ノリスケ |
老後のことを、僕はたぶん、
いちばん考えてないと思いますっ。
『婦人公論』読んで思った。 |
つねさん |
あらどうしたの、反省して。 |
ジョージ |
誰も考えてないんじゃないの? |
ノリスケ |
そんなことないはずよ。
「僕らを襲うのは容赦のない老後」って
言ったのは、あなただもの。 |
つねさん |
そっか。 |
ノリスケ |
老後は、男女関係なく、
パートナーがいるいないに関わらず、
仲のいい仲間で集まって暮らしたいねって
いう話も、前、してたじゃない。
自分の老後は自分でめんどう見たいと思いながら
お金をちゃんと貯めた人たちで集まって、
コーポラティブ・ハウスのようなホーム、
ケア付きのを一棟を、
まるごと買ったらどうだろうって話。
本気なんでしょう? ファンタジーなの? |
ジョージ |
うん、わりと本気だよね。
本気なんだけど、だ・け・ど、ん〜、
どうなんだろうな〜。
…老後。…老後。年を取るということ、ね。 |
ノリスケ |
ちょっとは(年)取った、よね? |
ジョージ |
うん、取ったよ〜。
僕は、カワイイ、カワイイ男の子だった時代から、
もう20年も経ったんだもん。
今もカワイイけどっ。 |
つねさん |
生意気ねえ。あなたって、
自分の価値を絶対にもってるのね。
相対じゃなくて。 |
ジョージ |
その、かわいくてかわいくて仕方がなかった、
その20年前と、おんなじ20年が経つと、
僕、60歳になるんだよ!
……老後って、いくつから老後って言うの? |
ノリスケ |
定年したら……ていうか、仕事をリタイアしたら。 |
つねさん |
もう、ぼくらの仕事って、どうなんだろう?
すごい線引きづらいとこってあるじゃない、
3人とも。 |
ノリスケ |
いわゆる「サラリーマン」ではないからね。
でも、ジョージさんは、経営者として、
ある意味リタイアするって線引きする日が
来るんじゃないの? |
ジョージ |
んー、そっかー。たぶんあれだね、
「新たなものを生産しなくなってから」が
老後なんだろうね。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
たとえば、働かなくなるから
老後を迎えるんではなくって、
収入がなくなるから老後になるんだよね。 |
ノリスケ |
ってことは、ちゃんと自分の生活費が、
資産の中から生まれてくように計画してる人は、
老後がおとずれない? |
ジョージ |
いやいや、それも老後だよ。うん、だって、
貯金が絶対増えないもの。これは老後だよ。 |
つねさん |
あ、じゃ俺、すでに老後かな? |
ジョージ |
それは、増やさないだけであって、
増えないわけではない。 |
つねさん |
(笑)あ〜れ、すいません。 |
ジョージ |
で、おんなじ生活をずーっと
維持しているのであれば、
働いて収入があるっていうことは、
貯金が増え続けることなんだよね。
それでも貯金が増えないのは、
自分の好きなことにお金を使って生きているから
貯金が増えないだけであって。
だけど年を取ったら、
年を取って仕事を辞めて?
老いていくということは、もう、ねえ?
自分の今までの蓄えで
生きていかないといけないのが
老後なんじゃないの? |
つねさん |
ん〜。 |
ジョージ |
で、それは、おそらく僕たちは、
そうなってみないと
絶対その時のことってわかんないよ。
失業したことある人いる? |
つねさん |
失業? リストラとか? |
ノリスケ |
会社を辞めたことはあるよ。
働いてない時期はあった。
でもリストラみたいにして
辞めたわけじゃないよ。 |
ジョージ |
来月の収入が無いかも知れないんだけど、
今日生きてかないといけない時って、どう思った? |
ノリスケ |
なんとかなるか、と思ってやってた。 |
ジョージ |
そうだよね〜。いつかもう一回
仕事ができるから、って思うからなんだよね。
でも、年を取ると、
次の仕事がなくなって辞めたまんまだよね。 |
つねさん |
そうだね。 |
ジョージ |
ね〜、すごいよね〜。なんかね〜。 |
つねさん |
老後とかって考えたことなかった。
60になった自分っていうのを
想像したくなかったっていうか、
想像したことないっていうか。
もう、そのぐらいになったら死んでもいいや、
みたいな。極論だけど。 |
ノリスケ |
60の知り合いがいないんで、具体的にね、
こういう60は、いいじゃない、
かっこいいじゃない、っていうような人がいない。
けど、かっこいい50はいるんだよ、まわりに。
そこまでは想像できる。
でも50って、ぜんぜん現役だものね。
老後のサンプルにはならないのよね。 |
ジョージ |
そっか、そっか。あのー、あれだよね、
会社経営してる人と、会社で働いている人の
いちばんの違いっていうのを、
一回考えたことがあってね。
でね、会社経営してる人ってね、
一生収入が無くならないと思ってるんだよ。
で、引退しても、会社から
お小遣いをくれるようなかたちにして
引退しようと思うから。 |
ノリスケ |
相談役とか。 |
つねさん |
そうそうそう、そうするとね、
ものすごく生き方が甘くなってくるの。
で、会社勤めしてる人っていうのは、
いつか収入がゼロになることを、
もうわかっているから、
収入がゼロになる日をスタートにした人生を
考えないといけないんだよね。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
で、それをたぶん、
昔の言葉では「老後」って言ったんだと思うんだ。
60で会社を辞めて給料を貰えなくなって、
65か70で死んでいった
昔の人たちっていうのは、
5年から10年くらいの老後じゃない?
