍を入れないんですよ」って。
そこで消耗する部分っていうのがあるんです。
だから、日出子はこだわるんです。 |
永田 |
なるほどー。
それでも、吉田日出子さんが、
さらっとしてるのがすごいですよね。
湿っぽくなったり重くなったりしない。
さすが、というか、
単純に人物として魅力的だったなあ。 |
糸井 |
うん。あの人に、
おひょいさんが惚れちゃったっていうのが
すごくよくわかりますね。
出会った当時から、
かわいかったんだろうなあというのが。 |
永田 |
そうですね、そうですね。 |
糸井 |
ぼくはね、最後、
吉田日出子さんが病気になるっていう
部分がなくてもオッケーでしたよ。 |
永田 |
あ、ぼくもです!
ぼくはあそこに行く前の時点で、すでに、
「ああ、今日はよかった」と思ってましたから。
そしたら、そのあとがあって、
つまり、どんでん返しのようなことになって。 |
糸井 |
うん。病気を黙ってたあたりでまた泣けるよね。 |
永田 |
泣けましたー。やられたと思いました。 |
糸井 |
ぼくは、正直、
ほんとうに涙も出ました。 |
永田 |
いや、ぼくはもう、
後半は隠しようもなくなってしまって、
おおっぴらに涙を拭いてましたから。
<やさしいタオル>のハンドタオルで。 |
糸井 |
ぼくは、ソファの背もたれのこのあたりを
隠れ家のようにつかって泣いてました。 |
永田 |
あははははは。 |
糸井 |
「指輪が欲しいわ」っていうところね。
たまんないですね。だって30年ですよ。
経過した年月を感じさせたよね。
内縁のまま30年いっしょに暮らしている
っていうことをテレビで
あそこまで表現したのは見事でしたね。 |
永田 |
あと、結婚とはなにかっていうことを、
考えさせられましたよね。
そのあたり、悩んでいる間宮にも
とても共感しました。 |
糸井 |
そうそう、あの、結婚観について、
ことわざみたいなフレーズがありましたよね? |
永田 |
「鳥カゴの外にいる鳥は鳥カゴに入りたがり、
鳥カゴの中にいる鳥は鳥カゴから出たがる」 |
糸井 |
そうそう。あれについて、
犬を飼っているぼくからの
ちょっとしたマメ知識だけどね、
犬小屋をすごく広くしたり、
犬小屋をなくしてしまって
「この部屋全体がおまえの家だよ」
みたいにすると、
犬にとってはストレスになるらしいです。 |
永田 |
へえええ。 |
糸井 |
つまり、誰も襲ってこないっていう、
確実に安心できる場所で、
全体を見通してるっていうのが、
犬の本性にいちばん合ってるんです。
だから、「狭いかな?」って思うくらいの場所が、
いちばん落ち着くんです。それって、
あの鳥カゴの話を見事に表してますよね。 |
永田 |
「鳥カゴに入りたがる本能もある」と。 |
糸井 |
まさにそうですね。
あと、またちょっと脱線しますが、
おひょいさんが、
「いつ死んだっていいんですよ」
っていう姿勢から変わっていくところで、
ぼくは吉本隆明さんのことばを思い出しました。 |
永田 |
それは? |
糸井 |
吉本さんは昔、
「死んじゃってもべつにいいんだ」
っていうふうに思ってたらしいのね。
でも、歳をとるにつれて、だんだんと、
「自分の死は自分だけのもんじゃない」
っていうことに気がついたんだって。
「いつ死んでもいい」だなんて
勝手に思うことはできないんだって、
ずいぶん歳をとってからわかったって
言ってたんです。 |
永田 |
なるほど。それが今回のおひょいさんに。 |
糸井 |
すごく近いものを感じましたね。
つまり、家族を構成するってそれにそっくりで、
「自分ひとりの自分」じゃないわけだよ。
社会的な存在としてあるわけだから。
相手から見た自分、とかね。
だから、たとえば、漫才をやってて、
やすしさんみたいな人が
「俺は死んでもええねん!」
って言って好き勝手にやってたら、
きよしさんみたいな人は困るじゃないですか。
そういうことですよね。 |
永田 |
脱線ついでですが、
糸井さんの毎年きちんと
人間ドックに行くようになったっていうのも
そういうことですよね。 |
糸井 |
そうですそうです。
いちおう、社長ですからね。 |
永田 |
よくわかります。 |
糸井 |
話を戻しましょう。
ぼくがずっとしゃべってますけど、
永田くんは、どこがよかったですか。 |
永田 |
ぼくはですね、いままで出なかった話でいうと、
こう、7話目にして、あの事務所の連中と
顔なじみになってきた感じがしてて。
その意味でも、序盤から入り込めましたね。 |
糸井 |
最初から好意的でしたね、そういえば。 |
永田 |
ええ。最初のコマーシャルのところで、
「今日はいいですね」って感じで。
そのあとは最後まで引っ張られました。
正直、いままでって、
時計が気になったりしたんですよ。
「あ、ぼちぼち終盤か」って。
ところが今回は、時間の経過が
まったく気になりませんでしたから。 |
糸井 |
なるほどなるほど。 |
永田 |
で、いっつもあの、
ちょっと中だるみするところで
