糸井 |
永田くんは落花生が好きですよね? |
永田 |
ええ、ぼくは落花生が好きです。
小生、落花生が好物です。 |
糸井 |
これ、ぼくのおすすめ落花生なんですよ。 |
永田 |
いただきます。ぽりぽり。
ああ、なかなか美味しいですね。 |
西本 |
ぼくもいただきます。ぽりぽり。 |
永田 |
うん、いいですねえ。ぽりぽり。
ぼくはもうちょっと
アクのある味のほうが好みですが、
これもなかなか。ぽりぽり。 |
糸井 |
なるほど。ぽりぽり。
落花生というだけでも、
いろいろたのしむ道があるもんですねえ。
ぽりぽり。 |
西本 |
落花生って、なくなった瞬間に、
さみしくなりますよね。ぽりぽり。 |
永田 |
そうなんですよ。ぽりぽり。
所詮、落花生ですからね、
鳥肌が立つほど美味いってことはないんです。
でも、食べ出すと止まらなくて、
なくなった瞬間にありがたみがわかる。
それが落花生です。ぽりぽり。 |
糸井 |
なるほど。ぽりぽり。 |
西本 |
ぽりぽり。 |
さんにん |
‥‥そうでなくて! |
糸井 |
で、どうなんですか。
観たんですか、『新選組!』は。 |
ふたり |
観ました! |
糸井 |
どうでしたか! |
永田 |
おもろい! |
西本 |
やべえ! |
糸井 |
そうだろう! |
永田 |
終了。 |
西本 |
終了。 |
糸井 |
こらこらこら! |
永田 |
だってこれ、どうするんですか。 |
西本 |
ぼくらが論じるようなこと、ないでしょう。
毎週たのしみに拝見しましょうよ。 |
永田 |
うん。終了。 |
西本 |
終了。 |
糸井 |
じゃあオレがしゃべるぞ。
1時間ほどしゃべるぞ。 |
永田 |
わあ、待った待った。 |
西本 |
オレらにもしゃべらせてください。 |
永田 |
ええと、なんだろう、
どっからしゃべればいいんだ。
‥‥豪華メンツでしたね? |
西本 |
‥‥豪華メンツでした。 |
糸井 |
‥‥大河ドラマは豪華メンツなんだよ。 |
西本 |
でも、役者ランクとしては
まだそんなに高いとはいえない人たちですよね。
その、歴代の大俳優の方々にくらべると。
だから、ぼくが観ながら思ったのは
『ひょうきん族』が始まったときって
こんな感じだったんだろうなあ、と。 |
糸井 |
おっ。無理矢理にでもお笑いにもっていくね。 |
西本 |
新しい時代がひとつ、
始まる瞬間なんだろうなあ、と。 |
永田 |
うん。とくにぼくとかは
おふたりよりもさらにドラマを観ないので、
コマーシャルとかではよく観るけど、
どういう役者さんかはあまり知らないっていう
人たちばかりなんですよ。 |
糸井 |
知ってるんだけど
フルネームで言えない感じの人たちね。 |
ふたり |
そうそうそう。 |
糸井 |
そういう俳優さんたちが
そろってるっていうことに
大きな意味があるんですよ。
いいですか、重要なことを言いますよ。 |
永田 |
もう、言っちゃいますか。 |
西本 |
ちょっとウンコ行ってきます。 |
糸井 |
黙って聞け。
そういう、実力のある若い人たちが
そろっているということ自体が、
新選組そのものを表しているんですよ。 |
ふたり |
はっはぁ〜。 |
糸井 |
わかりますか。
近藤勇そのものは多摩の百姓のせがれで
武士じゃなかった人が
「武士」を演じているわけですよ。
つまり、女形が女じゃないのに
「女」を追求していくのに似て、
武士じゃなかった人が、
武士で生まれ育った人とは違うところから
「武士」っていうものを探っていくんです。
そのことと、「近藤勇」を
「SMAPの香取くん」が
演じることっていうのは、
おおいに関係があるんです。 |
永田 |
あっ、なるほど。 |
西本 |
ははぁ〜ん。 |
糸井 |
SMAPのメンバーが
近藤勇をやるっていうことに対して、
「それはどうなの?」
っていう意見もありますよね。
深みが出ないとか、若すぎるとか。