だけど今は、現役で元気があって、
旅行もどんどん行けて車も運転できるのに、
収入が無くなってしまう人が
いっぱいいるんだよね。
で、それを老後って言っていいのか
どうかっていうのは、よくわかんないんだけど、
でも、老後なんだよね。昔風の考え方でいうとね。
で、ん−、どゆのかなー、
毎日毎日楽しく面白く生きていくことも
大切なんだけど、その、たまには、
いつか自分は収入がゼロになってしまって、
今までの蓄えを崩していくことで生きていく
新しい人生を迎えないといけないと思って
生きていくことは大切だよね。
で、おねえちゃまたちには、
これがいちばん欠けてるんだよね、
なんか知んないけど。 |
つねさん |
あ〜、確かに、欠けてるわ。 |
ノリスケ |
自分に欠けてるもの。
そろそろ変えたいなと思っては、いるのよ。 |
つねさん |
僕も。 |
ノリスケ |
ただ、そんなの別に、自分でえいやーと思って
変えないからさ。なんで変えないのかな?
って思うんだけど。可処分所得が多いから? |
つねさん |
うん、多い。 |
ノリスケ |
つまり、同世代で、同じ収入のある
友だちがいるとして、
そいつが結婚して子供がいる、
あるいは家のローンがあるとか、
いろんなこと考えると、
ぼくらは明らかに使えるお金は多いんだよね。 |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
ただ、それだけが問題じゃないんだよ、多分。
「人生のことを相談する相手」がいないから、
気付かないだけなんだよ。
で、結婚するっていうことは、夫婦二人でもって、
人生のことを相談するわけじゃない? |
つねさん |
そっか。 |
ジョージ |
毎日毎日相談するわけじゃないけど、
たとえば子供が一人生まれたら相談するんだよ。
この子を学校に出して、
一人前にするのにいくらかかるんだろう?
その間にいくら僕たちは稼げてるんだろう?
さっ引いたらいくら残るんだろう?
っていうことを、相談してるんだよ。 |
つねさん |
うんうん。 |
ジョージ |
だけど、ゲイ・カップルには、
そういう相談があんまりないんだよ。 |
つねさん |
確かにないね。 |
ジョージ |
きっかけがなくて。
それで、ゲイ・カップルだけじゃなくて、
もしかしたら、今のノンケの夫婦たち? |
ノリスケ |
ディンクス。 |
ジョージ |
友だち、同棲の延長線上で
結婚しちゃってる人たちっていうのは、
そういうきっかけはないのかも知れないよねー。 |
つねさん |
旅行できないから子供作らない、
というカップルを知ってるよ。 |
ノリスケ |
相談しないよね。僕も、夢物語のように、
ハワイに住むのも、いいね〜、
みたいなことは言ってみたりとかするけど(笑)。 |
ジョージ |
そうだよね。 |
ノリスケ |
でも、じゃあ、現実的に
ハワイに住むっていうことは、どういうこと?
っていうことを突き詰めて考えよう、
っていうふうには至らないの。
そのために今からいくらお金を貯めるんだとか、
グリーン・カードはどうやって取るんだとか、
不動産はどうするの? 税金どうするの?
向こうに行ってから生活はどうするの?
何を生き甲斐にして生きてくの?
みたいなことまで、もし本気だったら、
全部考えるだろう話なんだけどさ。
ただ、老後を考えてるふりをしたいがために、
つまり、ずっと、将来も一緒にいたいね、
っていうことを表示するために、
そういうことを言ってみたりしているだけなの。
それって、全部ファンタジー。実は。 |
ジョージ |
何で、ファンタジーなの? |
ノリスケ |
現実味が無さ過ぎる。 |
ジョージ |
なんで? |
ノリスケ |
最後にこうなりたいね、
っていう形、見えていないんだもの。
その日その日を楽しく生きていく、
っていうだけのものでしかないんだもの。
その延長でしか、ないんだもの。 |
つねさん |
でも、一緒に住みたい、っていうのは、
ファンタジーじゃないよね。 |
ジョージ |
うん… |
ノリスケ |
だって、わかんないじゃん。 |
つねさん |
わかんないけど。 |
ジョージ |
いや、わかんない理由は、明快だよ。
その夢が、幾らで買えるのか知らないからだよ。
だれも値段つけないんだもん、自分の夢に。 |
ノリスケ |
そっ(笑)、そうかも知んない。あ〜。
|
(つづきます)