糸井 | 日本とアメリカとの関係は、これから ヨーロッパとアメリカの関係のように なっていくんでしょうか。 |
吉本 | いや、そこはよくわかんないですね。 つまり、なぜならば、 アメリカって国はすごいですからね。 おもてに出てこない部分ですごいんです。 あらゆる財政力、軍事力、産業力、 それを全部挙げて集中させて、 世界的な意味で制覇を遂げたいという願望、 もう一筋ですからね。 アメリカはイラクを征伐して、 中近東の小さい国を征伐して歩いて、 今度は東洋寄りのパキスタンみたいなところを 征伐しています。 今のところ、まだアメリカは 圧倒的な経済力と軍事力を持ってますから 「言うこと聞かないのはみんな聞かせる」 というやり方を強圧的に取ってますけど、 このまま修正しなければ、 それはそんなに長くつづかないと思います。 つまり、テロというのは捨て身です。 ひとり死ねば少なくとも何十人かは殺せると 思ってるわけだから、 アメリカは、それとやり合ってるわけです。 とことん背かれて、 途中でアメリカのほうがへばって、 「もうやめた」というふうになるかもしれない。 |
糸井 | その修正のひとつの舵取りは、 大統領選にもあらわれますか? |
吉本 | あらわれるかもしれないです。 でも、その修正をどうするかっていうのは それはもう簡単。 そんな遠くのほうを見なくても、 日本の民主党と自民党が どの程度和合的に協力するか、その度合いが アメリカの世界制覇が可能かどうかの 写しになります。 |
糸井 | 今度は自民党と民主党の力の度合いが、 アメリカとの関係を表すんですね。 |
吉本 | 自民党はもう アメリカ一点張りで行こうと思ってて、 そうすりゃ日本も生きていけるというふうに 思ってるわけです。 だけど、民主党は、 少なく見積もっても半分は 「ダメだったら気分だけでも独立しよう」 というふうに思ってますから、 その両方がどこまで和合するか、 協力するならなんで協力するかを見てると、 逆にアメリカの勢力がわかります。 |
糸井 | なるほど。 |
吉本 | アメリカの動きと、 自民党がどこでどうなるかということとは ほとんど合ってると思います。 あまり遠くのほうを見なくても大丈夫です。 それで正確に判断できると思います。 |
糸井 | 小泉さんという人は、アメリカが上げ潮のときに つき合った人だったんでしょうか。 とにかく勢いがありましたね。 |
吉本 | そうですね。 あれはやっぱり一種の気合いというか‥‥ |
糸井 | 気合い(笑)。 |
吉本 | あの気合はめずらしい気合でね。 最後のほうは、 自民党なんかぶち割ったってかまわないから、 郵政民営化をやると公言しちゃったわけです。 そこまでしたらやっぱり、そりゃたいていの、 健全なる市民社会の健全な人たちは、 それにくっついていきますよ。 その勢いが、ある意味にとっては大事だったのに、 次の安倍さんあたりの人たちが、 そういうことについて全然わかんない世代の 政治家だったんです。 進歩的な人から保守的な人、全部集めて考えて、 今生きてる政治家の中じゃ、 舛添さんって人を、 政治家らしい政治家ってのはこの人だけだよ、 と思ってました。 だけど、同時に どこまでつづくかな、とも思ってました。 つまりあの人は、いわゆる素人ですから、 強引に、いろんなことにかまわずやるわけです。 だけど、ああいうことはどこかで 玄人の自民党の政治家に必ず止められちゃう‥‥ まあ、もう止められましたね。 あれをもっとつづけてたら、 自民党は選挙したって勝ちだったでしょうね。 完全に勝ったと思いますけど、 止めちゃったですね。 |
糸井 | 体力を持つのはなかなか 難しいことですから。 |
吉本 | そうなんです。 やっぱりそこが弱いところです。 だから、旧来の自民党の体質で、 舛添さんの勢いを潰しちゃったですから。 |
糸井 | もしかしたら、政党としての寿命を 根本的に縮めることになったかもしれませんね。 |
吉本 | まぁ、そうだと思いますね。 (明日の最終回につづきます) |