永田 |
今日はほんとにお疲れさまでした。 |
西本 |
無事、見終わりました。 |
糸井 |
今日は、ここにみんなが集まる経緯から
始めたほうがいいんじゃないですか? |
永田 |
ああ、そうですね。
ある意味、全員集まったことが奇跡です。
なんせ、夜8時の時点で事務所に
3人ともいませんでしたから。 |
糸井 |
まず、西本さんはどこにいたんです。 |
西本 |
ぼくは、大阪にいました。 |
永田 |
お疲れさまです! |
糸井 |
なにをしてたんですか。 |
西本 |
トータル・ワークアウト戎橋店の
立ち上げ支援をやってまして。 |
糸井 |
もう、ずいぶん通ってますね。 |
西本 |
ええ。もう昔いきつけだった店に行っても
「久しぶり!」なんて言われなくなりました。
あ、そうだ。告知させてもらっていいですか。
6月12日に特別説明会を
難波のスイスホテルでやるので
ご興味のあるかたはpostman@1101.comまで
ご応募いただけたら抽選でご招待いたします。
メールの件名は「説明会参加希望」としてください。
当選は発送をもってということで。 |
永田 |
数時間前まで大阪でばりばり
営業していただけあって、
完全に営業モードですね。 |
西本 |
我ながらよく間に合いました。
事務所に着いたのが8時過ぎです。 |
糸井 |
ぼくは、わざわざ電話しましたからね。
西本が間に合わないかもしれないと聞いて。 |
西本 |
ええ、夕方電話がありました。 |
永田 |
社長がわざわざ部下の予定を案じて、
「こいつは今日、ドラマを見られるのか?」と。 |
糸井 |
そうそう(笑)。
そしたら「いま、飛行場です」って言うから、
すごくホッとしたりして。 |
永田 |
このドラマにかける男子部の結束は
なみなみならぬものがありますよねえ。 |
西本 |
いや、ほんとにそうですよ。 |
糸井 |
で、永田さんはどこにいたんですか。 |
永田 |
ぼくは今日、京都に行ってました。 |
西本 |
わお。 |
糸井 |
任天堂の取材でしたっけ? |
永田 |
そうです。ぼくは西本さんとは逆で、
もっと早く帰ってこられるかなと
思ったんですが、
ちょっと予定より長引いて、
事務所に着いたのが9時半でした。 |
糸井 |
ドラマ開始30分前に到着、と。 |
永田 |
間に合ってよかったです。 |
西本 |
糸井さんはどこに? |
糸井 |
ぼくは六本木ヒルズで
『スチームボーイ』という映画の試写会に
行ってまして。 |
西本 |
大友克洋さんの新作ですね。 |
糸井 |
ええ。なにしろ開始が夜7時ごろでしたから、
ここに着いたのは9時35分くらい。 |
永田 |
ほんと、よく集まりましたね。 |
糸井 |
ぼくらは『20世紀少年』みたいですね。 |
西本 |
どんなに離れていても
木曜日夜10時は
この場所に帰ってくるということですね。 |
永田 |
オール・フォー・ザ・『離婚弁護士』! |
ふたり |
『離婚弁護士』・フォー・ザ・オール! |
永田 |
逆にいうと、ですね、
1本のドラマをずーっと終わりまで
見続けるっていうのは
たいへんなことだというわけですね。 |
西本 |
いや、すごいことですよ。 |
糸井 |
ドラマを見るのってね、
やっぱりがっぷり四つなんですよ。
たいへんなことなんです。 |
西本 |
ですねえ。 |
永田 |
というわけでドラマについて話しましょう。
ええと、今日の『離婚弁護士』は
大きく3つの部分に
分けることができると思います。 |
糸井 |
ほう。 |
永田 |
まず前半の「娘と上司の不倫疑惑」部分。
続いて後半の「父と娘の物語」部分。
そして最後、「衝撃のラストシーン」です。
これに沿って話していきましょう。 |
糸井 |
うまいこと仕切るなあ(笑)。 |
西本 |
12時間後には更新とあって、
しゃべりながら
すでに編集が始まってる感じですね。 |
永田 |
ええ、死活問題です。 |
西本 |
協力しましょう。まず前半ですね。
ぼくはとってもよかったと思います。
法律の論点をおさえつつ、テンポがあって。 |
永田 |
うん。相手の弁護士との応酬とか、よかったね。 |
西本 |
生瀬さん、ああいう役、はまってますね。
あの人が入ると、
コミカルタッチもひと味違います。 |
永田 |
うんうん。 |
糸井 |
間宮も法律家としてちゃんと戦ってたね。
生瀬弁護士の出方を冷静に観察して。
相手も証拠をぜんぶ出さずに小出しにして