でも、それ自体が新選組の運命なんですよ。
二重の意味で、
「生まれついての何々」じゃない人たちが、
唐突に大きな真っ直ぐの道を与えられて、
いわばバイクで疾走していくみたいな、
そういうキャスティングで
ドラマをやっているんですよ。
だって、誰が見ても納得がいく、
文句のない新選組として役者さんを選んだら、
30代の人ばっかりになっちゃいますよ。 |
西本 |
そうですよね。 |
糸井 |
「このガキどもがっ!」
っていうところのにおいが、
あらかじめムンムンしているわけですよ。 |
永田 |
二重構造のたのしみがあるんだ。 |
糸井 |
そうなんですよ。
たぶん、三谷幸喜さん自身が
それをものすごく狙っていると思う。
三谷さん自身も
「まさか、コメディーを書いていた私が
NHKの大河ドラマを書くとは」
って言い方で表しているように、
「ザ・大河」の人じゃないわけですよね。
つまり、ぜんぶの構造が
本流にいさせてもらえない傍流の人たち、
「まだまだ早い」と扱われていた人たちが、
「いい道用意しましたから、走ってください」
って言われたみたいな物語なんですよ。
だからあれを若い子たちが観ると、
「オレがいる」って思えるんですよ。
あらゆる場所に「オレ」がいるんですよ。 |
西本 |
わかりますわ。 |
永田 |
いままでは、「大河」って、
「おもしろいんだろうけど、
オレが観なくてもいいか」
っていう感じでしたもんね。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
西本 |
個人的に言わせてもらうと、
今回、ぼくはオダギリジョーさんに
しびれましたねー。
オレの口から「オダギリジョー」が
出てくることに
自分で突っ込みたくなりますけど、
あれはとんでもない役者でしたね。
びっくりしましたね。 |
糸井 |
よかったね。
土方たちの前に立ち塞がってね。 |
西本 |
そうそう。役名は斎藤でしたっけ? |
糸井 |
そう、斎藤。斎藤一。 |
永田 |
オープニングに
「斎藤一:オダギリジョー」って出てきて
どっちがどっちの名前だか
わからなかったです。 |
西本 |
カタカナでオダギリですからね。
いや、知らなくて申しわけありません
っていう感じでした。
ほんとに人を殺しそうな目をしてましたね。 |
糸井 |
なるほどね。 |
永田 |
ああ、「目」で言うと、
ぼくはあの人がよかったです。
じつはぼくは土曜日の再放送で
第24回の『避けては通れぬ道』も
観たんですけど、その回で
クロレッツの人が出てるんですよ。 |
糸井 |
‥‥誰ですか? |
永田 |
ええっと、タウンページの人です。 |
西本 |
誰ですか? |
永田 |
ええと、『離婚弁護士』の不動産屋ですよ。 |
西本 |
ああっ! あの人か。 |
永田 |
あの人が前の回でですね‥‥。 |
糸井 |
ちょいと! おいていかないでよ。 |
西本 |
だから、『離婚弁護士』に出てきた
いんちき不動産屋ですよ。 |
糸井 |
誰よ! |
永田 |
クロレッツの人です! |
西本 |
タウンページの人です! |
糸井 |
おんなじことばっか言うな! |
西本 |
名前が出てこないんだよなあ‥‥。 |
永田 |
こんなメンツで「大河」を語ってすいません。 |
西本 |
ちょっとガイドブックで調べますわ。 |
糸井 |
‥‥ああ、この人ね! |
西本 |
相島一之さんって人だ。 |
永田 |
この人が相当やばい演技でした。
新見錦の役だったんですが、
いきなり死んじゃって残念でした。 |
西本 |
ああ、この人が新見役だったんだ。
芹沢の腹心の人ね。 |
糸井 |
きみたちは、いきなり観たわりに、
すごくストーリーを把握しているようですけど、
それはやっぱりあれですか? |
西本 |
ええ、読者からいただいた
「『新選組!』あらすじメール」です。 |
永田 |
あれは、非常に役に立ちました!
