ノリスケ |
ちょっと、相談にのってよ。
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ジョージ |
うん?
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ノリスケ |
ともだちの女の子なんだけどね、
ダンナが海外出張とか行って
買ってくるものがひどいんだって。
それから誕生日に
こっそり買ってくれたものが、
もう使えたもんじゃない。
口紅にしても、ひどい色を買ってくるとか、
えーと、ペンダントだと
ちょうちょの柄とかお花の柄とか、
あの、もう、とにかく男が買ってくる物って、
男だけが選ぶとダメなのよ、っていう話。
「どうしたらいいの?」
って言うんだけど。
女の子って、そういうときでも、
「わ、嬉しい!」って言うのかな?
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つねさん |
義理で言うんじゃなーい?
それがオトコをダメにしてるのかもよ。
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ジョージ |
基本的にあれだと思うよ。
男も女もプレゼント慣れしてないでしょう?
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ノリスケ |
してない!
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ジョージ |
プレゼント。ってどういう意味でしょう?
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ノリスケ |
プレゼンテーションのプレゼントっていうこと?
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ジョージ |
うん。自分の気持ちを伝えるの。
御礼状とかね、簡単なグリーティングカード。
それが一番のプレゼントだよね。
あるいはバースディカードとか。
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つねさん |
でも、逆にそういうのもやんないよね。
それがなくて、モノだけになってるよね。
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ノリスケ |
やんない。気持ちを伝える、
ということができないの。
あのね、そうそう、友だちでね、
奥さんが一回出てったことがあるんだけど。
それ、なぜかというと、結婚したとたんにね、
「あなたは私に感謝の気持ちを
一切表さなくなった」って言われたんだって。
ゴハンにしても「美味しかった、ありがとう」、
そういうちっちゃな感謝の言葉を、
前はいっぱい言ってくれてたのに、
全然言ってくれなくなったらしいの。
で、ダンナの方は、
それ言われて出ていかれたときに、
びっくりしたんだって。
なんでびっくりしたかっていうと、
夫婦っていうのは、そういうことを言わなくて
いい関係になったんだろう?
って思ってたんだって。
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ジョージ |
あ〜〜〜。
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ノリスケ |
結局、まあ、おさまったんだけど。
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ジョージ |
なるほどね。
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ノリスケ |
夫婦っていうのは、
暖かい愛情関係のあるはずなわけだから、
家庭では、そういうことをいちいち言わなくても
わかってるもんじゃないか、って
思い込んでたらしいの。
ばかよねえ、そんなわけないじゃないの。
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ジョージ |
プレゼントあげる機会って、どういう機会?
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つねさん |
なんかほら、その人に、
これあげれたらいいな、
っていうのがあったとき。
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ノリスケ |
たまたま見つけて、
あ、これいいな、きっと似合うよ、
って思うと、買う。
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つねさん |
そうだよね。
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ノリスケ |
この靴下いいな、とかさ。
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つねさん |
うん。で、それで相手がすごく気に入るかな?
と思う、そのことが、とても楽しいの。
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ノリスケ |
でもね、僕もね、最初、なかったよ、
そういう発想が。お金もなかったんだけど。
一緒に住み始めてしばらくして、
ちっちゃくお小言を言われたことがある。
そういう気持ちはないの? って(笑)。
ちっちゃいことでいいんだから、
そういうことをしてくれたほうが嬉しいよ、
って言われたの。靴下一足でいいんだよ、って。
それでハッとしたの。
クリスマスだからプレゼントあげましょう、
お年玉あげましょう、
誕生日プレゼント、っていうふうに、
思い込まされてきちゃったのかな。
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ジョージ |
義務にしちゃうんだよね、みんなね。
プレゼントっていうのは、
自分がその人のことを思っていて、
その思いを伝えれば相手が喜ぶだろうと思う
伝え方を考えるのが、プレゼントじゃない?
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ノリスケ |
そっか、うーん。
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ジョージ |
だから、相手を喜ばせるためにするのが
プレゼントなのに、んー……
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つねさん |
自分が満足するために、っていうこと?
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ジョージ |
そう。っていうかね、その人が喜ぶ顔を、
楽しみに何かあげるんでしょ?
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ノリスケ |
そこの想像力がないのかな?
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ジョージ |
だって誕生日だから、クリスマスだから、
物をあげなきゃいけないって思うんだったら、
商品券の束あげたほうがいいもの。
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ノリスケ |
そうだね。
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つねさん |
ああ、勝手に買って、みたいな。
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ジョージ |
そう。そうなんだよね。
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ノリスケ |
でさ、その、女性たちがさ、
彼の海外出張のおみやげはセンスがない、
こんな色の口紅、つけるわけないじゃない、
っていう裏側にはさ、
買ってこなかったら怒られる、
みたいなこともあるんじゃないの?
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つねさん |
あ、それはあるよね。
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ノリスケ |
でもさ、じゃあさ、
口紅の品番を指定して買ってくるのは……
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ジョージ |
それは「買いだし」ですっ!