様子を探るみたいな駆け引きもあって。 |
永田 |
しかも、相手が証拠を小出しにする必然性を
きちんと視聴者に説明してました。 |
糸井 |
うん、そのへんも気遣いがあった。
あと、間宮は先週あたりから
弁護士として成長してきましたよね。 |
西本 |
ええ、血が通ってきた感じです。
もしもぼくが友人から離婚の相談を受けたら
自信をもって間宮を紹介しますよ。 |
永田 |
わかるようなわからんような。 |
糸井 |
ひとつ、いいですか。前半部分でぼくは
非常に問題だと思うところがあります。 |
永田 |
どうぞ。 |
糸井 |
津川さんの娘が、けっきょく、
「不貞をはたらいていなかった」という点です。
あのちゃらんぽらん課長っていうのは、
そうとうなワルですよね。
職場のふたりを手玉にとってるわけですから。 |
永田 |
ええ、かなりの手練れです。 |
糸井 |
だから、娘さんも、あのおっさんに、
暴力的にとはいわないまでも
相当、強引にひっかけられていると思うんですよ。
それなのに、ふたりのあいだに
なにもなかったっていうのは、
ちょっとリアリティーがないかなあと思うんだ。
「ホテルの部屋をとってあるんだ」
みたいなやり取りをしつつ、
一度たりとも関係がなかったっていうのは、
海岸でデンターライオンのふたを探すくらい
むつかしい話じゃないかと。 |
永田 |
デ、デンターライオン‥‥。 |
西本 |
銘柄指定っすか。 |
糸井 |
ペットボトルのふたなんかは落ちてますよ。
でも、デンターライオンのふたは
なかなかないわけだよ。
それくらい希なことだという意味。 |
永田 |
いつもながら斬新な比喩です。 |
糸井 |
だからこの番組を見てね、
「身につまされる」とか、
「あるある!」とか「私も!」っていう
気持ちで見ているような人たちにとっては
ふたりに関係がなかったっていうのは
「今を生きるドラマ」になってないですよね。
あれはやっぱり、
「一度だけあやまちを犯した私」ってならないと
見てる人の心をえぐらないと思いますね。 |
西本 |
それはたしかに思いますね。
でも、一方で、
「会社で不倫ってそんなにあるのかよ?」と、
東京糸井重里事務所勤務のぼくなんかは
思ったりもしますね。 |
糸井 |
でも、あるんですよ。 |
西本 |
ドラマでテーマとして
取り上げられているっていうことは
ぼくらの知らないところでは
そうとう、お馴染な話題でもあるわけですよね。
う〜ん、でも、前の会社(吉本興業)でも
なかったような気がするけどなあ‥‥。 |
糸井 |
あ、それはね、にしもっちゃん、
笑いのある職場だからだよ。
つまり、「なんちゃって!」が
言えるような会社は不倫に向いてないんだよ。 |
永田 |
ウチも思いっきり、
「なんちゃって!」のある職場ですね。 |
糸井 |
そうそうそう。
つまり、笑う門には不倫ナシ。 |
ふたり |
「笑う門には不倫ナシ」! |
糸井 |
説得力あるだろう。 |
西本 |
な、なるほど。 |
永田 |
たしかに、上司が張本勲のモノマネをして、
それが「意外に似てる」だの言って
喜んでる会社じゃ、不倫は縁遠いわなあ。 |
糸井 |
「この仁志というのは、
世界でいちばん牽制の好きな
二塁手なんですにい」 |
西本 |
‥‥これ、ほんと似てるわ(笑)。 |
永田 |
‥‥たちが悪いよね。 |
糸井 |
「送りバントもありえますヨぉ」 |
永田 |
もういいです! |
西本 |
ああ、でも、言われると非常に納得できます。
前の職場は、女性に対して
「あいつ、キレイやな」というより
「あいつはおもろいで」ということのほうが
ポイントが高かったです。 |
糸井 |
ウチの会社もいっしょだよ。
たとえばオレがさ、残業してる誰かに、
寒そうだから肩にそっと
コートをかけてやるみたいなことをしたら
「どうしたの?」って言われるじゃない。 |
永田 |
ジェームス・ブラウンのショーの
寸劇が始まるのかと思いますね。 |
西本 |
マントマンだ(笑)! |
糸井 |
わははははははははは。
だからさあ、
「コートをかける」って言っただけで
「ジェームス・ブラウン」だの、
「マントマン」だのってことが
返ってくるような職場じゃ
不倫なんてできないってことよ。 |
西本 |
でも、一般の人たちにとっては
あるわけですね。 |
永田 |
むしろ、「ついに来たかこのテーマ!」
って思ったんじゃないかなあ。 |
西本 |
う〜ん、そうかぁ。 |
糸井 |