ありがとうございました。 |
西本 |
クオリティーが高くて、びっくりしました。
24回分のだいたいの内容が、
一気にわかりましたから。 |
糸井 |
すごかったねえ。
いろんな人が、いろんな視点で、
書いてくれてるからわかりやすいんだよね。 |
永田 |
そうそう。いろんな意見を
いくつも読むことによって、
「だいたいこういうことか」
っていうことがわかるんですよ。
短期集中の学習としては最高でした。
これから『新選組!』を観る人のために
優秀なものをいくつか掲載しておきましょう。
(こちらのページへどうぞ!) |
西本 |
メールをくれたみなさんが
おしなべて言ってるのが
「いまからがおもしろいですよ!」。 |
糸井 |
そうそうそう(笑)。 |
永田 |
「いまから観るなんてずるい!」
っていう意見もありましたね。 |
さんにん |
(笑) |
糸井 |
ずるいっていう人の気持ちも
わかんないわけじゃないけどね。
いままさに、香取くんはSMAPから
大河の主役に変化しつつあるわけで、
その瞬間を観られるんですからね。
今回でいうと「鬼になれ」の場面ですよね。 |
西本 |
あああ、よかったですね。 |
永田 |
どきどきしましたねえ。
やっぱり物語の主役だし、
簡単に芹沢暗殺を認めるわけには
いかないだろうということで、
あのまま酒宴の場にとどまるのかと
思っていたら‥‥。 |
糸井 |
流れとしてはどっちにでも
展開できるからね。
で、行くんだけど、
斬りに行くんじゃないんだよね。
あの加減がたまんないですよねえ。 |
西本 |
観ながら物語に翻弄されましたよ。
25回目から観るっていうので
どうなのかなと思ってたんですけど、
あらすじメールを読んだだけで
8時からポンと観て、簡単に入り込めました。 |
糸井 |
あ、そうでしたか。 |
永田 |
僕も、土曜日に前回の再放送を観て
いきなりつかまれました。
あの、じつは、うちの妻は
『新選組!』を第1回からずっと観ていて、
「観ろ観ろ観ろ観ろ」言ってたんですよ。 |
糸井 |
なんで、あなたはそこで観ないんですか。 |
永田 |
いや、まあ、「ドラマだし」っていうのでね。 |
西本 |
あんた、それはドラマに対する偏見だよ! |
永田 |
おまえが言うな! |
糸井 |
いいですか。昔からですね、
妻の意見とナスの実にはひとつも無駄がない
みたいなことが言われてましてね‥‥。 |
永田 |
そのお説教はのちほどうかがうとして。
ともかく、ぼくは土曜日に
妻の横で初めて観たわけですよ。
あんまりよくない
シチュエーションじゃないですか。
いままでかたくなに観なかったものを、
すすめてた本人の横で観てるわけですから。
ところが、沖田とお梅さんの微妙な関係とか、
死を悟る芹沢とかを観ていると
どんどんどんどん引き込まれていって、
思わず横にいた妻に
「‥‥これ、沖田が斬るの?」と。
すると妻はニヤリとして、
「さあ、そこですわ!」みたいな。 |
糸井 |
わはははははは。 |
西本 |
でもそれ、わかりますわ。
ぼくも、最初に土方役の山本くんを観て、
「山本くん、いままでごめん!」
って思いましたもん。
「オレはきみをなめていた」と。
オレのなかで山本くんは
『ひとつ屋根の下で』の
車イスの弟役のままだったけど、
すごい役者だったんだなと。 |
永田 |
にしもっちゃんは
ハンパにドラマを観てるんだよな。 |
糸井 |
でも、ほっんと、いいんだよ。山本くん。 |
西本 |
いいですねえ。 |
糸井 |
あと、山南役の堺くん。 |
ふたり |
あの人、いい! |
糸井 |
ぼくはたまたま彼がゲストで出ている
NHKの番組を観たんだけどね、
いぃ〜こと言ってたのよぉ。
『新選組!』と、その出演者と、自分、
あるいは時代を語るかたちだったんだけど、
真剣で愛情のこもった、すばらしい
「ひとり淀川長治」状態だったですよ。
たとえば、彼は、副隊長の役をやっている
土方こと山本くんが、どれだけ近藤役の
香取くんを尊敬しているかってことを
「香取くんに対する気持ち」
っていう言い方をするわけ。
「土方が近藤に対する気持ちではなく?」
ってアナウンサーが問いかけても、
「それだけじゃないんですよ」って答えてて。
つまり、あのチーム全体の役割のなかで、
全員が「近藤勇」である「香取くん」を
愛情を持って見ているっていう話なんです。
そういうチームは、魅力的だよねえ。 |
西本 |
ほかの人もよかったですよ。
いちいち挙げてるときりがないけど、
中村勘太郎さんとか。 |
永田 |
あああ、あの人よかった!
