ジョージ |
大阪の子と遠距離恋愛やってたときに、
大阪の飲み屋さんで会って、
ものにしたくて仕方がなかったの。 |
ノリスケ |
で、どういうラブレターを書いたの? |
ジョージ |
あのときはね、
僕も言葉で仕事をしている人だけど、
彼はコピーライターで、
やっぱり言葉で仕事をしている人なんだよ。
で、もう、彼と話をするということは、
僕を見るようなんだよね。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
ジョージ |
んで、んと、そういう人間に
出会ってしまったことに対する怖れはあるんだよ。
ものすごくね。だけどー、なんか、要はね、
そんときは、自分をもっと好きになりたいから、
彼のことを好きになりたいと思ったの。
それは春先だったんだよ。 |
つねさん |
発情期に向けて磨きたかったのね、自分を(笑)。 |
ジョージ |
ま、そんな感じだよ。
それでね、なんかね、僕ね、
締めくくりの言葉に命を賭けた
手紙だったんだと思うんだなー。
あのね、当然、大阪で会ってるから
東京に戻るのに新幹線に乗ったんだけれども、
気がついたら東京駅に着いてたんだよ。
東京駅のホームに降りたときに、
ああそうか、僕はやっと、
自分の場所に戻ったんだ、ってわかった。
「今まで新幹線の中にいた自分っていうのは、
君の傍らに、まだいたんだな」って。 |
つねさん |
って書いて送ったんだ。 |
ジョージ |
「時間というのは、
等しく均等に刻んでいる
機械じかけのもののように思っていたけれども、
飴細工のように
グニャグニャ形と長さを変えながら、
自由奔放に場所を変わって、
昨日があさって、おとといが今日
顔を出してくるようなものなのかな」
という、ことをね、書いた。
「でも、でもいけない、
もう街が日常に戻っていて、
僕はこれから仕事をしないといけない。
気持ちを言葉に変えて、
あとは君に任せるから」
っていうのを送ったんだよ。 |
ノリスケ |
は〜。・・・それは、
プロポーズ的な言葉だよね。 |
ジョージ |
んー、彼からやってきた手紙もね、
なかなかゴージャスだったよね。 |
ノリスケ |
どういうふうに? |
ジョージ |
んー、んとね、
「人を言葉で屈服させるのが自分の仕事である自分は、
ながらく自分の言葉で屈服させられた人間は、
心豊かに幸せになるであろうと誤解をしていた。
なぜならば、あなたの手紙は私を屈服させたけれど
屈服させられた私は、
心豊かに幸せになったわけではなく
新たな不安をかき立てられる結果となった」
というのが来たの。 |
ノリスケ |
その返事は? |
ジョージ |
「もうここまできたらば
何を言っても仕方がないのでしょう。
再び君に会わなくては、
自分がどこにいるのか
わからなくなってしまった僕がここにいます」
って、出したら・・・ |
ノリスケ |
すっごーい。 |
ジョージ |
その次の週末に・・・ |
つねさん |
来たの? |
ジョージ |
あいつが来たんだよ。 |
つねさん |
おそろしい(笑)。 |
ノリスケ |
ふーん。(うっとり)。で? |
ジョージ |
……45日間くらいで、
華やかに燃え尽きたよ、ふたりで。 |
ノリスケ |
なんで? 遠距離だから、
もっと続きそうなもんだよね。
会えないんだから。 |
つねさん |
そうだよね。 |
ジョージ |
だってー、わかるんだもん。
わかりすぎちゃう。
次はこう来るんだろうなって。 |
つねさん |
あ、お互いが。 |
ジョージ |
うん。で、もうその最初のやりとりが、
予定調和でしょう? |
つねさん |
まあ、そうね。 |
ジョージ |
で、僕が投げたものを正しく受け取って。 |
ノリスケ |
脚本みたいだね。 |
ジョージ |
そう。
僕が、あの、二丁目かなんかで、
だれかたらそうと思って、
飲んで自問自答していることを、
もう1人の自分とやりあっているようなもんで。
楽しくも何ともないんだよ。 |
ノリスケ |
似すぎていたんだよね。 |
つねさん |
そっかー。 |
ジョージ |
ぜーんぜん。でも、あれだよ、
肝要なところは
人の心を動かそうとするのがラブレターでしょ? |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
で、何でもそうだけど、
人の心を動かそうと思ったら、
直接相手を動かそうとしちゃいけないのよ。
相手が動くより前に、
自分が動かないといけないんだよね。
で、あなたを見ていると
平静でいられなくなる自分、っていうのが、
必ずいるの。もう何年間も付き合っているのに、
別々になって、それぞれのウチに戻って、
一息ついて相手のことを考えるのが、
いちばん平静を保って
相手のことを考えられるんだよね。
あ、ウチの人なにをやってるのかしらーとか。
だけど、一緒にいると、
平静でいられないんだもん。 |
ノリスケ |
うーん? |
ジョージ |
だって、一緒にいれば絶対この人は、ね?
昼寝しているわけでもなし、
悪さしているわけでもなし、
ボォーっとしているわけでもないっていうのも、
わかるんだけれど・・・ |
つねさん |
昼寝してるんじゃないかとか、
悪さしてるんじゃないかとか、
ボーッとしてるんじゃないかと
思ってるわけね(笑)。 |
ジョージ |
昼寝してるんだろうなーとかって。 |
つねさん |
悪さは、あんまりしないけどね。 |
ジョージ |
思うよね。でも、一緒にいるとね、
なんかね、なんか、どゆのかな?
僕はこんなに好きなのに、
この人も僕のことが好きなはずなのに、
不思議と100%心がつながってるわけじゃないよね。
伝えきれない部分って、あるんだと思うよ。 |
つねさん |
だから、バレンタインが、あるのかな?
そういうことを埋めることが、
チョコレートひとつでできるんだったら、
そんなに簡単なことはないものね。
|
(つづきます)