少なくとも、自分や知り合いのところで
不倫は1件くらい起こってますよ。だからこそ、
あのふたりに「あやまち」があるべきだと思う。
つまり、「あやまち」がないままだと
いま取り上げるテーマにはならない。
極端にいうと、
「肉体関係がなかったから罪がない」
というのはドラマじゃないんじゃないかと。
「罪があるけれども許す」とか
「罪があるけれど弁護しなきゃなんない」とか、
間宮が彼女を弁護するっていうことを
「どうなのかしら」って悩んだりとかしないとね。 |
永田 |
そうなると、津川さんの悩みも
ぜんぜん次元が変わってきますね。
「一度だけ、あやまちがあったけれども
その娘との関係をどうしよう」
ということになってくる。 |
糸井 |
そう! もし、そうなってたら
ぼくは後半で泣いてましたね。 |
永田 |
先週にひきつづき。 |
糸井 |
そうそう。レストランで待つシーンとか、
ぜんぜん重さが変わってきただろうね。
‥‥思い出したけど、あのレストランの
ウエイターはイヤなやつだったね! |
永田 |
ああ! あのウエイターはひどい! |
糸井 |
じ〜っと、人を待っているときに
「いらっしゃいませんね」って
セリフを言うなんて、最悪ですよね。 |
西本 |
サカキシンイチロウさんが
見てたら激怒しますよ。 |
永田 |
ほんとですよね。あのウエイターは
これを読んで勉強するべきです!
https://www.1101.com/restaurant/index.html |
糸井 |
あの、ちゃらんぽらん課長も勉強すべき。
ホテルのバーで、カギをちらつかせるな! |
西本 |
‥‥でも、ああいう不倫は、
なんか信じられないわ。 |
糸井 |
なんか、あなたそこに留まるね。 |
永田 |
それはぼくも感じてるんですよ、さっきから。 |
西本 |
‥‥‥‥。 |
永田 |
(ヒソヒソ声で)
軽くショックを受けてますよね?
中学生がオトナの世界を知って
がく然としているような‥‥。 |
糸井 |
(ヒソヒソ声で)
これを読んでいる自分の妻に
「自分はそういう男じゃないぞ」と
アピールしてるんですかね? |
永田 |
(ヒソヒソ声で)
いや、そんな裏もなく、
純粋にぼう然となっているみたいですよ? |
西本 |
聞こえてますよ。 |
ふたり |
失礼しました。 |
西本 |
‥‥あの、嫁が不倫とかしたら
イヤだよなあって思ってました。 |
永田 |
あ、そういう視線だ。 |
糸井 |
彼は根が愛妻家ですからね。 |
西本 |
‥‥はあ。 |
永田 |
考え込んでますね。 |
糸井 |
ま、そういうことを感じさせるのが
今回のテーマですから。 |
永田 |
そうなるとやっぱり、
「あやまち」があった方が‥‥。 |
西本 |
ああ、そうですね。
そしたらもっとぼくは考え込んでましたよ。 |
永田 |
なるほどなるほど。さて、
後半の「父と娘の物語」部分に移りますが。 |
糸井 |
あれさ、前半部分が終わったところで、
つまり、10時40分くらいで
「今日は終わりか」って思いましたよね。 |
西本 |
思いました、思いました! |
永田 |
ということは、つまり、前半はやっぱり
見事な展開だったというわけですよね。
テンポよく進んでいって、
見るほうとしては時間が気にならなかった。 |
糸井 |
勝手な言い方ですけれども、
あそこで終わってくれてもよかった。 |
西本 |
あの部分だけで
1本しっかり見てみたかった気はします。 |
永田 |
後半は具体的に、どうでしたか。 |
糸井 |
父と娘を、恋愛関係のように描いてましたね。
「待ってるんだけど来ない」とか
「機嫌をとったり」だとか。
でもやっぱり、全体的には未消化だったかなあ。
けっきょく、あんな人たちはいないでしょ、
みたいな印象がありましたね。
それがドラマの誇張を含むとしても。 |
永田 |
やっぱりそれは糸井さんが
さっき指摘した部分につきるんじゃないですかね。
もしも、娘に「あやまち」があったら、
あの恋愛関係のような父と娘の描写も
意味がグッと出てきたんじゃないでしょうか。
なんというか、今日の後半は「核」がないというか。
なかったからこそ、後半の「核」として、
「スキーの事故と傷の話」なんかを
持ってきたんだと思うんですけど、
やっぱり少し唐突な感じがあって。
あれの代わりに「あやまち」があれば‥‥。 |
糸井 |
そうなんだよね。今回は、
いろいろと「つけ足し」してるような感じがしたな。
だから、ネタの数は多いんだけど
