ジョージ |
昔、ウチが田舎に住んでたときに、
小っちゃいアパート住んでて。
文化住宅っていうの? 昔の。
んで、おんなじアパートに、
オカマの夫婦が住んでたんだよ。 |
つねさん |
へー。 |
ジョージ |
で、ひとりがオカマバーに勤めてて。
温泉町だったから、そういうの昔っから
あったのよね。で、もうひとりは普通に、
昼間サラリーマンの仕事してるんだけど、
あの、夫婦ゲンカするの。 |
ノリスケ |
ハハハハハ、オカマの夫婦ゲンカ。 |
ジョージ |
すーごいんだよ。 |
ノリスケ |
それは、男同士になってっちゃうの?
殴り合いになっちゃうの? |
ジョージ |
女同士になるの。 |
ノリスケ |
女同士になるの? |
ジョージ |
最初はね、男同士としてケンカするんだよ。
で、男同士っていうのは、
理屈でケンカし始めるんだよね、最初ね。
で、それがね、そのうち
感情が高まってくるとね、女になるんだよ。
言葉遣いまで男の言葉から
女の言葉に変わってきたりとかするんだよね。 |
ノリスケ |
なんなのよっ、とかって? |
ジョージ |
そそそそ。で、そういうのを、聞きつつね、
オヤジとオフクロなんかね、
あの、変な人間、という風に言うんだよね。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
つねさん |
あいつらはー。 |
ジョージ |
男にもなりそこなって、
女にもなりそこなった人間、として見るんだよ。
で、これがたぶんつい最近までの、
ゲイの見られ方だったろうと思うんだよ。
なりそこないで、どっちでもない。
んで、それが、最近は、
男でもあり女でもあり、
男でもなく女でもなく、っていうふうに、
思われ始めたじゃない? |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
それはけっこう幸せなことかな?
って思うんだよね。
だから、おすぎさんやピーコさんなんか、そうだよね。 |
ノリスケ |
そうそう。 |
ジョージ |
ピーコのファッションチェックだったっけ? |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
あれなんか見てると、たとえば、
女の装いを、男の立場でとやかく言うと、
男のあんたにはわからないでしょ?
っていうふうに思うんだよね。
んで、女から言われると、
女のあんたには言われたくない、
と思うんだけど、オカマが言うと、
自分に直接関係ないからね。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
んで、女は同性でライバルで、
男は自分に対しては消費者なんだよね、
自分を商品として見たら。
競合商品と消費者の間じゃない?
で、生産者は自分なんだよね。 |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
ところが、ホモっていうのは、
ライバルでもなければ、消費者でもないから、
純粋な評論家なんだよね。 |
ノリスケ |
うん、うん。 |
ジョージ |
んで、それって、人のつながりが、
ものすごく濃密になってるじゃない?
今って。なんか知らないけど、
世間は広くなってくんだけど、
ネットだとかEメールだとか、
文字のとこで、人の繋がりは
ものすごく濃密なんだよね。
で、そんな中で、
自分と一切関わりを持っていない、
関係のない人との、関係、っていうのを、
みんな渇望しているような、感じがするよ。 |
つねさん |
うーん。 |
ジョージ |
客観的な友人というのかな?
で、そういうものが必要となった時代に、
ゲイとして生きているのは、
すごい幸せだと思う。得してる? |
つねさん |
そういうところで? |
ジョージ |
いや、ゲイであって。 |
つねさん |
ん、べつに得してるとも思ったこともなく、
損してるとも思ったことないから、
トータル得してんのかな?
っていう気は、するけど。
のりすけさん、どお?
僕は、カミングアウトとかしてないんで。 |
ノリスケ |
僕は、カミングアウトしてるから。 |
つねさん |
ありゃっ? ワシだけかい?(笑)半ば、
半分っていうのはあるけど、
基本的にはしてないから。うん。 |
ノリスケ |
得というか、新しい隣人的な、
唯一の人としていられるんで、
ワン&オンリーでいられるよね。
うん。どっちの話もわかるんで。
それはとても得してると思う。 |
ジョージ |
どっちの話もわかるけど、
ぜんぜんわかんないこともありましたっ! |
ノリスケ |
ありましたねー。オンナの神髄はわかんないわね。
逆にあれだよね、男の子だけのチームの中に、
ポンと飛び込んだことがないんで、
今からそれはしたくないんだけど(笑)、
そういう仕事になったらどうなのかな?
と思うんだけどね。 |
ジョージ |
男の社会って、面白いよ。 |
ノリスケ |
そうなの? |
ジョージ |
あのね、僕らの社会とは違う。 |
ノリスケ |
あー。どんなところが? |
ジョージ |
んーとね、僕らの社会ってね、
必要に応じてくっついたり
離れたりすることができる、
アメーバみたいな社会なんだよ。 |
ノリスケ |
うん。 |
つねさん |
ふん。 |
ジョージ |
今日、ある部分で、
ものすごくいい友だちだったんだけれども、
明日ちがう部分だと、
ぜんぜん友だちでもなんでもない、
ような関係が縦横無尽に広がっていくのが、
僕らの世界なんだよね。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
で、そういう意味では、
ネットワーク的というか。
だけど、男の世界ってね、頑丈なんだよ。 |
ノリスケ |
あっそ。 |
ジョージ |
男が作り上げたのが、
軍隊とか企業とかだから、ピラミッドなんだよ。 |
つねさん |
序列がちゃんとしてて。 |
ジョージ |
そう。それで骨格がしっかりしてて、
柱が1本立ってるの。
んで、この柱が、「仲間」っていう柱なの。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
ジョージ |
ね?んで、基本的にマゾ。 |
ノリスケ |
アハハハハ。 |
ジョージ |
あの、Sがひとりもいないマゾの集団。
で、じゃあ、どうやって自分を
いじめるのかっていうと、
誰かが何かを言うの。
何月何日、どこそこで集まろうぜ、
とかって言うの。そうすると、
万難を排してそこに集まるの。 |
ノリスケ |
あ〜。 |
ジョージ |
集まって何するわけでもないんだよ?