闇市に芋買いに行くのといっしょ。
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つねさん |
フッフッフッフッフ。
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ノリスケ |
古い……
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ジョージ |
だって、あるよ、うちの会社の人も、
嫁さんにこれ買わなきゃいけないんだ、
娘はこれなんだ……そうするともう、
旅行のあいだじゅう、
ずっとそのことばっかり言ってんの。
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つねさん |
縛られちゃうわけね、それでね。
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ジョージ |
そう、あとね、レブロン系の口紅に
よくある話が、日本の品番とアメリカの品番が
違うんだよね。
もう、色が違うの。おんなじ品番なんだけど、
色が違ったりとかするの。
そうするとね、それがわかり始めると、今度は、
口紅の実物を持って海外に行さかれるの。
おじさんが自分のブリーフ・ケースの中に
口紅1本入れて、その口紅がもう、
ほとんど減ってね、チビて、凹んでるやつ。
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ノリスケ |
を、こう、こう、ブラシで……
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ジョージ |
そそそそ! 掻きだして使ってるようなやつ。
あれを持って、ニーマン・マーカスとかに
持ってってね、
「すいません、これとおんなじの下さい」
って言うの!
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つねさん |
ああ、辛いねー。
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ジョージ |
そう、もし飛行機のエアラインのチェックで、
ブリーフ・ケースちょっと開けて下さい、って、
口紅がポンって出たら、どうするの?
って思うよね。
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ノリスケ |
それは、買わせる女性の側にも、
想像力が足りないね。
自分の男がそんなことをしている姿。
それは、恥ずかしいよ。
恥ずかしい思いさせてるよ、っていう。
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ジョージ |
買いだし。
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ノリスケ |
じゃさ、上手にプレゼント買って来る
男を育てるには、どうしたらいいの?
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ジョージ |
あ〜。
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ノリスケ |
日ごろ、何か、たとえばさ、あれ好き、
これ好き、嫌い、とかさ、
言い続けて、教え込むしかない?
でも、「おねだり」しつづける女は醜いわ。
あの、男がね、女の子に、力を示したくって、
「何が欲しいんだ? 何でも買ってやるぞ」
っていう現場を、ついこないだ見たんだよ。
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ジョージ |
うちの父も、よくやるものぉっ。
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つねさん |
それって、マンションかい(笑)。
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ジョージ |
そ、マンションとかお店とか
言われちゃったりしてるよ。
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ノリスケ |
それ、桁が違うけどね(笑)。
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ジョージ |
でも、それとおんなじことだよね。
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ノリスケ |
いっしょだよね。
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つねさん |
まあね。それはそうだ。
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ノリスケ |
そーれは、ねぇ。お互いに良くない。
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ジョージ |
そうだよ。で、たとえば、
銀座のホステスのおネエちゃんたちが、
ルイ・ヴィトンとかね。高級なお店だと
エルメスのなんだらかんだら?
が欲しいのー、ってみんなにふれてまわって、
おんなじ型のぶんをいっぱい貰って、
質屋にどうとかこうとかって。
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ノリスケ |
汚い。
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ジョージ |
っていうのは、これはもう、
プレゼントじゃなくって、
おねだりと商売の道具なんだよね。
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ノリスケ |
うん、うん。
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ジョージ |
で、それとおんなじようなことを
素人の子がやっちゃったりなんかしてるのよ。
で、おねだりの結果としての
プレゼントっていうのは、これは、どゆのかな?
駆け引きの結果、獲得した「獲物」であって、
プレゼントではない。
僕、お金がなかったころ、ほしいものを手帳に
切り貼りしてたって話、したよね。
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ノリスケ |
うん。聞いた。
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ジョージ |
それで、その頃の彼が、
それを何気なくチェックしていて、
こっそりプレゼントしてくれたのは嬉しかった。
で、僕、その時にいちばん嬉しかったのは、
その「モノ」じゃないのよ。
あ、この人っていうのは、
僕のことをいっしょうけんめい
理解しようと思ってくれたんだ、
って思ったんだよね。だから、僕が好きなこと、
僕が欲しい物、行きたいところ、
とかっていうのを、やっぱり、一生懸命……
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ノリスケ |
考えてくれてたのね。
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ジョージ |
うん、考えてくれて。
その手がかりのひとつを発見したから、
それをプレゼントにしてくれたの。
だから、プレゼント下手の男っていうのは、
そういうことを、まだ手がかりとして
発見してない男なんだろうと思うんだよね、
まず第一にね。
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ノリスケ |
確かにね。だけれども、
その手がかりを発見するには、ヒントが必要で、
上手にヒントを出さないといけないと思うんだ。
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ジョージ |
だから、女側に問題があるんだよね。
あのね、僕らが、
普通のノンケのカップルと比べれば、
プレゼント上手なんだろうと思うんだよ?
で、その理由ってさ、おんなじ雑誌を読んで、
おんなじテレビ番組を観て、
おんなじところにいつも
買い物に行ってるからなの。
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ノリスケ |
あーっ! そうだ。行ってる、行ってる。
見てるもの。この人、こういうのが好きなんだ、
とかっていうのを。
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ジョージ |
で、おんなじところに買い物に行くと、
なんか、余分に、その商品の前に立ち止まったり
するのが、わかるんだよね。
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つねさん |
あるよね。
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ジョージ |
そうすると、あ、欲しいのかな? って思う。
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ノリスケ |
思う、思う。
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ジョージ |
そしたら、んー、じゃあ、今度の、
たとえばそれがクリスマスだったら、
買ってあげようかなー、って思う。
それで、ノンケの男と女って、
男がカー・グラフィック読んで、
女がクラッシィでしょう?
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ノリスケ |
そうだよねー(笑)。
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つねさん |
そうだねー。
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ジョージ |
永遠に接点ないもーん。さあ、どうすればいい?
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(つづきます)