ジョージ |
昔ね、昔、お金持ちの人と、
付き合いそうになったことがあるんだよ。
ちょっと。ね? その、ある人の紹介から。
香港系のなんか立派な会社かなんかの人が、
日本に来て、お見合いしたの。 |
ノリスケ |
お見合いっていうのがあるのよね。 |
ジョージ |
そ、お見合い。 |
つねさん |
パートナー探しで、
人を介して紹介してもらうことを
「お見合い」って言うのよね。 |
ノリスケ |
会わせてくれるんです、仲人さんがいて。 |
ジョージ |
そうそうそう。それでね、僕的には、
お見合いっていうのは、
自分をエレガントにさらけだす瞬間なの。 |
ノリスケ |
うん、そうだね、よそ行きでね。 |
ジョージ |
ね? で、何より楽しくないとダメでしょう? |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
んで、ま、とあるレストランを予約しましたー。
行きましたー。美味しいお店ですー。
相手は、ちょっと手を付けると、すぐ横に置いて、
ずーっとなんか、別の話をするの。
で、その話が車の話とか、
今度買おうと思ってるボートの話とかなのね。
一生懸命。でも、ご飯はどうでもいいの。 |
ノリスケ |
あらっ。せっかくの美味しいレストランなのに。 |
ジョージ |
それが、どうでもいいみたいなの。
冷めたパスタをそのまんま
返してしまうんだったらまだ、
失礼だけども許せるんだけど、
冷めてノビノビになって
ベロンベロンになったやつを、
最後にズルズルッてすするのよ?
すするのよ、すするのっ! |
ノリスケ |
いやー、香港の人? さすが(笑)。 |
ジョージ |
すするのよーっ。
かーっ、ぺっ、とはしなかったけど、
すするの。 |
ノリスケ |
おなじようなもんだね、そうなるとね。 |
ジョージ |
そー。 |
ノリスケ |
それは、全く違うよね(笑)。 |
ジョージ |
失礼でしょー?
バセロン・コンスタンチンの時計をしていても、
そんな男とは付き合いませんっ。 |
ノリスケ |
ダメですねー。 |
つねさん |
アハハハハ! |
ジョージ |
そういうほうが大切だと思わない? |
ノリスケ |
大切。 |
つねさん |
あ〜、そうね。 |
ノリスケ |
そうか。 |
ジョージ |
だって、そのうち、そのうち僕のお財布と
彼のお財布は一緒になるんだもん。 |
つねさん |
あ〜。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
そうでしょ? |
ノリスケ |
自分で、そんなものにお金を払わないな。
冷めてノビノビになったスパゲティ。 |
ジョージ |
そうそうそう。
で、なんで一緒になれるかっていうと、
彼が楽しみたいと思うものを、
僕も楽しみたいはずだから、
一緒にお金を出すから一緒になるわけじゃない? |
ノリスケ |
うん。 |
つねさん |
そうだね。 |
ジョージ |
ね? で、例えば、もし僕はその人と、
付き合ってたとしたら、彼はたぶん、
車を次から次へと買うわけでしょ?
僕、お金出してあげたって仕方がないもん。
じゃ、タイヤ一個買ってあげましょうか?
でも僕、タイヤ買いたいわけじゃないもん。 |
ノリスケ |
ないね(笑)。 |
ジョージ |
そうすると、永遠にお財布が
一緒にならないんだよ。 |
つねさん |
あー、そっかそっかー。あ、面白いね、
それね、考え方が。 |
ジョージ |
で、みんな、どゆんかな?
例えば夫婦なんかでね、
嫁さんが全部サイフ握ってたりとかするでしょ? |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
握ってても構わないから、
ひとりが握るんだったら、
稼いでくれてる人とおんなじ趣味を持って、
おんなじ楽しみ持って、
おんなじとこにお金を使うんだったら、
ひとりのサイフでいいけど、
今、バラバラなわけじゃん? |
ノリスケ |
うん。ひとつずつの預金口座、
ひとつずつのクレジットカードで。 |
つねさん |
は〜。 |
ジョージ |
そうしたら、なんか変な話だよね。 |
ノリスケ |
そうだね。 |
つねさん |
そうだねぇ。 |
ジョージ |
みんなお財布をひとつにするのが
結婚だと思ってるけど、
お財布がバラバラであるのがおかしいぐらいに
二人が一緒になればいいんだもん。
それが逆になっちゃうんだよね。
そう。で、例えば、その、今日、
晩ご飯作りましょうとかって、
お買い物に行くでしょ?
伊勢丹に行くじゃない? 伊勢丹の地下に。
そうするとね、やっぱりね、バカだから、
お豆腐が5種類並んでいたら、
一番高いのを買っちゃうの(笑)。僕。 |
つねさん |
この子はっ! |
ノリスケ |
ハハハ、特選・550円のでしょ? |
ジョージ |
ごめんなさいっ。一番高いの買っちゃうの、
ごめんなさい……とは思わないけど、
これがいいのよっ、て買っちゃうの。 |
つねさん |
ハハハハ。 |
ノリスケ |
私もです(笑)。 |
ジョージ |
で、そういうのを消防士さんが見てたら、
やめなさいムダ遣いは、って。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
ジョージ |
言うの。でも、ウチのこの人はね、
ああ、またバカみたいに一番高いの買ってる、
って思って、見逃してくれるの。 |
ノリスケ |
見逃すの、大事。 |
ジョージ |
で、食べて、あ、そっか、これで550円なんだ。
大したことないな、って
二人とも思うんだけど(笑)。 |
つねさん |
ハハハハハ! |
ノリスケ |
豆腐は豆腐だなってね。 |
ジョージ |
しかも、しかもその豆腐を
下手するとマーボ豆腐かなんかに(笑)。 |
つねさん |
ワハハハハハハハ、そうそうそう。 |
ジョージ |
バカなことやってる〜! |
ノリスケ |
それ、いいじゃない? そうなんだよね、
それ、いいじゃないって思わないと、
一緒のお財布になんないんだよねー。
|
(つづきます)