ジョージ |
よくないのは、
「まわりがあげてるから私もあげなきゃ」。
たとえば、まわりがみんなあげてるんだったら、
私はあげない、ぐらいの、
気概があってもいいしね。
でも、男の立場にしてみたら、
自分の嫌いなものでも、
貰わないよりは貰ったほうが嬉しいんだよ。
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つねさん |
まあ、そうだ。
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ジョージ |
で、街中がバレンタイン・デーって
騒いでるのに、自分の彼女が
チョコレートのひとつもくれなかった自分は、
ものすごく切ないんだよね。そしたらね・・・
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つねさん |
愛想でもいいから、って?
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ジョージ |
そう。
男の期待に応えることは
しなきゃいけないと思う。
だけど、普通の人が応えるように応えていては、
自分は伝わらないわけで。
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ノリスケ |
そうかなあ。
それは、チョコだけで伝えようとするからだよ。
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ジョージ |
でもね、自分が好きな男の人を、
もう精いっぱい、
自分がチョコレートで喜ばせてあげる、
と思ってみたら?
けっこういろんなプレゼントの
仕方はあると思うよ。
それこそ、僕だったらあれだな、
バレンタイン・デーに
チョコレートを一緒に買いに行くの。
男の子と一緒に。手つないで。
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ノリスケ |
それ、素敵だね〜。
してみたいなあ。できないけど……。
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ジョージ |
表参道かなんかに行くんだよ。
んで、メゾン・ド・ショコラに入ってって……
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つねさん |
そこ、好きだね。
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ジョージ |
今日バレンタイン・デーだから、
チョコレート買いに来たの〜、って言いながら。
で、一口試食してね・・・
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ノリスケ |
臆面もなく! それが素敵!
恋する二人は、バカになってるのよね。
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ジョージ |
これが僕の気持ち、
とかって言いながら・・・
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ノリスケ |
いいね〜!
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ジョージ |
で、メゾン・ド・ショコラの
反対側のアニベルセールのカフェでもって、
ホット・チョコレートを飲むんだよ。
素晴しくない?
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ノリスケ |
石投げられてもいい。
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ジョージ |
今年はたぶん、これ、使えますっ。
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ノリスケ |
僕は使えない。でも、かわいいよね。
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つねさん |
かわいい?
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ノリスケ |
うん、かわいい。
そうしてる女の子はとてもかわいいと思う。
すごくおもてなししてくれてる感じするよね、
男の子はね。
ただ、そういうのを「けっ……」と思うような
超・男性性にあふれた男には通じないけどね。
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ジョージ |
さり気なさが必要でね。
ダメなのは、たとえば
「バレンタイン・デーだから、
私のお家に来て」って行ったら、
鴨のチョコレート・ソースがけがあったり、
チョコレート・ケーキの
ものすごく大っきいのが焼いてあると、
引くよね。
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つねさん |
ハッハッハッハ! 重たいよね。
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ジョージ |
あ、この女は、暴走する女なんだ。
で、男的にはね、たとえば、
たとえばさっき言った、
キス・チョコの袋を持ってきて、
あなたと一緒に飲みたいの、って、
キス・チョコをお皿にのっけて出してくる女は、
あ、こういう可愛いことを
ずーっと考えてくれてたんだ、
って思うんだよ。それで、ほっとするの。
だけど、その、部屋に行って、
チョコレート・ケーキ焼いてあると、
ああ、この女は
このチョコレート・ケーキ焼きながら、
俺のことをずっと思っていたのか、
怖いぞ、ちょっとこれはつらいぞ、って。
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つねさん |
怨念こもってるわけね。
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ジョージ |
男は一切れしか食えないわけでしょ?
で、食えなくて残ったら、
この女はどうするんだろう?
これ、みんなムシャムシャ食うのかい?
で、食いながら、
あなたが好き好きって思いながら
食っちゃうのか? って思うとすると、
これは暴走なんだよね。
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つねさん |
あんた、あるの? そういうの。
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ジョージ |
うん、なんか今、景色が思い浮かんだんだよ。
景色的にね、
たとえば冬の海辺に立ってるわけだよ、男が。
風が吹いてきます、バーッと。
コートがビタビタビタビタビェーーッ!!
ってたなびいてて。
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つねさん |
(笑)。
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ジョージ |
向こう側から女が、
デァーーッと走ってくるんだよ。
「あなたーっ!」って言いながら、
デァーーッ! と走ってきて、
途中でなんか、つっかえながら、
ハイヒールを、こうやって脱いで、
両手持ってですよ、バァーンって。
バァーンってですよ、
こうやって飛び込んで来る女は、可愛い。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
ね? だけど、デァーッと走りながら、
ブヮーーッと走り去って通り抜けて行く女が、
もしいたとしたらば、
うゎーーっ、この女、こえーぞーって。
自分んちで作ったチョコレート・ケーキは、
「走り抜ける女」です。
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ノリスケ |
走り抜ける女。
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つねさん |
おぁーっ。ハハハッ、恐ろしい。
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ジョージ |
愛情を越えた
怨念に近い重たさがあるね。
たぶん、愛情っていうのは、
それを提示されたときに、
断れる程度の愛情がいいんだろうね。
自分んちにウィスキーと一緒に持ってきた
キス・チョコっていうのは、
出てきて1粒でいいんだよ。
1粒食べて、あ、やっぱり俺、
チョコレート苦手だ、って男は言えるの。
言うんだけど、それは、
お前が嫌いなんじゃなくて、
チョコレートが嫌いなだけなの。
でも、嬉しかったよ、
今日はバレンタイン・デーだったから、
一緒に飲もう、になるんだけど、
焼かれたチョコレート・ケーキは、
俺、チョコレート・ケーキ苦手なんだよ、
って言えないんだよ。
ゴキブリホイホイにかかった
ゴキブリみたいなもんだよね。
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つねさん |
あーの、笑い飛ばせないとダメなんだよね。
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ジョージ |
笑えない。で、そういう愛情はね、
内緒でしちゃダメだね。
もし、そういう愛情を示したかったら、
言うべきだね。
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ノリスケ |
どういうふうに?
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ジョージ |
「今度のバレンタイン・デー、
チョコレート作ってあげようか?
チョコレート・ケーキ焼こうか?」
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ノリスケ |
あ、それは可愛いね。
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ジョージ |
そしたらさらっと言えるじゃない。
「あ、ごめん、俺、
チョコレート・ケーキ苦手だから」
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つねさん |
そっかー。エーーッて泣かないのね(笑)。
せっかくーって。
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ノリスケ |
「せっかく」はダメだな。
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ジョージ |
エーッて、こっから先は個別責任ですから。
自分で考えて下さいね。
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つねさん |
そうね。ま、もちろん
相手が好きだったらの話だけどね。
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ジョージ |
そうそうそう。
「わ、いいね、いいね、いいね」って。
焼いてくれたら、
「せっかくだから友だち集めてパーティしようか?」
って、それはそれで素敵な話なんだよ。
バレンタイン・チョコレート・パーティで、
自分の女が焼いてくれたケーキを
友だちと一緒に分け合うことが出きる男っちゃ、
これ、ニ重三重の喜びだよね。
も、ホワイト・デーは期待できるわね。
男にとっては、
バレンタイン・デーに対する
ホワイト・デーっていうのは、
どんな親しい中にも、
愛情をもっておもてなしされたことに関しては、
必ずお返しをしなくてはいけないという、
人間としての礼儀を、
再認識する日と思えばいいかな。
……あんたなんかくれたっけ?
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つねさん |
な〜んにも。
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ジョージ |
ま、肩たたき券でもいいや。
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(つづきます)