ジョージ |
たとえば、毎日毎日、
べつに遠距離恋愛じゃないのに、
毎日会えるわけじゃなくって、
毎日1時間くらい電話で話をしている
2人がいたとしたらね、
女の子の方から、
レター・セットをプレゼントするっていうのは、
すごく素敵な出来事じゃない? |
つねさん |
ステキ。 |
ジョージ |
たまに私に手紙を書いて、
っていうことでしょ?
貰った男は、必死になって考えるよね。
電話で話せばそれでよかったと
思ってたことが…… |
ノリスケ |
これは、何かを伝え足りない、
って意味だよなって(笑)。 |
ジョージ |
自分の気持ちを手紙にするって、
どういうことなんだろう? って思うんだもん。 |
ノリスケ |
思う、思う。
こわいと思うかも知んないけど(笑)。 |
ジョージ |
爆弾みたいなもんだよね。 |
ノリスケ |
すごいよね。爆弾だよ。 |
つねさん |
そうだよね。 |
ジョージ |
その爆弾を、10個ぐらい上手に処理して
投げ返してくれる男っていうのは、最高だよね。 |
ノリスケ |
最高だよね。だから、結婚の意志を伝える、
っていうことにもなるよね。 |
つねさん |
なりかねないよね。 |
ジョージ |
そうだよね。僕、あれだもん、
大学んときに、すっごい豪放な女がいてね。 |
ノリスケ |
豪放な女ね。合法じゃなくってね(笑)。 |
ジョージ |
豪放磊落系の女。
も、うちの大学で5年やってて、
留学3年して帰ってきたんで、
かなりの年だったの。
んで、大昔の先輩の銀行員と、
結婚したくて仕方がなくって、付き合ってて。
で、すーごい男っぽい女なんだけど、
泣いてすがりつくような付き合いしてたの。 |
ノリスケ |
へーっ。 |
ジョージ |
で、ある日突然ね、男からプレゼント貰ってね。
それがハンカチだったんだよ。ね。 |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
半ダース分。 |
ノリスケ |
えっ!? |
ジョージ |
しかも、なんの飾りっ気もない。真っ白な。 |
ノリスケ |
しかも白!
それって、別れようって意志だよね。 |
つねさん |
ひえー、すごい。 |
ジョージ |
貰ったときに、
ガァチョーンって思ったんだけど、
いい、私は負けない、っつって。 |
ノリスケ |
私は、これを使わない。 |
ジョージ |
そのハンカチ全部に刺繍をして、
もう一回送り返したんだよ。 |
ノリスケ |
すっごーい! |
ジョージ |
その人はどうなったでしょう? |
つねさん |
結婚したの? |
ジョージ |
結婚してもらった。 |
ノリスケ |
合格したんだ。 |
ジョージ |
合格したんだよ。
でも、そのね、結婚式のときに、
そのエピソードを言って。 |
ノリスケ |
すっごいね、結婚式で、言ったんだ(笑)。 |
つねさん |
危険な二択だったんだ。 |
ジョージ |
そしたら、そういうつもりで贈ったんですか? って聞かれてね、
いや、別れたい一心で贈ったんだけど(笑)。
もう、テストする気も何もなかった、
別れたい別れたい、もう、
こんな女と一緒にいたら、おれは食い殺される。 |
つねさん |
と思って。 |
ジョージ |
と思って。だけど、その刺繍、
すーごい奇麗な刺繍だったんだって。
フランス刺繍だよ。ね。 |
つねさん |
で、こんなところがあるんだ…… |
ジョージ |
そう、こんなところがあるんだ、
ほんとに俺と別れたくないんだ、この女は、
って思ったら、何とかしてやろうと思って
結婚した、っていうのね。 |
つねさん |
そういうのって、可愛く見えるよね。 |
ジョージ |
でもね、結婚して2年目で
離婚したんだけどね(笑)。
でも、いいじゃない? そういうのも。 |
つねさん |
夢が見れて。 |
ノリスケ |
はぁーっ、それ、すごいなーっ。 |
つねさん |
それはもう、壮絶さんだよね(笑)。 |
ノリスケ |
そう、すごいよ、それ。
中島みゆきの歌詞のようだ(笑)。 |
つねさん |
ほんとだよ。ちょっと鳥肌立つよね。 |
ノリスケ |
現実って、そんなことがあるんだ。 |
ジョージ |
プレゼントって、真剣勝負なんだよね。
あげて終わりのもんじゃないんだよね。 |
つねさん |
そう考えると、適当にブローチあげとこう、
なんてのは、勝負しようとしてないわけね。 |
ジョージ |
んー、勝負を放棄してるよね。
たとえば、真剣勝負するのに、
やっぱり、勝負するいちばん最初に
しなきゃいけないのは、
戦いを有利に進めるための
道具を吟味するわけじゃない? |
ノリスケ |
砲身掃除したり、刃を磨いたり。 |
ジョージ |
だけど、たとえばティファニーのもんだとかを、
安直にプレゼントする人っていうのは、
真剣勝負を他人が選んでくれた
わけのわからない、
ありきたりの武器でもって戦いをするんだよね。
負けるに決まってるんだよね。 |
ノリスケ |
そうだよね。 |
つねさん |
だから、それこそ情報戦になるのよ。 |
ノリスケ |
そりゃそう。で、情報戦、
その人が間違ってるのがさ、
彼女を理解しようとするんじゃなくて、
彼女の年齢の女の子が、何を欲しいのかな?