ノラ・ジョーンズがかかるじゃないですか。
今回は、ノラ・ジョーンズの歌が
グッときましたから。 |
糸井 |
これまではいわば、
ノラ犬・ジョーンズだったわけですね。 |
永田 |
それは無視させていただきますが、
全体的な感想としては、ムダのない運びで、
とっても楽しませていただきました。
脇役でいうと、あの娘さんもよかったですね。 |
糸井 |
あ、よかったですね。あめくみちこさん。
いやな人から変わってくれて、
そこもまたよかったです。
敵役のままいたほうがドラマとしては
つくりやすいんだと思いますけど。 |
永田 |
そうですね。
写真スタジオの小倉さんも
いい味出してました。 |
糸井 |
最後の言いわけが笑っちゃった。
「なんで飾ってるの!」って言われて、
「え? 飾ってありますか?」って(笑)。 |
永田 |
そうそうそう。
見りゃわかるだろって(笑)。
あと、とても細かいところで
印象に残ったんですが、公園を
間宮とおひょいさんが散歩するところで、
おひょいさんが鳥カゴの話をしますよね。
そこのシーンで、おひょいさんの向こうに
鳥がぶわーっとタイミングよく
飛んでくるところが映っていて、撮った人は
会心だったんじゃないかなあと思いました。 |
糸井 |
うわ、細かいですね。
気がつきませんでした。
あの公園はどこなんですかね? |
永田 |
善福寺公園かなと思ったんですが。
場所の設定が杉並でしたし。
井の頭公園にしては人が少なかったような。 |
糸井 |
公園とか出てくると、いいですね。
できればもっと出してほしいですね。
こう、狭っくるしさから
抜け出してほしいというか。 |
永田 |
室内とか夜が多いですからね。
設定上、どうしても。 |
糸井 |
なんにせよ、今日はよかったです。
日本人のドラマとして、
きっちり成り立ってた感じですね。 |
永田 |
うんうん。まさに「ドラマ」でした。
見てる側として、
ハッピーエンドを願いましたから。 |
糸井 |
そうですね。重要ですね。
間宮が落ち着いていたというのも、
安心して入り込めた要因でしょう。
やっぱり、間宮貴子が
仕事だ、金だ、って、
ガツガツしてるのは損ですよ。 |
永田 |
そうですね。今回は、
事件の傍観者として、
職務をまっとうしてる感じでしたから。 |
糸井 |
「この人をどうにかして助けてあげたい」
っていうことで動いてたよね。
やっぱり、愛ですよ。 |
永田 |
うん。愛ある弁護士でした、今日は。
見てよかった。
この連載を続けていることが
誇らしく思えましたよ。 |
糸井 |
言いますね。 |
永田 |
へたな映画をビデオで借りてみるより、
今日の『離婚弁護士』のほうがいいですよ。 |
糸井 |
ほめますねー。 |
永田 |
そんな感じですかね、今回は。 |
糸井 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
どうかしましたか? |
糸井 |
‥‥今回、真面目な話ばっかだけど、大丈夫? |
永田 |
大丈夫ですよ、これはこれで。 |
糸井 |
なんか、ギャグとか入れとく? |
永田 |
余計なことしないでください。 |
糸井 |
「バットのしなりを利用して
ボールをはじきかえすんですにー」 |
永田 |
‥‥なんですか、それ。 |
糸井 |
‥‥張本勲のマネ。 |
永田 |
‥‥‥‥。 |
糸井 |
ところで、西本さんからの
メールは来てますか。 |
永田 |
あ、忘れてました。
‥‥ええと、来てます来てます。
ふむふむ‥‥ほう! |
糸井 |
なんですって? |
永田 |
読み上げます。
「今日は、ダメでした」 |
糸井 |
へええええ! そうですか! |
永田 |
「大阪は吉本興業本社の広報室で
ドラマを見ました。
当時の同期といっしょに4人で見ました。
僕以外の3人、ドラマ嫌いです」 |
糸井 |
あちゃあ。シチュエーションが悪いね。 |
永田 |
「とにかくハードスケジュールで、
ドラマを見る前に
へとへとに疲れてしまいました。
9時に本日の最後のアポが終了した時点で
夕飯に出かけたかったのですが
ドラマがあるということで
みんなを待たせていた状況です。
お腹が空いているのと
朝から疲れているのとが合わさって
ドラマに全く集中できなかったのです」
‥‥こりゃ、無理ですねえ。 |
糸井 |
腹ぺこですか。
そこへ行くと、ぼくらは! |
永田 |
満腹です! |
糸井 |
しかもただの満腹じゃありません! |
永田 |
そうでしたそうでした!
なんと、ぼくらは‥‥。 |
糸井 |
コートドールで、とっても美味しい料理を
いただいてきました! |
永田 |
にしもっちゃん、ゴメン! |
糸井 |
ということは、あれですか、
今日は「オレの店」の写真はないんですね? |
永田 |
ええ、残念ながらお休みです。
ですが、大阪から、ドラマを見ている
現場の写真が送られてきてます。 |
糸井 |
どれどれ?
|
永田 |
‥‥‥‥これは。 |
糸井 |
‥‥‥‥ツラいね。 |