糸井 |
毎日、まったく変わんないみたいですね、
タモリさんの日々っていうのは。 |
タモリ |
変わんないですね、ほんとに。
代わり映えしないって言ったら
私じゃないですかねぇ。 |
糸井 |
大昔に、ぼくはタモリさんと1度
雑誌で対談したことがあって。
その本が出てきたんで、
パラパラめくってみたんですけど、
ほとんど今言ってることと同じです(笑)。
すでに当時、
「どうあるべきでやってきたわけじゃないし、
この世界って、運だけだから。
俺自身、何も変わっていないんだけど、
すごく変わったようにいわれると戸惑う」
とか言ってた。変わらないと。 |
タモリ |
そうですね、何も変わってないですねぇ。 |
糸井 |
子どものときから? |
タモリ |
子どものときからそうですね。 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
ぼくの精神年齢がいちばん高かったのは、
4歳から5歳にかけて。
そんとき、俺はすごかったですね、やっぱり。 |
糸井 |
将来について考えたりしてたんですか? |
タモリ |
いや、あのね、ウチに、じいさんがいまして。
だいたいじいさんばあさん育ちなんですけど、
近所に、じいさんと同じぐらいの歳の
友だちがいるんですよ。
その人、でかい家に住んでるんですけども。
で、ウチに来てじいさんとこう喋ってたのを
後ろで聞いてたんですよ。
映画を観たらしいんですよ、その人が言うには。
「映画を観てて、映画の中で、
クジラを捕る場面があって、
クジラにモリを打って血が流れるのを見たとき、
映画は確かにゴムのクジラかもしれませんけど、
思わず、画面に向かって、両手を合わせました」
そう、じいさんの友だちが言ったときに、
言葉としては後で知るんですけども、
「偽善」ってものを嗅ぎとりまして……。 |
糸井 |
(笑)名前がついてない概念として? |
タモリ |
うん、ちゃんとわかった。
4歳、5歳の時に思ったんですよね。 |
糸井 |
油断ならないですね。 |
タモリ |
油断ならない。
さらにわたしは、
幼稚園に行けと言われて、
幼稚園ってどういうところだろうかと思ったんで、
子どもの足で歩いて、20分ぐらいですかね、
そこに行けといわれたんで、
半日、見学に行ったんです、外に。 |
糸井 |
うん。 |
タモリ |
外からこう、幼稚園を見たんです。
そしたら、
「♪ギンギンギラギラ 夕日が沈む」
っていうのをうたっていて……。
俺はああいうことはできないと。 |
糸井 |
ありゃ違うと。 |
タモリ |
あれが、なんであれが楽しいんだ。
それで、なんで
あれをやんなきゃいけないんだと。
で、親に、
「幼稚園は絶対に行きたくない」
「なんでだ?」
「見た。で、こんなことやってた。
俺はああいうこと、絶対にやりたくない」 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
ま、だからまあ、あの当時の親って、
いい加減なもんですね。
「じゃあ、いいや」ってことになった。
「ま、いいよ、おまえ、行かなくて」って。
でも、後から後悔するんですけど……。
まわりの子ども、全員行くでしょ?
やることがないんですよ。 |
糸井 |
(笑)ひとりぼっちですよね。 |
タモリ |
もう、朝飯終わったら途方にくれてましたね。 |
糸井 |
毎日、することなくて? |
タモリ |
うん(笑)。 |
糸井 |
その後、行くとか言わなかったんですか? |
タモリ |
それは言わなかったね。 |
糸井 |
それは意地っ張りなんですか? |
タモリ |
いやぁ、それでもやっぱり
ギンギンギラギラはやめようと。 |
|
(つづきます。) |