っていうことまではリサーチしたんだよ。
たぶん、同僚のOLに聞くなり、
雑誌を立ち読みするなりして、
ティファニー買えば大丈夫かなー? みたいな。
でも、それは、彼女そのものではないの。 |
ジョージ |
そうだよ。で、たとえばね、もう、そんときに、
ティファニーのペンダントでもいいのかなー?
って思ったら、男は女の子をティファニーに
連れてけばいいんだよ。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
銀座の本店かなんかに連れてって、
グルグルグルグル回ってれば、
おんなじティファニーなんだけど、
食器だとかね、ペーパー・ウエイトだとかね。
そういうところで、足を止めるかも知れないの。 |
つねさん |
で、それを目ざとく見ないといけない。 |
ジョージ |
いっしょうけんめい見るの。
で、ティファニー連れてかれた
女の子っていうのは、あー、この人はたぶん、
ティファニーのリングかペンダントを
私にプレゼントしてくれるつもりなんだわ、
って思うんだよね。で、それはね、
いい意味でね、いい落胆の伏線だよ。。 |
ノリスケ |
ふんふんふん。 |
ジョージ |
で、たとえば、コーヒー・カップの前で
立ち止まったらば、
それをこっそり包んでもらって、
内緒でプレゼント持ってくんだよね。
で、ティファニーの、あのブルーの
ショッピング・バッグを見たときに、
ほらほら、あのペンダントが来たっ、
て思うわけじゃない? で、開けてみて、って。
で、開けたら、ペンダントじゃなくって、
コーヒー・カップが出てきたら、
ああ、この人は、私のことを
ほんとうに見ててくれたんだ、って思うよね。 |
ノリスケ |
意思表示になるよね。 |
ジョージ |
そういう、どゆんかな? やりとり? |
ノリスケ |
足りないんだー。 |
つねさん |
やっぱ、観察してないんだよ。
一緒にいるから、っていうだけで、
終わっちゃう、みたいな。 |
ジョージ |
“観察させベタ”もあるんだよ。
女の子は、何にでも、どゆのかな?
同じようなリアクションをとるの。
かわいいー、素敵ー、わー、かわいい…… |
ノリスケ |
あるあるあるある。ほんとに好きなのは
これです、っていうの、
わかんなくなっちゃうんだよね。 |
つねさん |
うん、確かにそういうのもある。 |
ノリスケ |
とりあえず、何でも演じちゃったりするからね。 |
つねさん |
でも、それって、じゃ、言う資格は、ない、
ということになっちゃうよね。 |
ノリスケ |
ってことは、意思表示ハッキリしなくちゃ
いけないんで、女の子もキツイことは
キツイんだよね。 |
つねさん |
うん。 |
ノリスケ |
私はこれは嫌いってことが、
嫌いって言葉使わなくっても、
ちゃんとわからせなきゃいけないから。 |
つねさん |
嫌いって言わなくてもいいと思うけど、
なんか、ね、これよりもこっちが好き、とかね。
物と言いようがあるから。 |
ジョージ |
そうだよね。
|
(つづきます)