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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

When I'm sixty-four その9
とりあえず一千万ね。


ノリスケ 貯金、できなーい。
ジョージ いや、月25万っていうのは、
極端な話であってね。
目標はね、月収の1割をね、
絶えず絶えず、ずーっと、
なかったものと思って、貯金することね。
つねさん 俺、預けよっかな? ジョージ銀行に。
運用してもらうの。
でもイヤだよね。なんか、そのうち、
ふっと消えそうな気がする。
ジョージ んー、違う違う。
あのね、お金、お金を扱う
鉄則っていうのがあって、
「貧乏人の金は預かるな」っていうの。
ノリスケ ハハハハハ!
つねさん あ〜ん(苦)。わかりました……。
ジョージ 貧乏な人からお金を預かると、
それを増やしてあげなきゃいけないと思って、
増やしてあげなきゃいけないと思うと
ゼロになっちゃうんだよ。
で、金持ちの人から金を預かると、
なくなっても大丈夫と思うから、
それは倍になるんだよ。
つねさん わかるけどね。
ジョージ そうなんだよ。
だから、例えば、んと、年収400万の人が、
1年に1割残すっていうことは
40万残すわけでしょ?
だけど、年収の1割残すのは、
けっこうキツイんだよ。
税金であるとかっていうのが、
実はそこから引かれてるはずだから、
1割残すのは厳しいの。
でも、毎年40万円残ったら、
10年でとりあえず400万でしょ?
ノリスケ うんうん。
ジョージ そうすると、1千万という単位が、
近いものになるの。で、どゆんかな?
今日明日の楽しみではなくって、
ある程度計画をもって
何かをしようと思ったときの、
最小の単位は1千万なの。
ノリスケ ふーん。
ジョージ だから、まず1千万。
ノリスケ 目標?
ジョージ 目標だね。
1千万あったらマンションが買えるんだよ。
頭金になって。4、5百万の頭金では、
バカみたいなマンションしか買えないんだよ。
つねさん (ノリスケさんに)いくらある?
ノリスケ (小声で)ゼロ。使い切り。
ジョージ 僕、お金はいっぱい持ってるけど、
ほとんど会社の株だとか、
設備投資だとかに消えてるから。
つねさん ふ〜ん。
ジョージ 貯金そのものは、
3千万ぐらいしかないんじゃないかな?
ノリスケ 終わりにしましょう(笑)。
ジョージ 3千万じゃ、僕とつねさん2人は、
5年ぐらいしか生きてけないんだよ。
5年、くらいしか、生きてけないんだよ?
つねさん 3千万って、現実的すぎるお金だね。
そう言われてみると。
ノリスケ そうだねー。
つねさん 僕、180ぐらい(笑)。知らないけど。
ノリスケ あるだけ偉い。だって、
いつでも使えるようにして、ま、50万とかさ。
ジョージ で、ウチの妹がね、結婚するときにね、
やっぱり財産分与とか
色んなことがあるでしょ?
ノリスケ あー。
ジョージ で、どうしようか? って
ウチのおふくろに聞かれたときに、
「私たちはいいの」って。
「女の子で、良い教育をつけてくれて、
 良いところにお嫁に出してくれれば、
 それが一番の財産分与だって思うから、
 あんまり考えなくていいです」と。
ノリスケ うんうん。
ジョージ 「でも、お兄ちゃんは、あの通りでしょ?」
あの通りって、よくわかんないんだけどさ、
そのまんま、言葉、お伝えしますね。
「あの通り派手好きで、負けん気が強くって、
 計画性が無くって、衝動買いが大好きで、
 おそらく一生結婚しないだろうし、
 もう、ほっといたら、
 裏路地でのたれ死にして
 死んでもおかしくないような
 だらしのない人だから、家も貯金も、
 ぜんぶお兄さんの名義で残してあげて」
って言われたの。そういうふうに言われた僕って、
すごい幸せなんだか不幸せなんだか、
わかんなーい。
つねさん ワハハハハハハハ!! …すごいね、なんかね。
ノリスケ その、親が残してくれるはず、ていうのって、
計算に入れといていいの?
ジョージ 入れちゃダメ。
ノリスケ ダメだよね。
親が病気したら終わりだからねー。
ジョージ そう。これが自分のものになるんだって
思った瞬間にね、例えば、例えば、ノリスケ君が、
自分の親の家がもらえると思ったら、
そん次から家に帰った瞬間に、
あんな柱に釘打ってとか。
つねさん あ〜。
ノリスケ ハハハハハ。
ジョージ で、この台所は使い勝手が悪いから、
こうこうこういうふうに改装してやろうか?
っていうふうにしか見えなくなってくるんだよ。
つねさん うん。
ノリスケ 僕はもし親が病気して、
どうしようもなくなったら
家を売るしかないだろうな、と思ってる。
親が全部使い切っちゃうぶんには、
ぜーんぜん構わないと思うの。
ジョージ うん、そうだよ。
ノリスケ 親も、あんたに残せるものはないって
言ってるしね。
つねさん 僕だって、一時期やっぱり
オヤジが弱ってるときに、財産どうしよっか、
ってことになって。田舎なんだけど、ウチ、
持ち家なのね。で、土地もちょっとあるんだよ。
でも、俺、ほとんど放棄してるの。
例えば、どっちか倒れたとき、実家に戻って
親の面倒見なくちゃいけない、っていうのが、
カミング・アウトしてないから
辛かったりとかするじゃない? そしたら、
ちょうど、妹の方がやるとかって言ってくれたの。
じゃあ、それやるんだったら、
ぼくは財産分与はいらないよ、
ってことになってる。
知り合いで、結局ほら、財産分与で?
親が残した会社がどうのとかで、
遺産がどうのとかっていう話聞くけど、
なんか、そんなんで、いがみ合うのって、
すごい、辛いよなー。
ノリスケ ウチのパートナー、それで放棄したよ。
1億円くらい放棄した。
つねさん あと、ウチの親が1回、それ放棄して、
後で、ブリブリ言ってたの見てるからね。
ジョージ そういう面は、すっごく無関心であって
いいんだと思うんだよ。
親がいくら持ってるんだろうとか、
いくら貯えてるんだろうとかね。
ノリスケ うん、知りゃしない。
つねさん 知らない知らない。
ジョージ 逆に、その、いま付き合ってるこいつが、
いくら貯えてるんだろう? とかっていうのは、
関心を持たないで済むのが幸せじゃない?
(おわり)

2002-01-17-THU
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