筋が見えない。 |
西本 |
うんうん。箇条書きにできそうな感じ。
でも、そういう部分はあったにせよ、
津川さんの演技はすごかったと思います。 |
永田 |
ぼくは娘さん役の人がよかったですね。
ホームでの表情とか、引き込まれました。 |
糸井 |
そのあたり、よかったからこそ
やっぱりちょっと残念ですね。
父と娘のドラマっていうのは
いままでも古典の中で描かれているがゆえに
「おれはこう描くんだ」っていうような
ワンアイデアが出てから見せてほしいですね。
さんざん描かれているものを扱うっていうときは
「普通になっちゃいますよ」っていって
さらりと遠慮するのが礼儀だと思うんだよ。
一味なにか加えられない場合はね。 |
永田 |
結果的に、一味がなかったから
今日は2本立ての形になったんでしょうか。 |
西本 |
ネタの数は多かったですよね。
コメディータッチも含めて。
具だくさんな感じでしたよね。 |
糸井 |
昆布でちゃんとダシをとっていれば
具だくさんどころか、
「ふ」を浮かせておいても
しっかりした味になるんですけどね。 |
永田 |
なるほど。今回、部分部分に
いろいろと魅力を感じつつも、
なんとなく3人とも、
観賞後の後味がよくないのは
ダシの問題だったんですかねえ。 |
西本 |
そうだと思います。 |
糸井 |
最後に「衝撃のラストシーン」
について話しましょうか。 |
永田 |
ほんとうに衝撃のラストでした。
具だくさんの汁のうえに
最後にアイスクリームが
ど〜んっ! ときました! |
西本 |
‥‥びっくりしましたわ。 |
糸井 |
衝撃的でしたね(笑)。 |
永田 |
見てない方のために説明しますと、
最後に、間宮が、
歯医者で抜いたばかりの
「親しらず」を投げるわけですね。
事務所のある建物の屋根の方向に。 |
西本 |
えいやっ、とね。すると、
投げた「親しらず」が建物にぶつかって、
なんと、あの建物が‥‥。 |
糸井 |
ドカーーーン! っと。 |
永田 |
ガラガラガラーーーッ! っと。 |
西本 |
崩壊するわけです! |
永田 |
あれはまあ、ちょっとした、お遊び? |
西本 |
にしても! |
永田 |
ねえ(笑)。 |
糸井 |
はやい話が「いまは昔の物語」っていう、
おとぎ話の終わりみたいな感じに‥‥。 |
永田 |
なっちゃいましたよね。 |
糸井 |
まあ、あれは『アリー・マイ・ラブ』を
参考にしちゃったんだよね。
もともと『アリー・マイ・ラブ』を
下敷きにしているようなところがあるけれども。 |
永田 |
ぼくは見てないんですが、
『アリー・マイ・ラブ』は
そういう演出があるんですか? |
糸井 |
うん。ときどき特殊技術の演出があって、
たとえば舌がピャーっと伸びて
人に身体に巻きつくだとか
そういうのがあるんですよ。 |
永田 |
へええ。 |
糸井 |
『アリー』にあって
『離婚弁護士』にないものっていうことで、
リストアップされたんじゃないかなあ。 |
西本 |
「そろそろあれやりたいっすね」
っていう感じだったんじゃないですかね。 |
永田 |
まあ、軽い気持ちで遊んだのだとしても、
見ているぼくらはたまげましたね。 |
糸井 |
次回、あの建物は壊れたままなのかな。 |
永田 |
そこまでつながるならいいですけど。 |
西本 |
いつも最後は建物が崩れて終わるっていう
お約束だったら許せますよね。
毎回お約束で毎回ビルが崩れて、ミムラが、
「また今週も崩しちゃって
経費がもちませんよ!」ってキレるみたいな
キメであればあれはオッケーですけどね。 |
糸井 |
西本さんはこういうことに厳しいですよねえ。 |
西本 |
はい。ぼくはああいうのをすごく怒る、
というか重要視するタイプなので。
というのは、なんか仕事でも、
会議とかやってると、ああいうことを
したがる人っているじゃないですか。
「いっそ、こうやってさァ!」みたいな。
ぼくはそういうのを
止めたり直したりする仕事が多いので、
すごく気になるんですよ。 |
糸井 |
世界観を壊すときは
世界観を壊すなりの説得力が必要ですよね。
ぼくは夢オチかと思いましたから。 |
永田 |
思いました思いました。 |
西本 |
正直、見終わった直後は、
不倫裁判の駆け引きも、
父と娘の物語も吹っ飛んでましたから。
まさに、ドカーーーン! と。 |
糸井 |
びっくりしたなあ。 |
永田 |
びっくりしたなあ。 |
西本 |
びっくりしたなあ。 |