最後のところの、
「おまえは水戸へ帰って
子どもたちに剣を教えろ!」
っていうところは泣きそうになった。
それを言われるほうの人も、
すいません、名前知らないんですけど、
すごくよかったです。 |
糸井 |
筒井道隆くんの松平もいいよね。 |
永田 |
あの、ほかの若者たちとは
ちょっと育ちの違う感じがあって。 |
糸井 |
そそそそそ! |
西本 |
ぐっさんもよかったし。 |
永田 |
山本太郎さんも光ってました。 |
糸井 |
全員がいちいち持ち味を出してるんですよ。 |
西本 |
しかもそれぞれ剣が強いっていうのがいい。 |
永田 |
あっ、それは思った。
全員に「剣が強い」という下地があるから、
「志」うんぬんの精神性だけなく肉体がある。
「こいつに尊敬されるこいつは、
よっぽどキレるだろうな」みたいなところが。 |
糸井 |
それは、みなもと太郎さんの
『風雲児たち』にもありましたよね。
ヒーローっていわれる人たちは
みんな剣が強いらしいんです。
そこはすごい説得力があるよね。
またここは母体が剣術道場ですからね。 |
西本 |
アスリートな感じがしますよね。 |
永田 |
香取さんが沖田たちに、
「‥‥強いぞ、敵は」って言うときの
ピリッとした感じとか、しびれましたね。 |
西本 |
実際、強かったし。 |
糸井 |
勝負の決め手の「瓢箪」は
三谷さんの見事な発明だよね。
本当は瓢箪じゃないし、
寝込みを襲われただけなんだろうけど、
「酒」を持ってきてるところがいい。
酒をぐいぐい呑んで
「酒を呑むとますますオレの刀はよくキレる」
なんていうふうに言わせることが、
芹沢鴨っていう人の大きさだけじゃなく
小ささも表現しているじゃないですか。
近藤勇よりも年も上だし、
経験も豊かだけど、
近藤より小さい人間に見せる表現なんですよ。
その象徴としての「瓢箪」で転ばせるんですよ。
それは三谷さんあっぱれですよ。
観てる側にも「弱さ」の表現が
伝わっているからこそ、観ていて、
なんともいえずハラハラするわけでしょ。 |
永田 |
そうですね。
「沖田がんばれ!」みたいな気持ちじゃなく。 |
糸井 |
つまり、時代を作ろうとしている側じゃなくて
そいつに弾き飛ばされた大きな石として
描かれているわけですよね。
また、芝居の作り方もうまいですよね。
土方たちを、芹沢が座って待ってたじゃない。
ものすごい周到にさ。
あのあたりうまいよね〜!
酒呑んではいるし、覚悟もしているけれど、
やっぱり本能的に生きたいっていうか
サムライとして万全を尽くすということがあるから
揺れ動いているわけですよね。
あれは三谷幸喜さんの笑いとシリアスの
自分のバランスそのものを表している気がする。
で、女が横にいるんですよね。 |
永田 |
王道好きのぼくとしては、あの、
「根を下ろさない男が、身を固めると
女に告げたとたんに死んでしまう」
っていう展開はグッときました。 |
西本 |
佐藤浩市さんも、鈴木京香さんも、
来週からいなくなっちゃうのが寂しい限りです。 |
糸井 |
たった1話観ただけのくせに(笑)。 |
西本 |
いや、でも、あの役者さんたちとは
「これから長いつき合いになるだろうな」
って感じがするんですよ。 |
糸井 |
‥‥いきなりなにを言ってるんだ? |
永田 |
「これから年末までよろしく」ってこと? |
西本 |
そうではなくて、ドラマっていうと
誰が主役級で、誰が名脇役でっていうのが、
だいたい、決まっているじゃないですか。
その役者勢力図が、この『新選組!』で
一回大きく塗り変わって、これからその意識で
10年くらい観るようになるんだろうなあ、
って感じがするんですよ。
「これからよろしく!」って感じの人が
いっぱいいるなって。 |
永田 |
ああ、なるほど。いままでは、
「あのCMに出てた人ね」って感じだったのが、
「土方歳三やってたあいつだ」ってなって
これから何年もいろんなとこで
観ていくってことね。 |
西本 |
うん。『ラストサムライ』までは
渡辺謙さんのことを
「独眼竜政宗」って呼んじゃう感じ。 |
糸井 |
つまり、オレがコント赤信号のことを
つい「ささにしき」って言ってしまう感じだ。 |
永田 |
ぼくは杏里さんを、
つい「『キャッツアイ』の人」
と呼んでしまいます。 |
糸井 |
まあ、ともかく、確認しますけれども、
これから観ていこうっていう気には
なっていただけたわけですね。 |
西本 |
ええ。 |
永田 |
この連載がなくても観ますよ。 |
糸井 |
言いますねえ(笑)。
先週の鼎談を思い出してくださいよ。
ぼくが『新選組!』を熱くすすめているときに、
あなたたちはどんな反応をしましたか? |
ふたり |
あれはオレらの反応のほうが正しい! |
糸井 |
(笑) |
西本 |
だってね、ほんと、ひどかったですからね。
記事だと、編集の都合上、
すべての話が終わってから糸井さんが
しゃべり出したようになってますけど、
開始早々、いきなり
『新選組!』の話でしたからね。 |
永田 |
びっくりしたよなあ(笑)。 |
西本 |
正直、オレも永田さんも
ダダ引きでしたからね。 |
糸井 |
でも、実際に観たらわかったろ?
オレだって我慢してたんだよ。
つまりあれだよ、ひとあし先に童貞を捨てた
高校生みたいなもんでさ、
もう、話したくってしかたないわけよ(笑)。 |
永田 |
「男子部」のやつらに(笑)。 |
西本 |
「すげーんだぜ!」と。 |
糸井 |
「こんなふうなんだぜ!」と。 |
西本 |
それを聞いて、
たまらずぼくはトイレに駆け込んだと。 |
ふたり |
ウンコしてただけじゃんかよ! |