タモリ |
「泣き売」っていう詐欺、あったでしょう、昔。 |
糸井 |
ありました。万年筆のやつとか。
(万年筆工場が燃えた人が泣いてものを売る詐欺)
サクラがもう一人いて、
「え? なんだって?」
って、泣いてるやつのものを売るという。 |
タモリ |
あれ、俺、子どもの頃、2時間ぐらい見てました。 |
糸井 |
あれ、憧れでしたよね。 |
タモリ |
うん。 |
糸井 |
ぼく、学校休んで、
ああいうのについていったことがあるんですよね。
石を棒に結んで、斜めに立てて、
気合を入れると立つっていう芸があったです。 |
タモリ |
へぇー。 |
糸井 |
仕組みはぜんぜんわかんないんです。
結局売るのはなんだったかっていうと、
よくあるような、
レントゲン眼鏡とかだったと思うんですけど、
途中でやる芸は、おもしろい。
ずっと見てたら、あまりにも
ぼくの目が純だったんでしょうね。
「弟子にしてやるから」っていって。
商人宿みたいなとこで、いろんな
自慢話を聞かされて終わりだったんですけどね。
そこからどういうふうに風呂が覗けるか、とか。 |
タモリ |
(笑) |
糸井 |
そういう話を一通りしてくれて
おしまいだったんですけど。
そう言えば、学校の校門のところに、
いろんなものを売りに来たじゃないですか。 |
タモリ |
売りに来た、売りに来た。 |
糸井 |
あれが、思えば詐欺師のはじまりだと思うんですよ。 |
タモリ |
うん。ただ、
カミソリを置いて泣いているだけのオヤジがいる。 |
糸井 |
(笑) |
タモリ |
なんだろうな、この人は?と思うと、
ひとりのおやじが来て、訊くんですよね。 |
糸井 |
「どうしたんですか?」。 |
タモリ |
「なに泣いてんの? 泣いてるだけじゃわかんねぇ」。 |
糸井 |
「迷惑だから、このへんで泣いてないでくれ」。 |
タモリ |
うん。
「泣かないでくれ、お願いだから。
なに泣いてんだよ」
ほとんどそのヤツは、
こうやってうつむいて答えないんだけど、
「え? 倒産したの?」と(笑)。 |
糸井 |
そうなんだよ。
だからぼくなんか、子どものときだから、
やっぱり信じちゃってましたから。
あの、よく万年筆工場ってのは
火事になるんだなと思ってましたよ。 |
タモリ |
何週間か前に、まだやってましたよ、それ。
品川の駅でやってた。 |
糸井 |
(笑) |
|
(つづきます。) |