ジョージ |
面白いなと思うのが、
定年退職を期に
離婚していく夫婦っているじゃない? |
ノリスケ |
ああ、いるねー。 |
つねさん |
そうだね、とくに奥さんが。 |
ジョージ |
あれ、結局、結婚生活は役に立つものだって
思ってるから、
役に立たなくって無駄になった瞬間に
終わりになるの。っていうか、
ダンナが無駄だったんだろうね(笑)。 |
つねさん |
ダンナの甲斐性が無くなった時点で、
私の役目はもう終わりです、って。 |
ノリスケ |
ああやってダンナを捨てた側の奥さんは、
そのあと幸せになるもんなのかな?
とても自主的な人生を選んでるように、
見えるよね。 |
つねさん |
小銭ためてマンション買って? |
ジョージ |
ん、でも、年取って、例えばね、
いつも別々に生活をしていて、
たまの休みを一緒に旅行行ったりするのは、
無駄な時間を使っているわけじゃないんだよね。
これは目標があって、旅行しましょうよって、
それに対して、堪えがたきを堪え
忍びがたきを忍んで、で、
旅行に行ったりとかする夫婦生活をしてたわけで。
で、あと、子供を育て上げるっていう
目標があったり、んー、何より、
亭主的には勤めあげるっていう目標があって。
そうすると目標が無くなると、
もう後は、それこそ、無目標?
無目標な人生って、無駄だよね。
だけど、無駄な時間に
ほとんど埋め尽くされたのが老後だから。
そうすると、普通に結婚して、
若いころから、二人して無駄な時間を使う
トレーニングをしていないと、
老後、急に無駄を突きつけられると
びっくりするだろうね。 |
ノリスケ |
そうだろうねー。 |
ジョージ |
例えば、例えばあれだよ、
海外のリゾート行くと、
外人の夫婦って、ほとんど一日中、
何にも喋らないで? だけど一緒にいて、
手つないで、別々の本読んで。 |
ノリスケ |
楽しそうだよね。 |
つねさん |
そうだよね、プール・サイドでね。 |
ジョージ |
どっちかがドボーンと入って泳いで?
で、その間、亭主、メシか何か食ってるんだけど。
バラバラなんだけど、
おんなじ時間を共有できてんの。 |
つねさん |
で、日本は、なに?
ダンナはゴルフ行って奥さん買い物、みたいな。 |
ジョージ |
で、若いアベックになると、
ずーーーっと一緒に、
ずーーーっとおんなじことしてるの。 |
つねさん |
あー、そうだね。 |
ジョージ |
も、どっちかがプールに入ったら、
片方も入ってきて、どっちかが出たら、
追いかけるように出てきて、
ずーーーっと一緒なの。 |
つねさん |
ちょっと、つまされるけど。…いたっ。 |
ノリスケ |
ふふん。それは若いから。
といいながら、ぼくも、そうなんだけど。ふふ。 |
ジョージ |
で、年取ってくると、もう、
夜しか顔合わせなかったりするの。 |
ノリスケ |
夜も一瞬でグーッと寝ちゃうからね(笑)。
ご飯ぐらいは一緒に食べるか。 |
ジョージ |
下手すると、お母さんと娘がおんなじ部屋に寝て、
お父さんと息子がおんなじ部屋に寝てるかも
知れないぐらいバラバラなの。
んで、あー、年取ってるけど仲がいいぞー、
っていうのは、オヤジとホステスの
接待旅行だったりしてるわけであって(笑)。 |
つねさん |
アッハハハ! |
ノリスケ |
夫婦じゃないんだね。 |
つねさん |
とか不倫とか? |
ジョージ |
ねー。 |
ノリスケ |
でも、それは、いいじゃない。 |
ジョージ |
いいんだけど……だから、どゆんかな?
「何をしにバリ島に行くんですか?」
って言われて、
「何をする必要があるんですか?
だって、二人で一緒に、
24時間いられることに価値があるのに、
それ以上何を求めるんですか?」
って平気で答えられるのは、老後の答えなんだよ。
「仕事辞めましたね、
子供も全部育て上げましたね、
じゃあ、なんの目的で一緒にいるんですか?」
って言われたときに、
「何で目的がいるんですか?
二人一緒にいるのが楽しいのに、
何でそれ以上のことを
あなたたちは望むんですか?」
って言えるか言えないかだよね。 |
つねさん |
おー、深いね! |
ノリスケ |
厳しい。 |
つねさん |
厳しくて深い… |
ジョージ |
厳しいけどね。そういうためには、
生活が安定してないと言えないんだよねー。 |
ノリスケ |
そうか、そういうことか。そこに行くのか。 |
ジョージ |
だって、蓄えがなかったら、
二人して稼がないと、
老後が迎えられないんだから。
あとね、健康も必要なんだよ。
「何で一緒にいるんですか?」
「私がケアしないと、
この人死んでしまうから」(笑)。
ぜーったい嫌でしょう? |
ノリスケ |
健康ね。死んじゃうもんね。そうだよね。 |
ジョージ |
ぜーったい嫌だよ。
それで、看病疲れの人が
首くくったりとかするんだよ。 |
ノリスケ |
そう。ホッとしたとたん、介護する人生が、
降ってきたりとかするもんね。 |
つねさん |
あーれはね、辛いと思う。 |
ジョージ |
ね。テイク・ケアとメディカル・ケアは
違うんだから。 |
ノリスケ |
うん、シモの世話しなきゃいけないんだもんねー。
ぼく、ときどき愛情表現としてさ、
「あなたのおむつ代はボクが稼ぐからね!」
って言うんだけどね。 |
ジョージ |
ねー。 |
ノリスケ |
ゲイでさ、素敵な老後を送っている先輩っている? |
ジョージ |
僕、知らなーい。知らないね。 |
ノリスケ |
年を取ったゲイはいっぱいいるのにね。
たまたま、付き合いがないだけなのかな? |
ジョージ |
ん、でも、楽しそーに、なんか、二人でね、
手に手をとって飲み屋に来る人たちはいるけど、
その人たちの「生活」はわかんない。 |
ノリスケ |
だよね。
同世代で、同居の形として「いいなあ」と思う、
そういうカップルは知っているけどね。 |
ジョージ |
ちょっと話がとぶんだけどさ、
この前、実家戻ったらね、マンションなんだけど
隣りの部屋が空く空かないの話しになって。
んで、結局買うのやめたの、隣の部屋。
つなげて広くすれば景色もよかったんだけど。
「残念だったね」って言ったら、うちの母、
「だって私たち死んだら、
あんたが住むんだもんね」って。
「ここに住むの? それとも売っ払って、
どっか別んとこに住むの?」
って言われて。
「ん、ここに住むのかなー?」
って言ったら、
「改装しなさいよね」
って。
「誰と一緒に住むのかわかんないけどさ」
って言われたときに、
この家を改装するとしたらどうするんだろう?
って思うとこから
明確な老後のイメージになったよ。 |
ノリスケ |
んー。 |
ジョージ |
だいたいね、キレイ好きなボクと、
だらしない……ま、汚い人とは言わないけど、
だらしないつねさんが一緒に住むっていうことは、
この人が、どう汚しても構わない一部屋
作んなきゃいけないんだな、とかってね?
思ったりとかするのが
具体的な老後のイメージで、
じゃあその改装費にいくらかかるんだろう?
とかって思ったんだよねー。 |
ノリスケ |
そっか。ちょっとうらやましい。
|
(つづきます)