ジョージ |
人生のリセットになりうるような
ハッタリって、かましたことある?
人生、生き方そのものがハッタリの人も、
世の中にはいっぱいいると思うんだけどね。
|
ノリスケ |
私たち? 私たちの人生?
|
つねさん |
(笑)難しいよね、そうは言っても、
仕事でのハッタリ、もっとうまくなったほうが
いいのかなって思うくらい、ダメだし、俺(笑)。
|
ジョージ |
あのね、転校って、すっごい、
いい出来事なんだよね。
自分の人生を知らない人がそこにいるわけでしょう?
|
ノリスケ |
そうだよ。
|
ジョージ |
ボクね、転校するっていうのが決まってから、
もう嬉しくって仕方がなかったの。
もう、どういう自分を作ろうか? って思って。
で、それまでは、ずっと、ほら、
良家の子女、だから、
泥まみれってダメなわけじゃない?
|
ノリスケ |
はいはい(笑)。
|
ジョージ |
で、どっちかっていうと文科系なわけじゃない?
それまでの自分じゃない自分、に
身を置きたいわけ、ね?
そうすると、体育会系で泥にまみれて
汗を流してみたり、なんだかんだのっていう、
いちおうストーリーを作って。
|
ノリスケ |
ウオッス! な自分をつくって、
持っていきたかったのね……。
せつない話だわあ。
|
ジョージ |
んで、紹介されました。
今度どこそこから転校してきた誰それさんです、
自己紹介して下さい・・・。
|
ノリスケ |
なに? ひょっとして、
声からも、低かったりするんじゃない?(笑)
|
ジョージ |
そうなのぉ〜(笑)。
|
つねさん |
ちーす、とか言って、「俺」。
|
ジョージ |
そう、俺(笑)。
|
つねさん |
ハッハッハッハ!
|
ジョージ |
それがね、俺っ! って言ったとたんに、
もう舞い上がっちゃったのよ。
|
つねさん |
(裏声で)ジョージですぅ〜〜〜!!
|
ジョージ |
そ、そ、そんな感じ(笑)。
「俺」一言は低音だったんだけど、
「俺」って言ったときは、
下っかわに濁点がふられてたような声なのよ。
ところがもう・・・。
|
つねさん |
(ヘロヘロと高い声で)××からきましたぁ〜〜
って言ったときは!
|
ジョージ |
そ! もう、黄色い声なの!
|
ノリスケ |
アハハハハ。ハッタリきかねぇ〜。
|
ジョージ |
そー。で、色々作ったことを言ったの。
言ったんだけど、ぜんぜんウケないんだよ。
やっぱりハッタリってね、
よほどの人生経験とね、
場数を踏んでないとね、ダメ。
高校生の分際で、ムリだったのね〜。
|
つねさん |
あ、場数ってあるよね。
|
ジョージ |
そう、ポッと出のね、
ハッタリはね、ダメよ!
|
ノリスケ |
だから、営業だよね。飛び込みの営業とか、
プレゼンだとか、そういう場で、
ハッタリとかって生きるんじゃない?
つまりいまのジョージさんは上手なはずよ。
|
ジョージ |
そう、あのね、営業のプロとかっていう人の
話を聞いてみると、
1軒1軒行くごとに自分を作るんだよね。
|
ノリスケ |
営業ってクリエイティブな仕事だって言うもんね。
|
ジョージ |
で、それは偽るんじゃなくて、
前の営業のところで話したことを
1回リセットかけて。
|
つねさん |
そこ用の?
|
ジョージ |
そう。で、虚構の自分を作り上げて
持ってくわけじゃない?
|
ノリスケ |
うん。
|
ジョージ |
ハッタリだよね。
|
ノリスケ |
そそそそ。
|
ジョージ |
それで、ハッタリかましたんだけど、
失敗して、その後でね、あのー、
変な学校だったのよ。
その高校っていうのが、
1年おきに体育祭と文化祭をやる学校で。
たまたま僕が転校した
高校の3年生のときに文化祭だったんだよ。
ね? んで、文化祭で、
コーラスを全クラスがやります。
何を歌いましょうか? って、
言われたときに、なんとかこうとかって、
ある曲が出て。
「誰か編曲してくれませんか?」
ってなったのね。
|
つねさん |
つまり、ジョージは、ピアノができまーす、
えへへ、結構上手なの〜〜〜、
なんてふうには、カミングアウトしてなかったわけね。
「ウッス」で、なんとか、貫いていたと。
|
ジョージ |
そ。だから、そんな「俺」なんかに
言うわけないじゃーん?
