ジョージ |
けっこうね、おやじもやっちゃうんだよね。
寿司屋に行って。 |
つねさん |
お任せとかじゃなくって。 |
ジョージ |
ま、お任せでもいいんだけどね。
その、今の季節の鯛は、どこ?
明石? って聞くんだよ。 |
ノリスケ |
あ、判断は俺がするって言いたいんだ。 |
ジョージ |
そうそうそう。 |
ノリスケ |
よくないな、それ。 |
ジョージ |
今の時期だと、ウニは北海道なんだよね、
そうだろう? な、大将。 |
ノリスケ |
……いいお店は、美味しいものだけを
仕入れてるはずなのにさ。 |
ジョージ |
それそれ。それなんだよ。
あと、あがりちょうだい。むらさき注してね。 |
ノリスケ |
符牒を使っちゃいけませんね。 |
ジョージ |
そう、ダメよ。そういうことね。
そういうことはダメっ。
お店の人に聞くの。んで、聞いたらね、
お店の人はね、大切にしてくれるよね。 |
つねさん |
たとえば今日は何が美味しいですか? とか。 |
ジョージ |
そうそうそう。そのお店に行って、
たとえば、じゃあ、
お店の言いなりになればいいか?
っていうとね、そうじゃなくてね。
んで、お店の人に、
今日は何が美味しいんですか?ってね、聞くの。
聞いたらお店の人が、
こういうのとこういうのとこういうのがありますよ、
って言われたら、即答すればいいの。
じゃあ、それの、3番目のにして下さい。
って言った後で、
それって、さっぱりと作ることはできるんですか?
とか、今日はものすごくお腹が空いてるから、
ガツンと来るように作って下さい、
とかってリクエストすればいいんだよね。 |
ノリスケ |
それはオッケーだよね。 |
ジョージ |
それがさ、その女たちみたいにさ、
いきなりお腹空いてないんです、はないよね。 |
つねさん |
それはそう。 |
ジョージ |
ひどいよね。言うとしたら、
今日はものすごくお野菜が食べたいから、
お野菜の美味しい料理ってあるんですか?
って聞いたら、いっぱいあるんだよ。
で、その中に、たとえばサラダみたいなやつが
あったとしたら、
そのサラダみたいなのを作って下さい。
食欲があんまりないんで、
さっぱりと作っていただけますか?
っていったら、そっから先はね、
シェフの腕の見せ所なんだよね。
マダムは厨房の方に行って、
あの、どこそこのお客さんは、
お野菜をさっぱりと、
食欲の無い方のようなんで、
量よりも、美味しさ優先でね、
とかって言ってくれるんだよね。
順番が違うの。なんか、自分が言うことよりも、
相手に言わせてあげるとね、
どんどんどんどんいいことを言ってくれるの。 |
ノリスケ |
わかりました。 |
ジョージ |
んでなー、これはまた別の客なんだけどなー… |
ノリスケ |
同じ店? |
つねさん |
3連チャン? |
ジョージ |
それでね、すごいのよ、
川島なお美みたいな女がね… |
ノリスケ |
今どき、わかりにくいかも知れないが(笑)。 |
ジョージ |
わかりにくいかも知れないが。
ま、こっから先のエピソードが、
とても川島なお美なの。 |
つねさん |
ほー。 |
ジョージ |
で、連れてきてるのが、たぶん、
ま、どこかの会社の社長かなんかやってる?
自動車のディーラーとかなんか、
そういう、ちょっと、
えげつなさそーな感じのね。 |
つねさん |
札束系の。 |
ジョージ |
それそれ。といっしょに来て。
座るやいなや、このワインをちょうだい。
ワイン出てきました。開けました。
クックーと振りました、飲みました。
これ、わたしが思ってたのと違うから、
交換して下さい。 |
ノリスケ |
ダメだよ。 |
ジョージ |
すごいでしょう?
ったらもう、マダム、キッとしながら、
じゃあ、このワインより美味しいのは、
これしかありません、って
一番高いやつ指差して、それ持ってきて、
ポーンと抜いて。
そしたら、ん、これでいいわ、って。
お飲みになってらっしゃいました。
それから、先。ワインを、2本追加された上、
お召し上がりになり、
お召し上がりになるのもですね、
あのー、パンが美味しいんですよ、
けっこう、そのお店。
でね、パンに合わせてね、
オリーブ・オイルに塩持ってこさせて、
ついでに、あんたんちイタリア料理屋だから、
パルミジャーノ・レッジャーノあるでしょう?
それをカリカリカリカリッて、
削ってこん中入れなさい。
これ、みなさん、けっこうな方が
やられるんですけれども、
基本的にあのー、
他にろくなおかずがないときに、
パンをいっぱいに食べて
お腹をいっぱいにしなきゃいけないときの
非常手段です。ね?
ということは、あの、和食で言うとですね、
たとえば吉兆のようなお店に行って、
お料理のいちばん最初から、
ごめんなさい、メシが食いたいの。
ついでに、その飯に、卵はかけるわ、
かつおぶしはかけるわ、醤油はかけるわして、
食べているのと同じ状態だと思ってください。
ね? それをしでかすわけよ。食う食う。 |
ノリスケ |
すごい胃袋だね。神経ないんじゃない? |
ジョージ |
すごいよー。でね、禁煙なの、そのお店。
で、男ね。我慢ができないんだ。
これね、中小企業の男ってね、
ぜったい我慢ができないようにできてるの。
でね、外階段のところにね、
テーブルを置いて、
タバコを吸えるようになってるんだよ。
そこにね、10分に1回づつぐらいね、出るの。
タバコを吸う男の人、ぜったい、
女の子とふたりで行ったときに、
タバコを吸いに席を立ってはいけません。
これ、エチケット以前の問題で、
その女、男がタバコを吸いに出てる間じゅう、
ずーっとメールを打って、メールをチェックし、
あまつさえ、電話をかけて喋ってました。 |
ノリスケ |
ご迷惑な(笑)。 |
つねさん |
「ゴメーン、もうちょっと時間かかるからさー」。 |
ジョージ |
ねー。そう、そんな感じだよ。
んでね、2時間ほどの食事の間にね、
会話、最初はけっこうはずんでたわけよ。
だけどね、女は女で料理の話、
男は男で仕事の話、永遠にかみ合う話がなく。
最後のほうは、男、
話することもなくなったんだね。
財布、尻のポケットから出して、
広げて、カードがいっぱい挿してあるんだよ。
クレジット・カードの説明し始めたの。 |
つねさん |
ハッハッハッハッハッハ。なに?
これがアメックスで、とか? |
ノリスケ |
これがダイナースで。 |
ジョージ |
そう、限度額がいくらなんだ。
出てったあとで、そこのマダムがね、
ごめんなさいね、って。
あんな変なひと入れちゃって。
初めてなのよ、フリーで来て。
予約もなしに。
稼いでやろうと思ったんだけど、
少々稼いだくらいじゃ
追いつかないぐらい迷惑をかけたわね、
ごめんなさい、って言ってもらったの。
どんなに金使ってもね、
どんなに知ったかぶりしてもね、
そういうふうに言われるの。ダメです。 |
ノリスケ |
正直が一番だね。 |
ジョージ |
正直が一番です。
まずはお店の人に好かれることだね。
|
(きをつけます。おわります)