ノリスケ |
うちの会社の女の子がね、
ぜひジョージさんにね、
フェロモンの出し方を訊いてきてくれって。 |
ジョージ |
そんなにフェロモン出てないわよ。 |
ノリスケ |
そーお?
麻布十番で去年の夏に、
歩いてるジョージさん見た人がね、
もうね、普通に歩いてるのに、
フェロモン出てました、って
教えてくれたわよ。 |
ジョージ |
ふふ。でもね、昔はもーっと出・て・た。 |
ノリスケ |
それって、どういうふうに? |
ジョージ |
あ、自慢話してい〜い? |
ノリスケ |
いいよっ! |
ジョージ |
あのね、ほら、
こういう特殊な趣味を持っている
僕たちっていうのは、
出会いの場を作るのって大変でしょう? |
ノリスケ |
うん、大変だね。
偶然って、そんなに起こらないもの。
奇跡みたいなものよね、
いわゆる男女の出会いみたいなことって。 |
ジョージ |
あの、知らない方のために申しますと、
ハッテン場っていうのがございまして、
あの、そういう嗜好を持った人たちだけが集まる。 |
ノリスケ |
いわゆる、閉ざされた空間なのよね。 |
ジョージ |
そうそうそう。
バーがあったりお風呂があったり、
お部屋があったりっていうのが、あるんです。 |
つねさん |
そういうところで相手を見つけるのよね。 |
ジョージ |
でも! 昔の私、街を歩くと、ん〜、例えばね、
普通に商店街歩いてたら、
男に声をかけられたとか! |
ノリスケ |
普通の商店街で(笑)。 |
ジョージ |
そう。あるいは、
普通の本屋さんで雑誌を読んでたら… |
ノリスケ |
その、ホモが集まるとか、
そういうのじゃなくてね。 |
ジョージ |
なくて。しかも、しかも読んでたのは
「薔薇族」じゃなくて、
普通に男の子の雑誌を読んでいたのに、
横に男の人が立って、お尻を触ってきたりとか。
あるいは、あの、ドトール・コーヒーで
お茶を飲んでたら声がかかったりとか。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
ジョージ |
すごかったんですっ。 |
ノリスケ |
それは、いくつくらいのとき? |
ジョージ |
32、3。今から約10年ぐらい前。
あぅ! お歳がばれちゃう、みたいな感じ? |
つねさん |
ワハハハハ。 |
ジョージ |
それで、そのころそういう話をすると、
そうよね、あんたって歩くハッテン場だから、
って言われたことが、あるの。 |
ノリスケ |
そのころの自分て、分析できる? |
ジョージ |
ん〜、あのね、それこそ、
僕が存在している半径500メートルが
ハッテン場と化すような? |
ノリスケ |
ワハハハハハハ!
そのエリアに近づいたホモは
みんな発情しちゃうのぉ?
そんなことって! |
ジョージ |
でね、わかるんだよ、それが。 |
つねさん |
やなオンナ! |
ジョージ |
それで、それはね、
いい男とかどうとかこうとかじゃなくって、
要は、僕はホモよ、っていうのが
一目でわかったんだよ。 |
ノリスケ |
わかる。う〜ん。いまも、わかりやすいけど。 |
ジョージ |
しかも、僕は、当時は、
デブが好きじゃなかったから、
マッチョの頃よっ。 |
つねさん |
マ、マッチョの頃ね。
いまとはぜんぜん違う頃ね。 |
ジョージ |
体を鍛えて、ハワイが大好きで、
年がら年じゅう色が黒かったりなんかして。
誤解を怖れず言えば、
アイドル界のジャニーズ系、みたいなものよ。 |
ノリスケ |
ほ〜。も、王道だね。 |
ジョージ |
そ、王道。…を、自分が走ってたから。
もう、もう、すごかったもん、はぁ、懐かしい〜! |
ノリスケ |
そうかー。それは要するに、
こう、フォー・セール、ま、安売りじゃなくてね。
私は売り物ですよ、っていう札を、
ちゃんとわかるように付けてるんだよね。 |
つねさん |
そうだね。たぶんね。 |
ジョージ |
あのね、あのー、ほら、フェロモンっていうと、
みんな色気とイコールで考えるでしょう? |
ノリスケ |
うん、考えちゃう。色っぽい、セクシー。 |
ジョージ |
ぜったい違うの。 |
ノリスケ |
お〜! 違うの? |
ジョージ |
違うの。フェロモンっていうのは、
自分がいったいどういう人間で、
どういう人を求めているのか、っていう
メッセージなの。それがフェロモンなんだよ。
そう思いません? |
ノリスケ |
ふん、ふん。 |
ジョージ |
そう思いません? |
つねさん |
要するに、あの、わかって欲しくない人には、
わかられたくないし…っていう? |
ジョージ |
たとえばね、たとえば、
色気という点で言うと、
叶姉妹は、色気たっぷりでしょう? |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
だけど、蕎麦屋。たとえば、あのー… |
ノリスケ |
蕎麦屋? |
ジョージ |
蕎麦屋。たとえば、ねえ?
ここはノリスケ君ご贔屓の三合菴です。
いちばん混んでる忙しい時間帯に、
シャネル系のどぎつい香水をたっぷり付けた、
叶姉妹が2人でやってきました。
さあ、フェロモン感じる? |
ノリスケ |
感じなーい。 |
ジョージ |
場違いでしょう? |
ノリスケ |
場違い。帰れ。 |
つねさん |
アハハハ! |
ジョージ |
だから、その、色気オンリーのフェロモンは、
往々にして場違いになるんだよ。 |
ノリスケ |
でも、色気ではないフェロモンだったら、
蕎麦屋でもOKなんだよね。 |
ジョージ |
そうなんだよね。 |
ノリスケ |
蕎麦屋であることを味方につけて、
色っぽい飲み方してんのがいるな〜、
って話になるんだよね。 |
ジョージ |
たとえば、その、お褒めの言葉を頂戴したのか
どうか、わからないんですけど、
麻布十番を闊歩していた私に
フェロモンがあったというのは… |
ノリスケ |
しかも、ノンケが見て、そう言ったんだから。 |
ジョージ |
そう、べつにわたくしそこで
営業してたわけでもなく、
男あさりをしていたわけでもないんだが。 |
つねさん |
それはとても困る(笑)。 |
ジョージ |
ようは、ん〜、
意外な場所に意外なものを発見したときね。
で、そのときにその人が、
何かを、メッセージとして発散したときに、
それはフェロモンとして
感じられるんじゃないかな、と思うんだよね。
|
(つづきます。)