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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

上手なウソ、美しいハッタリ。その3
ハッタリは人生のリセット。

ジョージ 人生のリセットになりうるような
ハッタリって、かましたことある?
人生、生き方そのものがハッタリの人も、
世の中にはいっぱいいると思うんだけどね。
ノリスケ 私たち? 私たちの人生?
つねさん (笑)難しいよね、そうは言っても、
仕事でのハッタリ、もっとうまくなったほうが
いいのかなって思うくらい、ダメだし、俺(笑)。
ジョージ あのね、転校って、すっごい、
いい出来事なんだよね。
自分の人生を知らない人がそこにいるわけでしょう?
ノリスケ そうだよ。
ジョージ ボクね、転校するっていうのが決まってから、
もう嬉しくって仕方がなかったの。
もう、どういう自分を作ろうか? って思って。
で、それまでは、ずっと、ほら、
良家の子女、だから、
泥まみれってダメなわけじゃない?
ノリスケ はいはい(笑)。
ジョージ で、どっちかっていうと文科系なわけじゃない?
それまでの自分じゃない自分、に
身を置きたいわけ、ね?
そうすると、体育会系で泥にまみれて
汗を流してみたり、なんだかんだのっていう、
いちおうストーリーを作って。
ノリスケ ウオッス! な自分をつくって、
持っていきたかったのね……。
せつない話だわあ。
ジョージ んで、紹介されました。
今度どこそこから転校してきた誰それさんです、
自己紹介して下さい・・・。
ノリスケ なに? ひょっとして、
声からも、低かったりするんじゃない?(笑)
ジョージ そうなのぉ〜(笑)。
つねさん ちーす、とか言って、「俺」。
ジョージ そう、俺(笑)。
つねさん ハッハッハッハ!
ジョージ それがね、俺っ! って言ったとたんに、
もう舞い上がっちゃったのよ。
つねさん (裏声で)ジョージですぅ〜〜〜!!
ジョージ そ、そ、そんな感じ(笑)。
「俺」一言は低音だったんだけど、
「俺」って言ったときは、
下っかわに濁点がふられてたような声なのよ。
ところがもう・・・。
つねさん (ヘロヘロと高い声で)××からきましたぁ〜〜
って言ったときは!
ジョージ そ! もう、黄色い声なの!
ノリスケ アハハハハ。ハッタリきかねぇ〜。
ジョージ そー。で、色々作ったことを言ったの。
言ったんだけど、ぜんぜんウケないんだよ。
やっぱりハッタリってね、
よほどの人生経験とね、
場数を踏んでないとね、ダメ。
高校生の分際で、ムリだったのね〜。
つねさん あ、場数ってあるよね。
ジョージ そう、ポッと出のね、
ハッタリはね、ダメよ!
ノリスケ だから、営業だよね。飛び込みの営業とか、
プレゼンだとか、そういう場で、
ハッタリとかって生きるんじゃない?
つまりいまのジョージさんは上手なはずよ。
ジョージ そう、あのね、営業のプロとかっていう人の
話を聞いてみると、
1軒1軒行くごとに自分を作るんだよね。
ノリスケ 営業ってクリエイティブな仕事だって言うもんね。
ジョージ で、それは偽るんじゃなくて、
前の営業のところで話したことを
1回リセットかけて。
つねさん そこ用の?
ジョージ そう。で、虚構の自分を作り上げて
持ってくわけじゃない?
ノリスケ うん。
ジョージ ハッタリだよね。
ノリスケ そそそそ。
ジョージ それで、ハッタリかましたんだけど、
失敗して、その後でね、あのー、
変な学校だったのよ。
その高校っていうのが、
1年おきに体育祭と文化祭をやる学校で。
たまたま僕が転校した
高校の3年生のときに文化祭だったんだよ。
ね? んで、文化祭で、
コーラスを全クラスがやります。
何を歌いましょうか? って、
言われたときに、なんとかこうとかって、
ある曲が出て。
「誰か編曲してくれませんか?」
ってなったのね。
つねさん つまり、ジョージは、ピアノができまーす、
えへへ、結構上手なの〜〜〜、
なんてふうには、カミングアウトしてなかったわけね。
