ノリスケ |
で、医者に死にますよっていわれたから
スポーツ始めたの? |
ジョージ |
そんときにね、あー、健康のために
運動しなきゃいけないのかな、
と思ったんだけど、
そのね、その医者ってハゲで、
自分そのものもデブなんだよ?
それにね、あんた死にますよ、
って言われたらね、
冗談言うんじゃないわよ、
なーんだと思ってんの?
わたしはあんたなんかより、
まだ若くってかわいいの、
売れるのよ、見てなさい。 |
つねさん |
そういう、負けん気の強いさ…(笑)。 |
ノリスケ |
そんな、医者と張り合って(笑)。 |
ジョージ |
そうそう。あんたを見返してやろうじゃない、
医者を見返してやろうじゃないのーっ! て。
で、あの、薬なんかもらわなくったって、
自分の体は自分で作り変えることができるのよ、
っていうのがね、今のね、ものすごい原動力。 |
ノリスケ |
あ〜、なるほどね。
…僕は、あまりに体が醜くなったから、
やろうかな? って思ったんですけどね(笑)。 |
ジョージ |
あの、プレタポルテが着れる体を維持したい、
というのはあるんだけど。 |
ノリスケ |
それは、大きな原動力だね。
オートクチュールにするわけには、
いきませんものね。 |
ジョージ |
でも、それもね、すべて、んー、
オカマにとってね、
やっぱり最大の原動力って、
「見返したい」っていうの、あると思うよ。 |
つねさん |
あー。 |
ノリスケ |
負けん気ねー。 |
ジョージ |
うん。鮎原こずえにもあったし、
岡ひろみにもあったもの。 |
ノリスケ |
あ、確かに、あしたのジョーには
そういうドラマは、あんまりない。 |
ジョージ |
ないでしょ?
「あいつを見返したい」のはないでしょ? |
ノリスケ |
ジョーが、
「きーっ、力石のやつ、見返してやるわっ!」
って言ってもね(笑)。 |
ジョージ |
男の子のスポコンは、
なんか知らない向こう側を見ているわけよ。
それで、星飛雄馬だって、
見返してやりたいとは思わないよね。
星を眺めるわけじゃない? |
ノリスケ |
もっと露骨にさ、
貧乏はいやだから稼ぐ、
っていうのでもないんだもんね。 |
ジョージ |
そうそうそう。
ちゃぶ台じゃなくって
普通のダイニング・ルームで
食事をしたいっていうのは、ないんだよね。 |
ノリスケ |
べつに花形満がうらやましいわけじゃ、
ないのよね、飛雄馬は。
でも明子ねえちゃんは、花形満みたいのが、
好きなのよねえ。オンナ、よねえ。 |
ジョージ |
とにかくオカマはね、
星なんか見たってしょうがないの。
星なんかよりキレイなおべべよ、と。 |
つねさん |
(笑)そうねー。 |
ジョージ |
そんな感じ。 |
つねさん |
そのために私は生きるのよ、みたいな。 |
ジョージ |
そういうわけで、私、今、
すごい充実してるの。 |
ノリスケ |
そっかー(笑)。
それでジムに行く心理っていうの、
わかったんだけど、テニスはどうなの? |
つねさん |
あーっ。 |
ノリスケ |
社交なの? やっぱり? |
つねさん |
あ、いや、ボク、違う(笑)。 |
ノリスケ |
えーっ?何なの?
何が原動力でそこまでやるの? |
ジョージ |
見返しよ、きっと。 |
ノリスケ |
どのくらいやってんの? |
つねさん |
僕は、昔ちょっとやってたのね、
あの、大学とかの授業で。 |
ノリスケ |
授業かよ(笑)。
それ、やってるうちに入んないわよ! |
つねさん |
けっこう好きだったんだけど、
やる機会がなくって。
で、こっち(東京)来たら、
やっぱり、みんな社交でやるじゃない?
そいで、おいでよ、おいでよって誘われるわけね。 |
ノリスケ |
なるほどね。 |
つねさん |
それで、なかなか忙しいんで、
たとえば、1年に1回とか
2年に1回しか行ってなかったわけね。
そしたら、慣れてないから、打てないじゃない?
ところが何回か続けて行ったわけ。
そしたら、多少自分も打てるようになるわけね。
そしたらこんど、自分のアラが見えてきて。
そしたら他のやつに負けたくないっていうのが
出てくるわけよ。 |
ジョージ |
ほら。ほぉら。 |
ノリスケ |
やっとまともなゲイのスポーツになったわ。 |
つねさん |
そうそうそう(笑)。 |
ノリスケ |
1番になりたいんでしょ? |
つねさん |
1番でなくっていいから、
なんか、なんだろう?
上の方には行きたいと思うのよー。
だから、結局、今スクールにも通ってるの。 |
ノリスケ |
アハハハハ。 |
ジョージ |
信じれる? 仕事忙しいっていうのに。ね。 |
ノリスケ |
週1? オバチャンに混じって?
オバチャン同士。 |
ジョージ |
それそれ。
女のオバチャンと男のオバチャン。 |
ノリスケ |
そうすると、大会に出たいとか
思うようになるんじゃない? |
つねさん |
んーわかんないけどね。
最終的には大会に出たりとか、
僕はあんまり思わないんだけど。うん。 |
ノリスケ |
こないだ友だちがさ、
テニス大会でダブルス、
誰と誰がペアを組むとかって騒いで、
もめてたよ(笑)。
「あんたとは組みたくないわ」って
ケンカになったらしいの。
「レベルは同じなんだけどねえ、
気に入らないのよ!」ですって。
その人、うまいのよ。 |
つねさん |
宮様とテニスした、って人も知ってる。 |
ノリスケ |
そのさ、すごいうまい人ってさ、
皇族と試合したことがあるっていうのが、
ひとつのステイタスなのかしら。
よく聞くわね。 |
ジョージ |
うーん、やっぱり社交界、
ソーシャルな感じするよね。
だって、だってお蝶夫人だもん。
夫人がなさるスポーツだからという。
お蝶夫人。で、主人公のライバルの
お蝶夫人は華族の出で、
早川みどりは暴走族上がりよ、あれ。 |
ノリスケ |
混ざってるわよ、なんか。
だいいち早川みどりはお父さんPTAよ、あれ。 |
ジョージ |
あ、お父さんPTAだ。詳しいわね…… |
つねさん |
どっちにしろ、大金持ちよね。 |
ジョージ |
やっぱりライバルは大金持ちよね。 |
ノリスケ |
鮎原こずえは、
もともと頭良くて東京ですごい学校行ってたのに、
体を弱くしちゃって富士見市に転校してきたのよ。
そして不良グループを組織して
正規のバレー部乗っ取って
どんどんのし上がっていくのよ。 |
(つづきます)