でもいやだな、いやだな、
来たらいやだなって思いながら。
誰も知らないはずだし、
ピアノ弾けるのも、
作曲習ったことがあるのも。
|
つねさん |
思ってたら。
|
ジョージ |
思ってたら。担任の教師って、
前の学校の内申書持ってるんだよね。
|
つねさん |
ハハハハハハハ。
|
ノリスケ |
あー。
|
ジョージ |
んで、
「君、音楽教育受けてたよねぇ? やって」
って。なんで? なんで? なんでぇーっ!
とかって、なんか。
|
ノリスケ |
がーん。
|
ジョージ |
そしたらもう、上手なのよ、
ポロポロポロ〜〜ン、なんて、
指先が動いちゃうの!
いやーん、ウッスな自分じゃ、なーい!!
|
ノリスケ |
ハハハハハ。
|
つねさん |
「俺」が。
|
ジョージ |
そう、「俺」が。「俺」だったのに・・・。
そんで、この、負けず嫌いでしょう?
クラス対抗で勝ちたいわけよ。
で、みんなにボイストレーニングほどこしてー。
|
つねさん |
「俺」が。
|
ノリスケ |
(指揮棒を振るマネをして)こうやって!
|
ジョージ |
……そうなの、あのね、その時期、
マイ・タクトを持ってたのよ!
|
つねさん |
「俺」が。
|
ジョージ |
「俺」が。マイ・タクト持ってるの!
|
ノリスケ |
ちゃんと革のケースに入ってるんでしょ?
|
つねさん |
すげー高いんだよ、どうせ(笑)。
|
ジョージ |
そう。根っこのところが象牙でできてるの!!!
|
つねさん |
いや、サイテー(笑)。
|
ジョージ |
んで、それで、
「じゃあ、音ください」って言ったらば、
みんなが、クスクスクスって、笑ったの!
あ、こいつ、やっぱり
ハッタリかましやがった、みたいな感じ(笑)。
|
ノリスケ |
「ウッス」の「俺」じゃないじゃん(笑)。
|
ジョージ |
そうよ。だから、みなさん、
ハッタリかますときには、
場数を踏んで下さいっ!
|
ノリスケ |
最期までかまし続ける努力と
経験と覚悟が必要なのね。
で、どうなったの、コーラスのコンクールは。
|
ジョージ |
優勝したわよっ! 当たり前ですっ!
|
ノリスケ |
(笑)負けず嫌いだよね〜。
|
ジョージ |
ウチのクラス、進学クラスだったから、
もう、もうみんな文化祭なんか
どうでも良かったんだよ。悔しいじゃない? ね?
|
ノリスケ |
悔しい。
|
ジョージ |
でね、僕のクラスにね、
もう1人オカマがいたのよ。
|
ノリスケ |
お互いわかってたの?
|
ジョージ |
わかってたの。
お互いオカマだとは言わなかったけどね。
もう、ほら、目と目で通じ合う、っていう感じ?
僕が編曲して、指揮にまわるとすると、
じゃあピアノの伴奏だれにしよう?
っていったら、そのオカマがこう
(首をかしげ耳に二の腕をつけて
まっすぐ手を上げて)
「ボクにやらせて下さいっ!」。
|
つねさん |
恐ろしい・・・。
|
ジョージ |
そう。オカマの友情よ!
それで、もう、必死なのよ、それから。
|
ノリスケ |
負けず嫌い2人そろっちゃったんだ。
|
ジョージ |
40人いたとしても、
コーラスで重要なのは10人ぐらいなんだよ。
4つのパートで2〜3人ずつぐらいいれば、
それが全体を引っ張るんだよね。
|
つねさん |
ふ〜ん。
|
ジョージ |
で、そういう子を、話し合って見つけて、
ひとりずつ落としていったもんね。
|
ノリスケ |
あ〜、こっち側につかせるのね?
|
ジョージ |
も〜、だって、もう、
そのまんまいくと負けてしまうわけでしょう?
ちょっと努力をすれば、
絶対勝てるのに、負けてしまうの。
許せないでしょう?
|
ノリスケ |
そりゃそうだ(笑)。
|
ジョージ |
許せない、すっっっごい。
|
ノリスケ |
他のクラスは、そこまでやってないから、
ちょっとやれば絶対勝てるわけだよね。
|
ジョージ |
んも〜、泣きながらよ? 泣きながら説得!
|
つねさん |
凄いね。
|
ジョージ |
ほんっとに。
|
つねさん |
ま、でも、努力の甲斐があって・・・。
|
ジョージ |
もう、楽しかったぁ〜、あの頃は〜。
でも、2度とあのクラスでは、
「ウッス」のハッタリは効かなかったわ……。
|