「ウッス」で、なんとか、貫いていたと。
ジョージ そ。だから、そんな「俺」なんかに
言うわけないじゃーん?
でもいやだな、いやだな、
来たらいやだなって思いながら。
誰も知らないはずだし、
ピアノ弾けるのも、
作曲習ったことがあるのも。
つねさん 思ってたら。
ジョージ 思ってたら。担任の教師って、
前の学校の内申書持ってるんだよね。
つねさん ハハハハハハハ。
ノリスケ あー。
ジョージ んで、
「君、音楽教育受けてたよねぇ? やって」
って。なんで? なんで? なんでぇーっ!
とかって、なんか。
ノリスケ がーん。
ジョージ そしたらもう、上手なのよ、
ポロポロポロ〜〜ン、なんて、
指先が動いちゃうの!
いやーん、ウッスな自分じゃ、なーい!!
ノリスケ ハハハハハ。
つねさん 「俺」が。
ジョージ そう、「俺」が。「俺」だったのに・・・。
そんで、この、負けず嫌いでしょう?
クラス対抗で勝ちたいわけよ。
で、みんなにボイストレーニングほどこしてー。
つねさん 「俺」が。
ノリスケ (指揮棒を振るマネをして)こうやって!
ジョージ ……そうなの、あのね、その時期、
マイ・タクトを持ってたのよ!
つねさん 「俺」が。
ジョージ 「俺」が。マイ・タクト持ってるの!
ノリスケ ちゃんと革のケースに入ってるんでしょ?
つねさん すげー高いんだよ、どうせ(笑)。
ジョージ そう。根っこのところが象牙でできてるの!!!
つねさん いや、サイテー(笑)。
ジョージ んで、それで、
「じゃあ、音ください」って言ったらば、
みんなが、クスクスクスって、笑ったの!
あ、こいつ、やっぱり
ハッタリかましやがった、みたいな感じ(笑)。
ノリスケ 「ウッス」の「俺」じゃないじゃん(笑)。
ジョージ そうよ。だから、みなさん、
ハッタリかますときには、
場数を踏んで下さいっ!
ノリスケ 最期までかまし続ける努力と
経験と覚悟が必要なのね。
で、どうなったの、コーラスのコンクールは。
ジョージ 優勝したわよっ! 当たり前ですっ!
ノリスケ (笑)負けず嫌いだよね〜。
ジョージ ウチのクラス、進学クラスだったから、
もう、もうみんな文化祭なんか
どうでも良かったんだよ。悔しいじゃない? ね?
ノリスケ 悔しい。
ジョージ でね、僕のクラスにね、
もう1人オカマがいたのよ。
ノリスケ お互いわかってたの?
ジョージ わかってたの。
お互いオカマだとは言わなかったけどね。
もう、ほら、目と目で通じ合う、っていう感じ?
僕が編曲して、指揮にまわるとすると、
じゃあピアノの伴奏だれにしよう?
っていったら、そのオカマがこう
(首をかしげ耳に二の腕をつけて
 まっすぐ手を上げて)
「ボクにやらせて下さいっ!」。
つねさん 恐ろしい・・・。
ジョージ そう。オカマの友情よ!
それで、もう、必死なのよ、それから。
ノリスケ 負けず嫌い2人そろっちゃったんだ。
ジョージ 40人いたとしても、
コーラスで重要なのは10人ぐらいなんだよ。
4つのパートで2〜3人ずつぐらいいれば、
それが全体を引っ張るんだよね。
つねさん ふ〜ん。
ジョージ で、そういう子を、話し合って見つけて、
ひとりずつ落としていったもんね。
ノリスケ あ〜、こっち側につかせるのね?
ジョージ も〜、だって、もう、
そのまんまいくと負けてしまうわけでしょう?
ちょっと努力をすれば、
絶対勝てるのに、負けてしまうの。
許せないでしょう?
ノリスケ そりゃそうだ(笑)。
ジョージ 許せない、すっっっごい。
ノリスケ 他のクラスは、そこまでやってないから、
ちょっとやれば絶対勝てるわけだよね。
ジョージ んも〜、泣きながらよ? 泣きながら説得!
つねさん 凄いね。
ジョージ ほんっとに。
つねさん ま、でも、努力の甲斐があって・・・。
ジョージ もう、楽しかったぁ〜、あの頃は〜。
でも、2度とあのクラスでは、
「ウッス」のハッタリは効かなかったわ……。

(つづきます、ウッス)

2002-06-17-MON

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