ただ飲んでるだけなんだけど、
そんとき誰かひとり来なかったら、
仲間外れだ、っていう世界なんだよ。 |
ノリスケ |
は〜〜〜。 |
ジョージ |
あのね、オカマの世界には
仲間外れはないんだよね。
だって、もともと僕ら外れてるもの。 |
ノリスケ |
仲間外れが集まってるからね(笑)。 |
ジョージ |
そう、仲間外れが集まってるから、
仲間外れがないんだよ。
仲間外れがない代わりに、
誹謗中傷っていう
いやらしいものがあるけれどもね。
でもね、男の世界には仲間外れがあるんだよ。
だから、仲間である限りは、
何をやっても許させるんだよ、かわいいって。
んで、ゲイである僕が、
男の仲間の世界に、
仲間として認められたことは、
すごく幸せなことかも知れない。 |
ノリスケ |
それは、仕事で? |
ジョージ |
仕事というかね、やっぱり、
正しく自分をさらけ出して……
ゲイっていうのは、
自分と全く違った生き物だって、
みんな思ってるんだよ。とくに男の場合はね。 |
ノリスケ |
うん。 |
ジョージ |
女はただただ純粋に、なんか、あー、
ゲイっていう人もいるのねー、っていうふうに。 |
つねさん |
やっぱり、って。
テレビだけじゃなくて、って。 |
ジョージ |
そうそう。 |
ノリスケ |
外の人ね。 |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
やっぱり、概念じゃなくって、
現象として受け入れちゃうんだよね。
いるんだから、仕方がないって。
だけど、男は、概念をしっかり
組み立てないといけないから、
頭で理解しなきゃいけないの。
んで、理解できないものに対しては、
自分たちと違うっていうふうに、
言うんだけど、だけどね、
ぜんぜん違わないんだよ。
たとえば、好きな人を必要とするし、
一生いっしょにいたいなと思う人を
必要とするんだけども、でも、
遊びたいなと思う気持ちがあって。
んで、社会的に成功しないと
いけないと思いながらも、
自分の夢はどこかで叶えたいなと思って。
でも、自分の夢と社会的な夢、
その義務と、どっちを優先するんだっていうと、
経済基盤ができるまでは
社会的な自分を大切にして、
個を犠牲にしなきゃいけないんだとかっていう、
こういう部分に関しては、ね?
ゲイも一般の人、ストレートでも
おんなじなわけ。
ただ、ただ、僕たちが違うのは、
いっしょにいたかったり遊びたい相手?
が女でなくって男、であるという、
部分だけだよ。んで、そこさえクリアすれば、
ぜんぜん大丈夫なんでね。
で、クリアするのは、もうほんっとに
丁寧に言わなきゃダメ。
すんごい丁寧に言ったもん。 |
ノリスケ |
あ〜〜〜。 |
ジョージ |
小さーい現象をひとつひとつ考えながら。
たとえば、温泉に行って、
みんなで一緒にお風呂に入る。
僕も一緒にお風呂に入ることは、
危険ではない、とか言わなきゃいけないんだよ。 |
ノリスケ |
アハハハハ。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
これってさ、男の頭ん中に
ものすごい欲望があって、
女風呂に自分ひとりで入りたいって欲望は、
絶対あるんだよ、誰にでもあるんだよ。
で、それが自分は、女にならずに
自分のまんまで? 透明になって入ったら、
どんなに素敵だろう?
っていう思いがあるんだよね。 |
ノリスケ |
うんうん。 |
ジョージ |
で、それとおんなじようなことを、
僕がしちゃってるわけじゃない? |
つねさん |
うん。 |
ジョージ |
自分の愛欲の対象の、
男が裸で何十人もいる中に、僕ひとりでいて。
で、僕は女の姿してないから、
透明とおんなじわけでしょ?
それってね、みんなね、ズルイって思うんだよ。
違うんだよ。ズルイんじゃないのっ。
僕にとって、あんたたちみたいなね、
なんか、ケツの垂れた、若くもない、
ムッチリもしていないのに、欲情なんてしません。
あなたたちとお風呂に入るぐらいなら、
僕はイエローキャブ系の巨乳のおねえちゃんたちと
入ったほうが、楽しい。ね?
セックスの対象ではないけれども、
いっしょにお風呂入るんだったら、
そっちの方を選ぶよ、って言うと、
あー、そうなんだー、って。
おんなじじゃん、あなたもただのスケベじゃん、
とかって。 |
ノリスケ |
ちょっと違うんだけどさ(笑)。 |
ジョージ |
違うんだけどね。そこはね、ウソだよ。
いいよ、って。 |
つねさん |
いいウソなのね。 |
ノリスケ |
あぁぁぁ(笑)。 |
ジョージ |
で、そういうのを繰り返してるとね、
仲間になれるんだよ。 |